「push past something」の意味と使い方|『ビッグバン★セオリー』S12E10で学ぶ英会話

「push past something」の意味と使い方を解説

海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。

怖くて足がすくむような場面でも、それでも前へ進まなければならないと自分に言い聞かせた経験はありませんか。

そんなときに使えるのが「push past something」です。『ビッグバン★セオリー』シーズン12第10話の後半、オーディションへの出演を渋るハワードを、バーナデットが説得しようとする場面から、一緒に見ていきましょう。

目次

「push past something」の意味とニュアンス

push past something
意味:(恐れや困難を)乗り越えて先へ進む

push past somethingは、恐怖心やためらいといった心理的な障害を、押しのけるようにして乗り越えて前進するというニュアンスを持つ表現です。物理的に何かの脇を押しのけて通り抜けるイメージが、比喩的に「困難を乗り越える」という意味に転用されています。

不安や恐怖心を完全に消し去るのではなく、それを抱えたまま前へ進むという現実的な響きがあり、新しい挑戦に踏み出す場面や、困難な状況の中でも歩みを止めない姿勢を語る場面でよく使われます。恐怖以外にも、迷いや気まずさ、周囲の反対など、立ちはだかるものであれば幅広く目的語に置ける柔軟さも、このフレーズが日常会話で重宝される理由のひとつです。

【ここがポイント!】

  • 「push past something」の核は、壁を押しのけながらその脇を通り過ぎるイメージ
  • 恐れを完全に消すのではなく、抱えたまま前進するという現実的なニュアンスを持つ
  • 対象には恐怖心だけでなく、ためらいや先入観など幅広い心理的な障害を置けるのがコツ

『ビッグバン★セオリー』S12E10のシーンで見てみよう

意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。

マジックのオーディションへの出演を拒否したハワードと、それを説得しようとするバーナデットのやり取りです。怖気づいているのだと決めてかかるバーナデットに対し、ハワードは意外な本音を明かし始めます。

Howard: I’m not gonna audition.
(オーディションには出ないよ。)

Bernadette: Hey, I didn’t raise a quitter.
(ちょっと、諦め癖のある子に育てた覚えはないわよ。)

Howard: You didn’t raise me at all.
(そもそも君は俺を育ててないだろ。)

Bernadette: Look, I get that you’re scared, but we just have to push past that.
(ねえ、怖いのは分かる。でも、それを乗り越えなきゃいけないの。)

Howard: I’m not scared. I don’t like the act. It’s over-the-top and weird and has more jazz hands than magic.
(怖いんじゃない。あの出し物自体が気に入らないんだ。大げさで変で、マジックよりジャズハンズの方が多いくらいだよ。)

The Big Bang Theory Season12 Episode10 (The VCR Illumination)

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シーン解説と心理考察

「オーディションには出ないよ」と切り出すハワードに、バーナデットは「諦め癖のある子に育てた覚えはないわよ」と母親のような口調でたしなめます。ハワードが「そもそも君は俺を育ててないだろ」と冷静に切り返すところに、この夫婦らしい軽妙なやり取りが表れています。

バーナデットが「怖いのは分かる。でも、それを乗り越えなきゃいけないの」と諭すと、ハワードは「怖いんじゃない。あの出し物自体が気に入らないんだ。大げさで変で、マジックよりジャズハンズの方が多いくらいだよ」と本音を打ち明けます。恐怖心が原因だと決めつけていたバーナデットの読みが外れ、実際にはハワード自身が今の演出そのものに納得していなかったという、すれ違いが浮かび上がる場面です。励まそうとする側と励まされる側の間で、そもそもの問題意識がずれていたという展開に、この夫婦らしいすれ違いぶりが垣間見えます。

『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ

目の前に立ちはだかる恐怖という壁を、両手で押し(push)ながらその脇を通り過ぎる(past)イメージで捉えてみましょう。壁を消し去るのではなく、押しのけて前に進む様子がこのフレーズの芯にあります。

