海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
会議で話が横道にそれたとき、相手の意見を否定はしたくないけれど、いまは本題に戻したい。そんなふうに言葉を探した経験はありませんか。
そこで役に立つのが「put a pin in that」で、その話はいったん保留にしよう、という意味です。『メンタリスト』シーズン1第22話の中盤、校長室での聞き取りが脱線しかけた場面で、リズボンがジェーンを止める一言として登場します。どのように使われているのか、一緒に見ていきましょう。
「put a pin in that」の意味とニュアンス
put a pin in that
意味:その話はいったん保留にする、あとで戻ることにする
直訳すると「そこにピンを刺す」。コルクボードや地図にピンで印を留めるように、話題に目印だけ残して先送りにする、という言い方です。
打ち切りとの違いは、戻る前提があるところにあります。捨てるのではなく、いまは扱わないと決めるだけ。相手の意見を否定せずに議題から外せるため、角が立ちません。会議の進行役や上司の口から出ることが多く、ビジネスの場で定着した言い回しになっています。
形は Let’s put a pin in that. が最も一般的で、目的語には that のほか it や議題名そのものも入ります。会話では動詞を落として Pin in that. と短く言うこともあります。ややくだけた響きがあるため、契約交渉のような硬い場ではなく、社内の打ち合わせやチーム内の議論に合う表現です。戻る時期を添えると、保留がそのまま放置に見えるのを防げます。
【ここがポイント!】
- 核にあるのは、捨てずにピンで留めて残しておく、という動作のイメージ
- 相手を否定せずに話題だけ止められる、進行役向きの一言
- 戻る約束が前提なので、come back to it とセットにすると誠実に響く
『メンタリスト』S01E22のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
前日、ジェーンが教官を縛って子どもたちに接触したため、CBIと学校側の関係は冷え込んでいます。翌朝、リズボンは謝罪から入り、ジェーンも今日はおとなしくすると約束しました。ところがその直後、ジェーンは校長のマクレーンに「ザカライアとは誰か」と切り込み、嘘だと決めつけて挑発を始めます。苛立った校長がリズボンに詰め寄ったところで、彼女がどう場を収めるかが見どころです。
Jane: Oh, I’m kidding with you. I get bored. See, the thing is, you have heard of Zachariah. You know who Zachariah is, and you’re scared of Zachariah. And we’re gonna find out why.
(ああ、からかっただけですよ。退屈でしてね。ただね、あなたはザカライアのことを聞いたことがある。誰なのかも知っているし、怖がってもいる。その理由は、こちらで突き止めます)Lisbon: Let’s put a pin in that, shall we? We have information putting Justin Prentiss at Mr. Winston’s house the night he went AWOL. He went up there on a regular basis with a group of kids to torment Mr. Winston.
(その話はいったん置きましょうか。ジャスティン・プレンティスが無断で抜け出した夜、ウィンストンさんの家にいたという情報があります。彼は仲間の生徒たちと定期的にあの家へ通っては、ウィンストンさんに嫌がらせをしていた)Maclean: So says Mr. Winston. Has he any proof?
(ウィンストンがそう言っているだけでしょう。証拠はあるんですか)Lisbon: Why would he lie?
(なぜ彼が嘘をつくんです?)The Mentalist Season1 Episode22 (Blood Brothers)
シーン解説と心理考察
リズボンの一言は、二人の間に割って入る合図です。注目したいのは、ジェーンの見立てを取り下げていないところ。その話は間違いだ、ではなく、その話にはピンを刺しておこう、と言っています。相棒の読みを認めたまま、いま扱う話題からだけ外す形になっています。
この言い方は、校長にとっても救いになります。真正面から否定されたわけでも、追及が終わったわけでもない。宙ぶらりんのまま次の話題へ移されることで、身構えを解く間もなく本題の質問が飛んできます。証拠のある情報から順に置き直すという、捜査官らしい組み立てが表れています。
暴走する相棒を止めながら、その読み自体は後で必ず回収する。二つの役目を同時にこなす短い一文が、リズボンという人物の立ち位置をよく見せています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
コルクボードにメモを留める動作を思い浮かべてください。いま扱えない話が出てきたら、その紙を丸めて捨てるのではなく、ピンを一本刺してボードの端に残しておく。put a pin in that が表しているのは、この「捨てないが、いまは開かない」という中間の状態です。
ピンには二つの役目があります。話をその場で止めることと、あとで見つけられるように場所を示しておくこと。だからこの言い方をされた側は、否定されたとは感じません。劇中のリズボンも、相棒の推理をボードの端に留めて本題に戻りました。ピンを刺す手つきごと覚えておくと、口調が強くなりすぎずに済みます。
例文で覚える「put a pin in that」
会議や打ち合わせの進行に直結する表現なので、場を仕切る立場の一言としてよく登場します。三つの場面で見てみましょう。
Let’s put a pin in that and come back to it after lunch.
