海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
長い時間をかけて反対していた相手の気持ちが、少しずつこちらの考えに近づいていったと感じる瞬間、誰にでも一度はあるはずです。
そんな瞬間にぴったりの「bring someone around」を、『ホワイトカラー』シーズン3第16話の前半、ピーターと向き合ったクレイマーが、かつての協力者との苦い記憶を語る場面から、一緒に見ていきましょう。
「bring someone around」の意味とニュアンス
bring someone around
意味:人を説得して考えを変えさせる、更生させる
around には「一周する、方向を変える」という空間的なイメージがあり、bring someone around は、反対していた人や違う方向を向いていた人の考えを、時間をかけて自分の望む方向へ向き直させる様子を表します。単発の説得というより、粘り強く働きかけて相手の心境を変化させていくニュアンスが強い表現です。
家族や同僚など、身近な相手の態度が徐々に軟化していく場面から、更生プログラムのように対象者の考え方そのものを変えていく場面まで、幅広く使われます。反対していた側が「気づけば賛成に回っていた」という結果に焦点が当たる点も特徴です。
似た意味を持つ win someone over や change someone’s mind と比べると、bring someone around は結果に至るまでの時間の経過をより強く感じさせる表現と言えます。
【ここがポイント!】
- 核は「反対していた相手の向きを、時間をかけて変える」というイメージ
- 単発の説得ではなく、粘り強い働きかけの積み重ねを示す表現
- 説得する側とされる側、両者の関係を意識して読み取るのがコツ
『ホワイトカラー』S03E16のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ピーターがクレイマーのもとを訪れ、向き合う場面です。ニールには線引きが必要だという話題になると、クレイマーは「知っているのか?」と問い返し、自分にとっての『ニール』とも言うべきC.I.(捜査協力者)がかつていたことを明かします。その相手をめぐる回想に注目です。
Peter: I know that.
(それはわかってるよ。)Kramer: You do? I told you about my C.I. My “Neal.”
(わかってる? 話しただろう、俺のC.I.のことは。俺の「ニール」ってやつのことをな。)Peter: Yeah. You were close.
(ああ。お前たち、仲が良かったんだろう。)Kramer: Oh, we were more than close. He was like a son. Hell, I thought I’d brought him all the way around, but he couldn’t change who he was.
(仲が良かったなんてもんじゃない。あいつは息子のような存在だった。まったく、あいつのことはすっかり更生させたと思っていたのに、結局あいつは自分自身を変えられなかったんだ。)White Collar Season3 Episode16 (Judgment Day)
シーン解説と心理考察
ニールには一定の線引きが必要だという話題になった直後、クレイマーが「知っているのか?」と問い返す短いやり取りには、クレイマー自身も同じ経験を通ってきたという含みが見え隠れします。かつて自分にとっての『ニール』とも言うべき協力者がいたことを語り出す口ぶりからは、単なる仕事上の関係を超えた思い入れの深さが伝わってきます。
「息子のような存在だった」と語りながらも、「すっかり更生させたと思っていたのに、結局あいつは自分を変えられなかった」と締めくくる言葉には、信じて手をかけた相手に裏切られた過去の苦さがにじみます。冷徹な捜査官という一面だけでは説明のつかない人物像が、この短い独白から浮かび上がります。
同時にこの回想は、ピーターへの警告でもあります。「お前もいずれ同じ思いをする」という含みを持たせることで、ピーターとニールの関係の先行きに影を落とす場面になっています。何気ない世間話のように始まった会話が、じわりと不穏な色合いを帯びていく展開です。
淡々とした口調のまま語られるからこそ、クレイマーの内側にある苦さがかえって際立ち、ピーターの表情には言葉少なな緊張が浮かんでいきます。
『ホワイトカラー』流・覚え方のコツ
bring someone around を覚えるときは、反対方向を向いていた誰かの肩にそっと手を添えて、くるりと方向転換させる場面を思い浮かべてみましょう。around が持つ「一周させる、向きを変えさせる」感覚と、bring が持つ「連れて行く」感覚が組み合わさることで、時間をかけて相手の向きを変え、こちら側に連れてくるというニュアンスが記憶に残りやすくなります。
劇中のクレイマーのように、「すっかり向きを変えさせたつもりだったのに」という苦い経験とセットで覚えておくと、この表現が成功例だけでなく、失敗のニュアンスも含む幅の広い言い方であることが理解しやすくなります。
例文で覚える「bring someone around」
説得に時間がかかる場面から、じわじわと相手の考えが変わっていく場面まで、bring someone around を3つの例文で確認していきましょう。
It took months, but we finally brought him around to our way of thinking.