バーナデットが「それを乗り越えなきゃ」と促した場面も、恐怖そのものをなくすのではなく、抱えたまま前に進むことを求めた場面でした。壁の存在を認めたうえで、それでも横を通り抜けていく感覚を持っておくと、似た状況でこの表現がすっと出てくるはずです。壁を完全に取り払ってから進もうとすると、いつまでも足を踏み出せません。押しのけながら進むという動作自体をイメージに残しておくと、行動に移すハードルが下がります。

例文で覚える「push past something」

push past somethingは、恐れやためらいを抱えたまま前に進む場面で役立つ表現です。3つの例文で使い方を確認していきましょう。

You need to push past your fear of public speaking if you want that promotion.
(昇進したいなら、人前で話すことへの恐怖心を乗り越える必要がある。)
キャリアアップについて助言するビジネスの場面です。if you want that promotionという条件を添えることで、乗り越える動機がはっきりします。

She pushed past her doubts and signed up for the marathon.
(彼女は迷いを乗り越えて、マラソン大会に申し込んだ。)
新しい挑戦を決意する場面です。signed upという具体的な行動とセットで使うと、乗り越えた先の一歩が伝わりやすくなります。

A: I’m too nervous to ask for a raise.
B: You just have to push past that and go for it.
(A:昇給を頼むのが怖くてできないよ。)
(B:それを乗り越えて、思い切ってやるしかないよ。)
友人を励ます日常会話の場面です。go for itという後押しの一言が、乗り越えた先への一歩を印象づけています。

あわせて覚えたい関連表現

get over something
(〜を乗り越える、克服する)
より一般的で、病気やショックなど幅広い対象に使われる表現です。push past somethingは「押しのけて進む」という能動的・身体的なイメージが強い点が異なります。

overcome a fear
(恐怖を克服する)
フォーマルで直接的な表現です。push past somethingは口語的で、恐れがまだ完全には消えていない状態のまま前進するニュアンスが残る点が異なります。

face one’s fears
(恐怖に立ち向かう)
恐怖と正面から向き合う姿勢に焦点がある表現です。push past somethingはその先へ「進む」結果に焦点がある点が異なります。

Note|「push past something」「get over something」「face one’s fears」——恐れとの向き合い方を表す3つの温度差

恐れや困難への向き合い方を表す英語表現は複数ありますが、それぞれ恐れとの距離の取り方が微妙に異なります。

face one’s fearsは、恐怖そのものと正面から向き合う姿勢に重心があります。overcome a fearは、その恐怖を完全に克服したという結果を、ややフォーマルな響きで語る表現です。一方でpush past somethingは、恐怖を消し去ることを前提にしていません。恐れを抱えたまま、それを押しのけるようにして前へ進むという、より現実的なプロセスを描いています。ハワードのように、怖さの正体が実は別のところにあった場合でも、この「抱えたまま進む」というニュアンスは崩れません。恐怖を克服したかどうかにかかわらず、とにかく前に進むという行動そのものを表せる懐の広さが、push past somethingの特徴です。

ハワードが最終的にオーディションへ向き合う決断をした背景には、恐怖の克服というより、自分の演出への納得というまったく別の課題を乗り越える過程がありました。それでも「乗り越えて先へ進む」というpush past somethingの発想は、この場面にそのまま当てはまります。乗り越える対象が恐怖であれ不満であれ、立ちはだかるものを押しのけて前に出るという行動の形は変わらないのです。

恐れの正体が何であれ、前へ進むための言葉はちゃんと用意されているのですね。

まとめ|「怖いから」で片付けられない、すれ違いの正体

push past somethingは、恐れやためらいを完全には消せなくても、それを抱えたまま前へ進むことを表す表現です。

対象を恐怖心に限定せず、ためらいや先入観など幅広い心理的な障害にも使える柔軟さがあり、新しい挑戦を語る場面で会話の幅を広げてくれます。

恐怖心が原因だと決めてかかったバーナデットの読みが外れ、実は演出そのものへの不満が本音だったと分かる今回のやり取りは、思い込みだけでは見えない相手の本心を映し出す場面でした。相手を励ますつもりが的外れになってしまうことは、誰にでも起こり得ることです。何かを乗り越えて一歩踏み出したいときの表現として、引き出しに加えてみてください。

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