海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
順調に進んでいたはずのものが、ある時点から急におかしくなる。誰かの人生でも、進行中の計画でも、後から振り返ると外れた瞬間がはっきり見えることがあります。
そんなときに使えるのが「go off the rails」で、道を踏み外す、という意味です。『メンタリスト』シーズン1第16話の終盤、ある人物の転落を元勤務先の経営者が語る場面に出てきます。どのように使われているのか、一緒に見ていきましょう。
「go off the rails」の意味とニュアンス
go off the rails
意味:道を踏み外す、まともでなくなる、脱線する
rails は線路のことです。列車は自分で進路を選べませんが、レールの上にいるかぎり目的地には着きます。そのレールから外れるというのが、この表現の絵になります。
外れた先で待っているのは、制御を失った状態です。行き先も速度も自分では決められず、止める方法もない。だから人に使えば、本人にももう止められないという含みが出ます。
対象は人だけではありません。計画、プロジェクト、議論、物語の筋。順調に進むはずだったものであれば、何にでも使えます。The meeting went off the rails. のように言えば、会議が完全に脱線したという意味になります。
イギリス英語で特によく使われる言い方ですが、アメリカ英語でも問題なく通じます。
【ここがポイント!】
- 核は「レールから外れた列車」の絵。制御が利かなくなる状態を表す
- 人の生活にも、計画や会議にも使える
- 順調な状態は on track、立て直すのは get back on track
『メンタリスト』S01E16のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
事件の背後に、かつてジェーンが関わった一件が浮かび上がります。妻の依頼で行った偽の霊視をきっかけに、結婚生活も職も失った男、ポール・クレイガー。リズボンは彼の元勤務先を訪ね、当時の経緯を経営者のリンチから聞き出します。
Lisbon: What do you know about his personal life?
(彼の私生活について、ご存じのことは)Lynch: We’ve all made our mistakes over the years. Fat wallets and good wine can do that to a man.
(誰しも長い年月のうちには過ちを犯すものです。分厚い財布と上等なワインは、人をそうさせるものでしてね)Lisbon: You’re referring to his divorce?
(離婚のことをおっしゃっているんですか)Lynch: That was no divorce. That was a massacre. His wife remarried, I think. But Krager’s whole world fell apart. Work-wise, he never recovered. Went off the rails, to be frank. We had to let him go.
(あれは離婚などというものじゃない。虐殺です。奥さんは再婚したはずだ。しかしクレイガーの世界はすべて崩れた。仕事の面では二度と立ち直らなかった。率直に言えば、完全に狂ってしまった。うちも辞めてもらうしかなかった)The Mentalist Season1 Episode16(Bloodshot)
シーン解説と心理考察
リンチの語り口は、終始おだやかです。誰しも過ちは犯すもの、という一般論から入り、個人の名前を出す前に予防線を張っています。分厚い財布と上等なワイン、という言い方にも、責める調子はありません。
ところが、言葉そのものは強くなっていきます。離婚を massacre(虐殺)と言い換え、その後を fell apart(すべて崩れた)と述べ、最後に go off the rails でまとめる。おだやかな声で、次第に激しい語が選ばれていく落差が、この場面の空気を作っています。
to be frank(率直に言えば)という前置きも効いています。ここまで言うのは本意ではない、という体裁を保ちながら、実際にはいちばん厳しい表現を出しているからです。そして締めくくりは We had to let him go(辞めてもらうしかなかった)でした。同情を示しつつ、切り捨てた事実も隠さない。その距離感が、彼の立場をそのまま表しています。
レールから外れた男を、外から眺めていた側の言葉として聞くと、この一言の冷たさが際立つ場面です。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
線路を走る列車を思い浮かべてみましょう。行き先を自分で選ぶことはできません。その代わり、レールの上にいるかぎり、決められた場所には必ず着きます。
そのレールから車輪が外れたらどうなるか。速度も進路も制御できず、止める手立てもありません。go off the rails が持つ、本人にはもう止められないという含みは、この絵から来ています。
同じ線路の上には、反対の表現も並んでいます。順調に進んでいる状態は on track、立て直すことは get back on track。外れる、乗っている、戻る。三つをひとつの線路の絵にまとめておくと、まとめて頭に入ります。劇中で語られたクレイガーの転落も、この線路の絵に重ねると輪郭がはっきりします。
例文で覚える「go off the rails」
人生について語る場面、仕事の失敗を説明する場面、脱線を防ぐ場面。三つの例文で見ていきましょう。
His career went off the rails after the scandal.
