「cut someone some slack」の意味と使い方|『メンタリスト』S01E23で学ぶ英会話

「cut someone some slack」の意味と使い方を解説

海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。

事情を知っている人が、まだ知らない人の隣で、そっと口添えをする。そんなふうに誰かをかばう役回りに立った経験はありませんか。

そのときに使えるのが「cut someone some slack」で、大目に見てやる、手加減する、という意味です。『メンタリスト』シーズン1第23話の中盤、取調室の隣室で、リズボンが同席する保安官に口添えする場面に登場します。どのように使われているのか、一緒に見ていきましょう。

目次

「cut someone some slack」の意味とニュアンス

cut someone some slack
意味:大目に見てやる、手加減する、勘弁してやる

slack は、張られたロープのたるみを指す言葉です。ぴんと引き締めるのをやめて、少し余裕を持たせてやる。その動作を人への当たり方に重ねたのが、この表現になります。

前提として、相手に落ち度があることは認めています。そのうえで、事情を汲んで責めを弱めよう、と提案する言い方です。何もなかったことにするわけではなく、締めつけの強さだけを下げる。この加減の感覚が中心にあります。

目的語を変えると役割が変わります。Cut him some slack. なら第三者をかばう口添え、Cut me some slack. なら自分への弁解、Cut yourself some slack. なら頑張りすぎている相手への励ましになります。同じ形で立場が三通りに切り替わるのが便利なところです。

かなりくだけた口語なので、目上の相手やあらたまった文書には向きません。some を省いて cut him slack と言うこともあり、on を続ければどの点について手加減するのかを限定できます。

【ここがポイント!】

  • 核は「張ったロープを少し送り出して、たるみをつくる」動き
  • 相手に落ち度があることは認めたうえで、責めの強さだけを下げる一言
  • 目的語を me / him / yourself と変えるだけで、弁解にも口添えにも励ましにもなります

『メンタリスト』S01E23のシーンで見てみよう

意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。

取調室では、ジェーンが重要参考人に対して常軌を逸した脅し文句を並べています。その様子を、隣室からリズボンと地元の保安官ハーディがガラス越しに見ている場面です。やり取りはすべて録画されており、機関としては到底許容できない発言が続きます。記録に残ることを気にした保安官が、同席するリズボンに制止を求めました。

Hardy: Oh, jeez, Lisbon. Come on. This is on tape. Control your man there.
(おいおい、リズボン。勘弁してくれ。録画されてるんだぞ。あんたの相棒を止めてくれ)

Lisbon: Cut him some slack. Look, he’s just playing the guy. He doesn’t mean it.
(少し大目に見てあげて。ほら、演じているだけよ。本気で言っているわけじゃない)

Hardy: Doesn’t he? You know what Red John does to him. He can’t think straight.
(そうかね。レッド・ジョンがあいつに何をしたか、あんたも知ってるだろう。まともに考えられなくなってる)

Lisbon: I won’t let him.
(そんなことはさせないわ)

The Mentalist Season1 Episode23(Red John’s Footsteps)

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シーン解説と心理考察

上司が部下をかばう、よくある構図に見えます。ところがリズボンが添えた He doesn’t mean it. という理由づけに、この場面の危うさが表れています。

保安官が返した Doesn’t he? は、たった二語でその根拠を揺さぶりました。本気じゃない、と言い切れるのか。レッド・ジョンをめぐってこの人物がどうなるかを知っているはずだろう、と畳みかけられたとき、かばう言葉のほうが宙に浮きます。

注目したいのは、リズボンが反論しなかった点です。彼女が返したのは I won’t let him. の一言だけ。演じているだけだという主張は取り下げられ、自分が止めるという約束にすり替わっています。理由で守れなくなった相手を、責任で引き受け直した形と言えます。

たるみを求めた側が、そのぶんの重さを自分で持つことになる。短い応酬のなかで力関係が静かに移り変わる場面です。

『メンタリスト』流・覚え方のコツ

犬の散歩用のリードを想像してみましょう。ぴんと張ったままでは、犬は一歩も自由に動けません。飼い主が手元のロープを少し送り出してやると、たるみが生まれ、犬はようやく息をつけます。cut someone some slack は、この「送り出す」動作をそのまま人間関係に移した言い方です。

