海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
正直あまり得意ではない相手なのに、仕事ぶりを見せられて認めざるを得なかった、ということはありませんか。
そんなときに口をついて出る「know one’s stuff」を、『メンタリスト』シーズン3第12話の序盤、先回りして聞き込みを終えていたコンサルタントを見送ったあとの会話から、一緒に見ていきましょう。
「know one’s stuff」の意味とニュアンス
know one’s stuff
意味:その分野をよく分かっている、腕が確かだ
stuff はもともと「もの」「中身」を指す、輪郭のぼんやりした語です。know one’s stuff を直訳すれば「自分のものを知っている」となりますが、ここでの stuff は、その人が仕事で扱ってきた材料や道具、蓄えてきた知識のひとまとまりを指しています。つまり、自分の持ち場の中身を分かっている、ということです。
実務能力や専門知識をしっかり身につけている人に向ける表現です。知識が現場経験から得られたのか、学習や研究から得られたのかは限定しません。日本語なら「よく分かっている」「その道に詳しい」などが近い表現です。
口語性の強い表現なので、会話のなかでは褒め言葉として自然に響く一方、書き言葉ではやや砕けた印象になります。one’s の部分は主語に合わせて his、her、their と変えて使うのが基本の形です。
【ここがポイント!】
- 核は「自分の分野の知識や技能をよく身につけている」こと
- 実務経験にも学術的な知識にも使え、知識の獲得源は限定しない
- one’s は主語に合わせて his / her / their と変えるのが使い方のコツ
『メンタリスト』S03E12のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
被害者が通っていたホームレスシェルターに CBI が着くと、コンサルタントのモンタギューがすでに聞き込みを終えていました。統計上の傾向から立ち寄り先を割り出したという彼女に、ジェーンは「当てずっぽうだ」と切り返します。二人が去ったあと、リズボンが今回のフレーズを口にします。認めたくない相手を認める言い方として見てみましょう。
Jane: So you… guessed.
(つまり…当てずっぽうだ)Montague: Ah, it’s more of a scientific hypothesis, really.
(いえ、どちらかというと科学的な仮説です)Lisbon: Just keep us in the loop.
(今後は私たちにも逐次知らせてください)Montague: Noted. I need to head back and code these interviews. If you’ll excuse us.
(承知しました。戻ってこの聞き取りをコード化しないと。では失礼します)Lisbon: You have to admit, she really knows her stuff.
(認めるしかないでしょ。彼女、本当によく分かってる)Jane: I’m admitting nothing. She’s huffing and puffing.
(何も認めないよ。ただ息巻いてるだけだ)The Mentalist Season3 Episode12(Bloodhounds)
シーン解説と心理考察
対象句の一言には、好き嫌いと評価を切り分ける姿勢が出ています。モンタギューの物言いは決して感じがよいわけではありません。それでも、結果を出したという事実は動かせない。You have to admit(認めるしかないでしょ)という前置きが、その渋々ぶりをそのまま伝えています。
対してジェーンは「何も認めない」と即答します。統計から導いた答えと、自分が観察から導く答えを同じ土俵に乗せたくないからです。この対立はエピソードの終わりまで解消されません。
huffing and puffing(息巻いている)という返しは、狼が息を吹きかけて家を吹き飛ばそうとする童話の場面を思わせる言い回しで、大げさに騒いでいるだけだという皮肉になっています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
stuff を「道具箱の中身」と考えると、この表現の輪郭がはっきりします。どこに何が入っていて、どれをいつ取り出せばいいかをよく知っている状態です。本や授業から身につけた知識でも、日々の経験から得た技能でも、その分野をよく理解していれば使えます。
『メンタリスト』のこの場面で認められているのは、派手な推理ではありません。モンタギューが施設に片っ端から電話をかけ、仮説を結果へつなげたことです。必要な知識や技能を道具箱から的確に取り出す姿を思い浮かべると、know one’s stuff の評価の向きが見えてきます。
例文で覚える「know one’s stuff」
相手を認めるときの表現ですが、場面によって響き方が変わります。3つの例文で、その温度差を見てみましょう。
Don’t worry, our accountant knows her stuff.
(心配ないよ、うちの会計士はよく分かってるから)
税務の手続きに不安を漏らした同僚に返す一言。専門職への信頼を、堅苦しくならずに伝えられます。
He may be young, but he knows his stuff.
(彼は若いけど、ちゃんと分かってる)
年齢を理由に不安視された部下をかばう場面。but の前に譲歩を置くことで、擁護の説得力が増します。
A: Should we bring in an outside consultant?
B: Let’s ask Maya first. She knows her stuff.
(A:外部のコンサルタントを入れたほうがいいかな?)
(B:まずマヤに聞こう。彼女はよく分かってる)
社内で対応できるかを相談する会話。人選の理由を一言で示せるため、推薦の場面と相性のいい表現です。
あわせて覚えたい関連表現
know what one is doing
(自分が何をやっているか分かっている)
目の前の作業を的確に進めていることを指します。分野全体の理解までは含まないため、相手の不安を打ち消したい場面で選ばれます。
learn the ropes
(仕事のこつを覚える)
帆船の索具に由来する表現で、習得の過程を指します。know one’s stuff が習得し終えた状態を指すのに対し、こちらはその手前の段階にあたります。
be well-versed in
(〜に精通している)
書き言葉寄りの表現で、ある分野に精通していることを示します。知識の獲得源を読書だけに限定せず、履歴書や紹介文など正式な文脈にも使えます。
Note|口語の評価を正式文書へ移すとき
劇中の knows her stuff は、同僚同士の会話だからこそ自然に響く言い方です。同じ内容を書類に落とすとなると、英語は別の語を選びます。
同僚の実力を口頭で短く評価したい場面では、know one’s stuff が選択肢になります。She knows her stuff. と簡潔に述べることで、その分野の知識や技能を評価できます。stuff という輪郭のぼんやりした語が、細部を列挙せずに全体的な力量を示します。
人事評価や推薦状では、know one’s stuff がinformalで内容も抽象的なため、demonstrates strong expertise、has deep subject-matter knowledge、is highly proficient in など、評価対象を具体化した表現のほうが適しています。ただし「正式文書ではほぼ使われない」と頻度を断定するのではなく、文体と具体性の問題として考えます。
同じ人物への同じ評価が、話し言葉と書き言葉でこれだけ入れ替わる。フォーマル度は語の丁寧さだけで決まるのではなく、どこまで曖昧なままにしておけるかでも決まっていることが見えてきます。
だからこの表現は、口に出す場面を選べば強い味方になります。会議で誰かを推すとき、雑談で職人の腕を認めるとき。書類に書き写す必要が出てきたら、そこで語を入れ替えればいいと覚えておくと迷いません。
曖昧なまま伝わることが、口語の強みでもあります。
まとめ|「認めるしかない」に学ぶ
know one’s stuff は、肩書きや学歴の有無を述べる表現ではなく、自分の分野の知識や技能をよく身につけているという評価です。知識の獲得源は限定しないため、学術的な知識にも実務で培った技能にも使えます。だからこそ、渋々相手の力量を認める場面にもよく似合います。
この一言を持っておくと、人を推すときの言い方が軽くなります。長い説明をしなくても、相手の実力を一息で伝えられるからです。会議で誰かの名前を出すとき、雑談で職人の仕事ぶりを語るとき、使いどころは思いのほか多くあります。
好き嫌いと評価を切り分けるリズボンの一言を思い出しながら、表現の引き出しに加えてみてください。


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