(スキャンダルのあと、彼のキャリアは狂ってしまった)
誰かの経歴を第三者に説明する場面です。主語に career や life を置くのが最も典型的な形になります。after … を添えると、外れたきっかけがはっきり示せます。
Let’s keep this meeting from going off the rails.
(この会議が脱線しないようにしましょう)
議論が本題から逸れそうな場面です。keep A from -ing の形にすると、外れる前に手を打つ言い方になります。人以外にも使える表現だからこそ成立する用法です。
A: How’s the project going?
B: It went off the rails when the lead developer quit. We’re still trying to get back on track.
(A:プロジェクトはどう)
(B:主任開発者が辞めた時点で完全に脱線した。まだ立て直そうとしているところだよ)
状況を報告する場面です。go off the rails と get back on track を並べると、外れた事実と復帰の努力を一度に伝えられます。
あわせて覚えたい関連表現
fall apart
(崩壊する、ばらばらになる)
今回の表現が進路を外れることなら、こちらは形を保てなくなることです。劇中でも、崩れた事実を fell apart で述べ、その後の生き方を go off the rails で言い分けています。
spiral out of control
(歯止めが利かなくなる)
悪化していく過程の速さを強調する言い方です。外れた瞬間に焦点がある今回の表現に対し、こちらは渦を巻きながら加速していく絵になります。
lose the plot
(正気を失う、筋を見失う)
イギリス英語でよく使われる口語です。judgment を失った状態を指しますが、今回の表現より軽く、からかい混じりに使えることもあります。
Note|鉄道が英語に残した言い回し
十九世紀に鉄道網が広がったとき、英語には新しい比喩がいくつも入り込みました。go off the rails もその一つと考えられています。
同じ線路の上に並ぶ表現を集めてみると、その広がりがよく見えます。on track(順調に進んでいる)、get back on track(立て直す)、derail(頓挫させる)、run out of steam(勢いを失う)、let off steam(鬱憤を晴らす)、full steam ahead(全力で進める)。線路と蒸気機関から生まれたとされる言い回しが、これだけの数で日常語として残っています。もともとは文字どおりの脱線事故や機関車の状態を指していた言葉が、やがて人生や計画の比喩へ移っていったと説明されることが多くなっています。ただし個々の表現の初出や比喩化の時期については諸説あり、一致していない点も残ります。
この現象は鉄道に限りません。船の時代には、on an even keel(平静を保って)、learn the ropes(こつを覚える)、by and large(概して)といった言い回しが生まれ、そのまま定着しました。産業が変わるたびに、人はその現場の光景を借りて、目に見えないものを説明してきたことになります。
だとすれば、今の時代の道具からも同じことが起きているはずです。bandwidth(処理できる余力)、reboot(仕切り直す)、on the same page(認識が一致している)。数十年後には、これらの由来を誰も意識しなくなっているのかもしれません。
言葉は、その時代に人がいちばん見慣れていた光景を、静かに保存しつづけているようです。
まとめ|レールから外れた先の景色
go off the rails は、順調に進んでいたものが制御を失い、本来の道筋から外れることを指す表現でした。人の生活にも、計画や会議にも使えます。反対に順調な状態は on track、立て直すのは get back on track です。
誰かの経歴を説明するとき、会議の脱線を防ぐとき、プロジェクトの現状を報告するとき。線路の絵をひとつ思い出しておけば、三つの表現をまとめて引き出せます。
偽の霊視から始まった一人の男の転落を、外から眺めていた側がひとことで片づける。ジェーンが背負ってきたものの重さが、思わぬところから照らし出される場面でした。


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