海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
シットコム『ヤングシェルドン』シーズン1第1話は、9歳のシェルドンが高校へ通い始める初日の回です。シェルドンの飛び級に振り回される家族や学校の大人たちの会話には、気持ちや断りをはっきり言い切らない言葉がいくつも出てきます。
英語にも、本音を少し弱めて伝える言い回しがいくつもあります。今回は、父ジョージと母メアリーの返事を中心に、控えめな言葉選びを場面ごとにたどります。
「Not really」と「I’d rather not」でやんわり断る
高校へ向かう途中、シェルドンは母メアリーにドライブ中のゲームをしようと持ちかけます。メアリーの返事は、きっぱりした No ではありませんでした。
Mary: Not really. I always lose.
(あまり気が進まないわ。いつも負けるんだもの。)Sheldon: I know. That’s why it’s fun.
(知ってる。だから楽しいんだよ。)Young Sheldon Season1 Episode1(Pilot)
Not really. は「あまり〜ない」と、否定の強さを和らげる返事です。No だけで終えずに理由を一言添えることで、角の立たない断りになっています。シェルドンの返しは、母が負けるからこそ楽しいという字義どおりの答えで、やんわりした断りの意図は伝わっていない様子です。
もう一つの断り方は、校長との話し合いの場面に出てきます。シェルドンの通学をめぐって、メアリーが学校側に対応を求める場面です。
Mary: All I care about is that my son gets the education he deserves, so you all are gonna have to figure this out.
(私が気にしているのは、息子がふさわしい教育を受けられることだけです。だから、そちらで何とかしてもらわないと。)Principal Petersen: Coach, can you help me out here, please? ‘Cause I’m dyin’.
(コーチ、ちょっと助けてもらえませんか? もうお手上げなんです。)George Sr.: I’d rather not.
(やめとくよ。)Young Sheldon Season1 Episode1(Pilot)
I’d rather not. は I would rather not の短縮で、「できればしたくない」と頼みを断るときの決まった形です。I won’t のように拒否を言い切らず、自分の好みとして伝える分だけ響きが柔らかくなります。校長の I’m dyin’ は困り果てた気持ちを大げさに言ったもので、ジョージはその頼みを一言でかわしています。理由を並べずに短く返すことで、頼みを引き受けないという意思だけを伝える返事になります。
- A: Can you give a speech at the party?
(パーティーでスピーチしてくれない?) - B: I’d rather not. I get too nervous.
(できれば遠慮したいな。緊張しすぎちゃうから。)
「that wasn’t so great」で認めつつ弱める
別の場面では、兄ジョージーが父ジョージに不満をぶつけます。弟と同じ学校に通うことが、どうにも受け入れられない様子です。
George Sr.: You mean Sheldon? You can’t let that bother you.
(シェルドンのことか? 気にするな。)Georgie: It doesn’t bother you? You got called to the principal’s office.
(父さんは気にならないの? 校長室に呼ばれたじゃん。)George Sr.: Yeah, that wasn’t so great.
(まあ、あれはあんまりいいもんじゃなかったな。)Georgie: I can’t be in the same school as him!
(あいつと同じ学校なんて無理だよ!)George Sr.: Well, I don’t see what choice you have.
(でも、ほかにどうしようもないだろう。)Georgie: Right. Ever since he could talk, I quit having any choices.
(だよね。あいつがしゃべれるようになってから、俺に選択肢なんてなくなったんだ。)Young Sheldon Season1 Episode1(Pilot)
not so great は「あまりよくない」という意味で、bad や terrible と言うより弱い響きになります。校長室に呼ばれたことを認めながら、大ごととしては扱わない返事です。直前の You can’t let that bother you. で息子を諭したあと、校長室の件はよくなかったと認める形で、Yeah と前置きして相手の指摘をまず受け止めているのもポイントです。
I don’t see what choice you have. は直訳すると「お前にどんな選択肢があるのか分からない」で、つまり「選ぶ余地はない」という意味です。You have no choice. と言い切るより遠回しで、命令ではなく見通しを伝える形をとっています。ジョージーはその choice を受けて、自分には選択肢がなくなったと返しました。父の言葉を同じ語で受け止めているのが分かります。
- A: How was the interview?
(面接はどうだった?) - B: It wasn’t so great, but I learned a lot.
(あまりうまくいかなかったけど、いい勉強になったよ。)
「Maybe a little sad.」で本音を少しだけ見せる
ミッシーを席から外したあと、ジョージはシェルドンに、かつて仕事を解雇されたことを打ち明けます。話を聞いたシェルドンは、父に率直な質問を向けました。
Sheldon: Are you sad that you got fired?
(クビになって悲しい?)George Sr.: Mostly angry. But yeah. Maybe a little sad.
(ほとんどは腹が立ってる。けど、まあな。少しは悲しいかもな。)Young Sheldon Season1 Episode1(Pilot)
ジョージの答えは三つの短い言葉でできています。Mostly angry. で一番大きい気持ちを先に示し、But yeah. で質問への答えを認め、最後に Maybe a little sad. と悲しさを添えます。
mostly は「大部分は」、a little は「少し」と、気持ちの量を言葉で調整する語です。そこに maybe を重ねて、悲しさを確かなものとしては言い切っていません。sad と一言で答えるより、本音の大きさを控えめに見せる形になっています。
シェルドンの質問は Are you sad ~? と、気持ちをそのまま尋ねる直球の問いでした。ジョージはそれをはぐらかさず、怒り、肯定、少しの悲しさという順に言葉を足していきます。ぶっきらぼうな父が、息子の問いに一歩ずつ本音へ近づいていく流れが印象的です。
- A: Are you nervous about tomorrow?
(明日のこと、緊張してる?) - B: Mostly excited. But maybe a little nervous.
(ほとんどは楽しみ。でも、ちょっと緊張してるかも。)
まとめ|言い切らない返事が伝えるもの
Not really と I’d rather not は断りを、not so great は認めにくい事実を、Mostly ~. Maybe a little ~. は気持ちの量を、それぞれ控えめに伝えます。強く言わない分、相手との距離を保ちながら本音を渡せます。
言い切らない返事に目を向けると、『ヤングシェルドン』の家族の会話がもう一段深く聞こえてきます。


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