(何か月もかかったけど、ようやく彼をこちらの考え方に納得させられた。)
粘り強い説得の末に相手が態度を変えた場面で使われる、日常会話での基本的な言い方です。
She was skeptical at first, but the data eventually brought her around.
(彼女は最初懐疑的だったが、データが最終的に彼女の考えを変えさせた。)
会議やプレゼンで反対意見の相手を納得させる、ビジネスの場面にも自然になじみます。
A: I was heartbroken when my mom refused to meet my partner.
B: I heard you finally brought her around. How do you feel now?
(A:母がパートナーに会うのを拒んだときは、本当に胸が締めつけられたよ。)
(B:でも最終的には気持ちを動かせたんだよね。今はどんな気持ち?)
家族との間にあったわだかまりが少しずつほどけていく、心情に寄り添った使い方です。
あわせて覚えたい関連表現
win someone over
(人の心をつかむ、味方につける)
bring someone around が時間をかけた説得を強調するのに対し、win someone over は魅力や説得力によって比較的短期間に相手を味方につけるニュアンスが強い表現です。
talk someone into (something)
(人を説得して〜させる)
考え方全体の変化というより、具体的な行動をさせることに焦点がある表現で、bring someone around よりも狭い、特定の行為への同意を指すことが多くなります。
change someone’s mind
(人の考えを変えさせる)
より直接的でシンプルな言い方です。bring someone around のような比喩的な「方向転換」のイメージは薄いものの、意味はほぼ重なります。
Note|「説得して考えを変えさせる」を表す英語表現、その使い分け
bring someone around のニュアンスをつかむには、似た意味を持つ表現との違いを比べてみるとわかりやすくなります。
win someone over は、魅力や説得力によって比較的短期間に相手を味方につける表現で、bring someone around が持つ「時間をかけた方向転換」の感覚は薄めです。talk someone into は具体的な行動への同意を引き出すことに焦点があり、考え方全体の変化を指す bring someone around よりも射程が狭くなります。change someone’s mind はもっとも直接的で、比喩的な色合いはほとんどありませんが、方向転換のプロセスそのものよりも結果に重心が置かれます。こうして並べてみると、bring someone around は「結果」だけでなく「そこに至るまでの時間の経過」まで含めて伝えられる、奥行きのある表現であることが見えてきます。
劇中でクレイマーが口にした brought him all the way around という言い回しも、単なる説得の成功ではなく、長い時間をかけて相手を変えようとした過程そのものを振り返る言葉でした。過程を含めて語れるかどうかが、この表現群を使い分ける決め手になります。
時間の経過を言葉に込められるかどうかが、この一群の表現を見分ける鍵と言えます。信頼を積み重ねる過程そのものに価値を置くか、結果だけに焦点を当てるか、その視点の違いが表現選びを左右します。
まとめ|長い時間をかけた説得の先にあるもの
bring someone around は、反対していた相手の考えを、時間をかけて自分の望む方向へ変えていく様子を表す表現です。方向転換のイメージを持っておけば、単発の説得とは違う、粘り強い働きかけのニュアンスがそのまま伝わってきます。
家族を説得するときも、会議で反対意見の相手を納得させるときも、この一言があれば過程ごと言い表せます。
クレイマーが語った「すっかり向きを変えさせたつもりだった」という一言には、信じて手をかけた相手に裏切られた経験の重みが表れています。会話のレパートリーに加えてみてください。


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