大事なのは、リードそのものは外していないという点です。責任や関係が消えるわけではなく、締めつけだけが一時的にゆるみます。だから「見逃す」でも「許す」でもなく、手加減という位置にとどまります。

劇中でリズボンが頼んだのも、ジェーンを自由にしてくれということではありませんでした。今この瞬間だけ、強く引かないでほしい。ゆるめる、外さない。この二段構えで覚えておくと、使いどころを取り違えません。

例文で覚える「cut someone some slack」

かばうときにも、自分を弁解するときにも使えます。三つの例文で、目的語による働きの違いを見ていきましょう。

Cut her some slack. It’s only her second week here.
(少し大目に見てあげて。まだ入って二週目なんだから)
新人の仕事ぶりに厳しい同僚をなだめる場面です。命令形のあとに理由を一文添えるのが、いちばん自然な流れになります。

You need to cut yourself some slack once in a while.
(たまには自分にも甘くしていいんだよ)
頑張りすぎている友人に声をかける場面です。目的語を yourself にすると、励ましの定番表現として働きます。

A: You’re twenty minutes late again.
B: Cut me some slack, the trains were a mess this morning.
(A:また20分の遅刻だぞ。)
(B:ちょっと勘弁してよ、今朝は電車がめちゃくちゃだったんだ。)
遅刻をとがめられて弁解する会話です。自分に使うと軽い言い訳になるため、相手との距離が近い場合に限られます。

あわせて覚えたい関連表現

give someone a break
(少し勘弁してやる、休ませてやる)
ほぼ同じ意味で置き換えが利きます。ただし Give me a break! は「よく言うよ」という呆れの意味にもなるため、今回の表現にはないニュアンスが加わります。

go easy on someone
(手加減する、きつく当たらない)
これから加える批判や罰の強さを弱めてほしい、という依頼です。状況全体への配慮を求める今回の表現より、相手の当たり方に焦点があります。

let something slide
(見逃す、不問に付す)
対象が人ではなく出来事で、特定の一件を咎めないという意味になります。手加減ではなく、なかったことにする側の言い方です。

Note|「甘くする」ではなく、張力をゆるめる

日本語にすると「大目に見る」「甘くしてやる」となるこの表現ですが、英語の発想は少しずれています。

日本語の「甘くする」は、基準そのものを下げる感覚を含みます。合格ラインを動かす、要求の水準を落とす。だから使いすぎれば、規律が崩れるという批判につながります。ところが slack が指しているのは、ロープの張り具合だけです。ロープの長さも、つないでいる相手も、目的地も変わりません。変えているのは、どれだけ引き締めるかという一点にとどまります。

だから Cut yourself some slack. という言い方が成り立ちます。日本語で「自分に甘くしなさい」と言えば、努力の水準を下げる助言に聞こえかねません。しかし英語のほうは、目標はそのままでいいから引っ張る力だけゆるめなさい、という意味になります。基準を守ったまま、張力だけを調整する。ここが日本語の訳語からは見えにくい部分です。

劇中のリズボンも、ジェーンの言動を正当だと認めたわけではありませんでした。基準は動かさないまま、いま強く引かないでほしいと頼んでいます。訳語ではなくロープの絵で覚えておくと、この加減がつかめます。

ゆるめても、つながったままなのがこの表現です。

まとめ|つないだまま、力だけ抜く

cut someone some slack は、相手の落ち度を認めたうえで、責めの強さだけを下げるよう頼む表現でした。なかったことにするのではなく、締めつけを一時的にゆるめる。この加減が言葉の中心にあります。

新人をかばうとき、事情を抱えた相手への当たりを和らげたいとき、そして自分に猶予を求めたいとき。目的語を入れ替えるだけで立場が切り替わるため、一つ覚えておくと出番の多い言い方になります。

理由でかばいきれなくなったリズボンが、最後に責任のほうへ言葉を移した。たるみを求める側が何を引き受けるのかまで見せてくれる、そんな場面でした。

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