海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
捜査ドラマで、地図の上の何もない一点に手がかりが残されている。そんな瞬間が物語の折り返しに置かれることがあります。
その「何もない場所」を英語でどう言うかが「in the middle of nowhere」です。『メンタリスト』シーズン2第22話の中盤、容疑者の通話記録を追ったチームが、発信の終着点の奇妙さに気づくシーンに登場します。nowhere という否定の語がなぜ場所として扱われるのか、一緒に見ていきましょう。
「in the middle of nowhere」の意味とニュアンス
in the middle of nowhere
意味:何もない場所に、人里離れたところで
建物も人通りも目印もない一帯を指す言い方です。nowhere は本来「どこにも〜ない」という否定の副詞ですが、この表現では the middle of に続く名詞として扱われます。「どこでもない場所」という土地がまず立ち上がり、その真ん中にいる、という構造になっています。
指しているのは物理的な遠さだけではありません。地名を言っても伝わらない、目印を挙げようにも何もない、という説明のしようのなさが含まれます。そのため、車が故障した、電波が届かない、宿の立地がひどかったといった、辺鄙さが困りごとになる場面で特によく使われます。
トーンは中立からやや否定寄りです。不便さや心細さがにじむため、自分の出身地に使えば軽い自嘲になり、他人の選んだ場所に使えば批判めいて響きます。一方で、静けさを求めて意図的に離れた場所を選ぶ文脈では、肯定的な響きに転じることもあります。out や way を添えて out in the middle of nowhere とすると、遠さがさらに強調されます。
【ここがポイント!】
- nowhere を「どこでもない場所」という土地として扱うのが核
- 距離の遠さより、説明のしようがないという感覚を運ぶ一言
- 不便さがにじむので、他人の場所に使うと批判に聞こえやすいのが注意点
『メンタリスト』S02E22のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
事情聴取を終えた直後、容疑者が匿名の使い捨て携帯へ一本だけ電話をかけていたことが判明します。CBIオフィスに戻ったチームがその通話記録を追うと、発信が終わった位置に不自然な点が見つかります。報告する側が「妙なんです」と前置きを置いてから中身を出すところに、この一言が置かれています。
Rigsby: I checked Lynch’s phone records. He made a single call right after we left the interview to an anonymous disposable cell.
(リンチの通話記録を調べました。聴取を終えた直後に、匿名の使い捨て携帯へ一本だけかけています)Lisbon: Does it say where it originated?
(発信元は分かる?)Rigsby: Here’s the weird thing… The call ends at a cell tower out in the middle of nowhere.
(妙なんです。通話が終わっているのは、何もない場所にある基地局なんです)Lisbon: That is weird.
(確かに妙ね)The Mentalist Season2 Episode22(Red Letter)
シーン解説と心理考察
報告の順番に工夫が表れています。事実を並べてから結論を出すのではなく、「妙なんです」と違和感を先に差し出し、相手の関心を引き寄せてから中身を出しているからです。上司の判断を仰ぐ場面で、聞く姿勢を作ってから話す手順が選ばれています。
in the middle of nowhere が効いているのは、その位置が地名では説明できないからです。住所を言っても施設名を言っても、何が奇妙なのかは伝わりません。「何もない場所」と言い切ることで、不自然さが一語で共有されます。
リズボンが「確かに妙ね」と短く返すのも、この共有が成立した証と読み取れます。長い説明を経ずに違和感が渡り、次の行動が決まる。捜査チームの言葉の速度が、この短いやり取りににじむ場面です。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
地図を大きく広げて、指を置く目印を探しているのに、置ける場所がひとつもない。そんな光景を思い描くと定着しやすくなります。町の名前も、交差点の名前もない。あるのは一本の道と地平線だけです。
このシーンで基地局が立っていたのも、まさにそういう一帯でした。地図上の空白そのものが、事件の手がかりになっていたわけです。覚えるときは nowhere を否定語ではなく、「どこでもない場所」という名前の土地として一度受け入れてみると、その真ん中にいるという構造がすんなり入ってきます。
例文で覚える「in the middle of nowhere」
困った状況を語るときに最も生きる表現です。3つの場面で幅を見ていきましょう。
We broke down in the middle of nowhere, with no signal at all.
(何もない場所で車が故障して、電波も全然入らなかった)
旅先の失敗談を語る場面です。不便さと心細さが同時に伝わるので、この表現が最も自然に収まる型になります。
The company built the data center in the middle of nowhere to keep costs down.
(その会社はコストを抑えるため、人里離れた場所にデータセンターを建てた)
立地の理由を説明する場面です。仕事の文脈に置くと否定的な響きが薄れ、事実の描写として機能します。
A: How was the hotel you booked?
B: The photos looked amazing, but it was in the middle of nowhere.
(A:予約したホテル、どうだった?)
(B:写真はすごくよかったんだけど、周りに何もないところでさ)
旅行の感想を伝え合う場面です。but と組み合わせると、期待と実態のずれが一息で伝わります。
あわせて覚えたい関連表現
in the sticks
(田舎で、辺鄙な所で)
よりくだけた口語で、軽い見下しが混じることがあります。今回のフレーズが無人に近い印象を運ぶのに対し、こちらは人が住んでいる田舎を指す点が違います。
off the beaten track
(人があまり行かない場所に)
観光の文脈で好意的に使われることが多い言い方です。穴場という含みがあり、不便さを嘆く今回のフレーズとは評価の向きが逆になります。
out in the boonies
(ど田舎に)
アメリカ英語の口語で、in the sticks に近い語感です。かなりくだけているため、今回のフレーズのように仕事の場面へ持ち込むには向きません。
Note|「どこでもない場所」を土地として扱う発想
日本語で辺鄙な場所を言うとき、「ど田舎」「人里離れた」「山奥」のように場所の性質を形容します。英語の in the middle of nowhere は少し違う道を通ります。否定の語そのものを、土地の名前の位置に置いてしまうのです。
nowhere は no と where が結びついた語で、本来は「どこにも〜ない」という副詞です。ところがこの表現では the middle of に続いています。of の後ろに来られるのは名詞ですから、nowhere はここで場所の名前として振る舞っていることになります。同じ発想は out of nowhere(どこからともなく)にも見られ、こちらでは nowhere が出発地として扱われます。
日本語には、この「無いという状態に名前をつけて、その内部に立つ」という言い方があまりありません。「何もないところ」と言うときの「ところ」は、あくまで実在する場所を指しています。一方の nowhere は、地図に載らないことを前提にした場所です。存在しないものを座標として扱う点が、日本語の発想からは一歩ずれています。
この違いを踏まえると、劇中の使われ方もより鮮明になります。基地局の位置は座標としては特定できているのに、報告する側は「何もない場所」と言い切りました。座標があっても、意味のある場所としては説明できない。その説明不能さこそが、この表現の運ぶ中身だと言えます。
否定語が土地になる瞬間を知ると、訳語だけでは届かない層が見えてきます。
まとめ|地図に載らない場所を一語で
in the middle of nowhere は、地名でも施設名でも説明できない場所を、たった一語で片づけてしまう表現です。距離の遠さより、説明のしようがないという感覚を運ぶところに特徴があります。
この一言が使えると、旅先の失敗談も、立地の説明も、待ち合わせ場所への疑問も、細かい描写を重ねずに伝えられます。相手の頭の中に「何もない一帯」が一瞬で立ち上がるので、会話のテンポが落ちません。
車が止まっても、電波が切れても、宿がはずれても、その状況をひと息で説明できる。そんな一言です。


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