海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
いたずらを仕掛けられたり、思わぬ一杯食わされたりして、「よし、このままじゃ終わらせないぞ」とやり返したくなった瞬間が、ドラマには時々あります。やられた分をきっちり返して、貸し借りをゼロに戻したい——そんな気持ちです。
その気持ちを言い表すのが「get even」です。今回は『ビッグバン★セオリー』シーズン3第9話、アパートのキッチンでシェルドンがクリプキへの報復を準備するシーンから、一緒に見ていきましょう。
「get even」の意味とニュアンス
get even
意味:仕返しする/おあいこにする
やられた分をやり返して、「貸し借りなし(even)」の状態に戻すことを表す表現です。直訳すると「even(同等)の状態になる」。傾いていた天秤を、反撃によってもう一度水平に戻す——そんなイメージが核にあります。
「get even with + 人」の形で「〜に仕返しをする」と使うことが多く、いたずらや侮辱への報復を宣言する場面でよく登場します。さらに、スポーツやゲームで「負けを取り返して五分に戻す」という意味でも使えます。revenge(復讐)ほど重々しくなく、日常的な軽い仕返しから本格的な報復まで幅広くカバーできる、使い勝手のよい表現です。even に「貸し借りのない・対等な」という意味があることを押さえておくと、ニュアンスがすっと理解できます。
【ここがポイント!】
- 「やられた分を返して五分(even)に戻す」のが核のイメージ
- get even with 人 の形で「〜に仕返しする」とよく使う
- 軽い仕返しから本格的な報復まで——温度を選ばず使える一言
『ビッグバン★セオリー』S03E09のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
NPRのラジオ生出演中、クリプキにヘリウムのいたずらを仕掛けられ、声を甲高くされて全国に恥をさらしたシェルドン。今度は化学反応で大量の泡を発生させる、手の込んだ報復を準備します。その周到さに、レナードが思わず感心するセリフです。
Leonard: I gotta say, I am really impressed. This is truly the Sheldon Cooper way to get even.
(いやあ、正直、感心したよ。これぞまさにシェルドン・クーパー流の仕返しってやつだね。)Sheldon: Already taken care of. Observe.
(もう手は打ってある。見ていたまえ。)The Big Bang Theory Season3 Episode9(The Vengeance Formulation)
シーン解説と心理考察
シェルドンは普段「相手のレベルには堕ちない」と高潔を気取りますが、いざ報復となると誰よりも徹底的に没頭します。化学反応を使い、隠しカメラまで仕込む——その過剰な手間に、彼のプライドの高さと負けず嫌いが同居しているのが伝わってきます。
レナードの「the Sheldon Cooper way to get even」という言い回しが秀逸です。ただ「仕返し」と言うのではなく、「シェルドン・クーパー流の」と冠することで、理屈っぽく大げさで、それでいて妙に手の込んだ彼の報復スタイルそのものを一言で言い表しています。get even という日常表現が、ここではシェルドンの性格を映す鏡として響いています。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
片側に重りが乗って傾いた天秤を思い浮かべてください。やられっぱなしの状態は、この傾いたままの天秤です。反対側に同じだけの重りを乗せれば、天秤はふたたび水平(even)に戻ります。この「水平に戻す」動作こそが get even のイメージです。
シェルドンが、恥をかかされたという「借り」を、手の込んだ泡の報復で「チャラ」にしようとする——その執念を、傾いた天秤を水平に戻そうとする動きに重ねてみましょう。even=水平、というビジュアルを押さえておけば、「仕返しして五分に戻す」という意味が自然と引き出せます。
例文で覚える「get even」
仕返しを宣言する場面から、スポーツの「取り返し」まで使えます。with との組み合わせも一緒につかんでおきましょう。
He pulled a prank on me, so I’m going to get even.
(あいつが俺にいたずらしたから、仕返ししてやるんだ。)
いたずらへの報復を宣言する場面です。劇中のシェルドンとクリプキの関係そのもので、軽い仕返しのニュアンスがよく出ています。
She wanted to get even with her rival after losing the contract.
(契約を取られたあと、彼女はライバルに仕返ししたいと思った。)
ビジネスでの対抗心を語る場面です。get even with 人 の形で、「誰に」仕返しするかをはっきり示せます。
A: We lost the first game pretty badly.
B: Don’t worry. We’ll get even in the rematch.
(A:初戦、けっこう大差で負けちゃったね。)
(B:心配ないって。再戦できっちり取り返すから。)
スポーツの場面です。ここでは「負けを取り返して五分に戻す」という意味で、相手への報復ではなくスコアの「おあいこ」を表しています。
あわせて覚えたい関連表現
get back at someone
(〜に仕返しする)
get even とほぼ同義ですが、必ず人を目的語に取ります(get back at him)。単独でも使えて「五分に戻す」ニュアンスがより強い get even に対し、こちらは「特定の相手への報復」に焦点があります。
pay someone back
(〜に仕返しする、報いを受けさせる)
「借りを返す」という原義から、恩返し(良い意味)にも仕返し(悪い意味)にも使える表現です。主に報復寄りで使う get even より、意味の幅が広いのが特徴です。
settle the score
(決着をつける、恨みを晴らす)
やや大げさで「積年の恨みに決着をつける」という重い含みがあります。日常的で軽い仕返しにも使える get even より、ドラマチックな響きを持ちます。
Note|「五分に戻す」——even が持つ会計の感覚
get even の even は、「平らな」だけでなく「同等の・貸し借りのない」という意味を持つとされています。
この感覚がよく表れているのが、break even(損益ゼロになる、収支トントンになる)というビジネス表現です。収入と支出がちょうど釣り合って、プラスでもマイナスでもない状態——これが even です。会計の帳尻がぴったり合った状態、と言い換えてもいいでしょう。get even もこれと同じ発想で、「不当に傾いた収支を、もう一度ゼロ(even)に戻す」というイメージから来ていると言われています。つまり get even は、単なる感情的な「やり返し」ではなく、「傾いたバランスを公平な状態に戻す」という、どこか理屈の通った響きを帯びた表現なのです。
この「公平さの回復」という発想は、理屈っぽいシェルドンの報復ともよく重なります。彼にとって仕返しは、感情の爆発というより「自分が一方的に損をしたままなのは不公平だから、収支を合わせる」という筋の通った行為——そう捉えると、あの大げさな泡の報復にも一本の理屈が通って見えてきます。
やり返すことを「公平さを取り戻すこと」と捉える——その感覚が、even の一語に宿っています。
まとめ|傾いた天秤を水平に戻す一言
get even は、やられた分を返して「貸し借りなし」の状態に戻す、という発想を持つ表現です。傾いた天秤をもう一度水平にするように、不公平になった収支を五分に戻す——そんなイメージが、この二語には詰まっています。
いたずらへの軽い仕返しから、スポーツでの「取り返し」まで、温度を選ばずに使えるのがこの表現の便利なところです。get even with 人 の形も一緒に覚えておけば、「誰に対して」かまで自然に言い表せます。
シェルドンが筋を通して借りを返そうとしたように、傾いたバランスを戻す一言として、あなたの表現の引き出しに加えてみてください。


コメント