(その件はいったん置いて、昼食後に戻りましょう)
議論が長引いてきたときの進行役の一言です。come back to it を添えると、戻る約束まで含めて示せます。いつ戻るかまで言い切ると、参加者の納得感が変わります。
We put a pin in the redesign last quarter and never picked it back up.
(前四半期にデザイン刷新を棚上げしたきり、結局手をつけていません)
止まったままの案件を振り返る場面です。過去形にすると、そのまま忘れられたという含みも出せます。保留が長引いたことへの反省が、静かににじむ言い方になります。
A: Should we also talk about next year’s budget?
B: Good point. Can we put a pin in it until the numbers are in?
(A:来年度の予算についても話しますか)
(B:いい指摘です。数字が出るまで保留にできますか)
判断材料が足りないときの往復です。Good point. を前に置くと、相手の提案を認めたうえで先送りにする形になります。否定ではなく順番の問題だと示せるのが、この組み合わせの利点です。
あわせて覚えたい関連表現
circle back to 〜
(あとで〜に戻る)
put a pin in that が「いま止める」ことに重心を置くのに対し、こちらは「後で戻る」約束の部分だけを取り出した言い方です。二つを組み合わせて、止めることと戻ることを同時に示す形もよく使われます。
park that (for now)
(その話はいったん置いておく)
イギリス英語圏でよく使われるくだけた言い方で、意味はほぼ同じです。車を停める比喩なので、あとで動かすという含みが自然に残り、放置という印象になりにくくなります。
drop it
(その話はもうやめて)
こちらは戻る前提のない打ち切りです。put a pin in that が保留なのに対し、drop it は話題そのものを終わらせるため、強さがまったく違います。進行役よりも、当事者が声を荒げる場面で出てくる言い方です。
Note|会議で話を止めるときの、強さの目盛り
英語の会議には、相手の発言を退けずに進行を戻す言い方がいくつも用意されています。並べてみると、やわらかい順にきれいな目盛りができあがります。
いちばん角が立たないのが Let’s circle back to that. で、戻る約束だけを前に出す形です。次が put a pin in that、そして park that (for now)。ここまでは、いずれも「価値は認めるが、いまではない」という体裁を保っています。もう少し事務的になると Let’s take that offline. が入り、この場では扱わず別途、という線引きになります。いちばん強いのが Let’s move on. と Drop it. で、前者は進行の宣言、後者は打ち切りの命令です。
この目盛りの中で、扱いに注意が必要な語がひとつあります。table something です。アメリカ英語では「棚上げにする」、つまり保留を意味しますが、イギリス英語では逆に「議題に載せる」の意味で使われる場合があります。同じ会議で米英の参加者が混じっているとき、この一語だけは意図と逆に伝わりかねません。誤解を避けたい場面では、put a pin in that のように動作が目に浮かぶ言い方のほうが安全に働きます。
どの一語を選ぶかで、相手に残る印象は驚くほど変わります。
まとめ|リズボンがピンを刺した理由
put a pin in that は、話題を捨てずに、いまは扱わないと決めるための表現です。ピンで留めて目印だけ残す、という動作がそのまま意味になっているため、相手の意見を否定せずに議題から外せます。
会議に持ち込んでおくと、脱線を止める場面でずいぶん楽になります。相手を遮る必要も、間違いだと宣言する必要もない。come back to it や after lunch を添えれば、戻る時期まで示せて、保留がそのまま放置に見えることもありません。
劇中のリズボンも、相棒の読みを否定せずにボードの端へ留め、証拠のある話へ場を戻しました。話の順番を組み替えたいときの一言として、表現の引き出しに加えてみてください。


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