海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
とんでもない作り話を、まばたきひとつせずに言い切る人がいます。表情が崩れないぶん、聞いている側はかえって判断に困ってしまうものです。
そんな場面を言い表す「with a straight face」を、『メンタリスト』シーズン3第18話、亡くなった夫が語っていた話をめぐって、母と娘が屋敷の応接間で言い争うシーンから、一緒に見ていきましょう。
「with a straight face」の意味とニュアンス
with a straight face
意味:真顔で、表情を崩さずに
straight は顔の造作ではなく、表情の平坦さを指しています。笑うと口角や目尻が動いて顔の線が崩れますが、その線が動かないまま保たれている状態が straight face です。
この表現は、笑わずに何かを言ったり、表情を変えずに振る舞ったりする様子を表します。冗談にも、信じがたい主張にも使われますが、その表情だけで嘘や隠された感情が証明されるわけではありません。
だからこの表現には、話し手の評価がにじみます。冗談の文脈なら芸の見事さへの称賛になり、嘘の文脈なら厚かましさへの非難になります。どちらに転ぶかは、前後の内容とトーンが決めます。
動詞を伴う keep a straight face という形もよく使われます。こちらは笑わずに真顔を保つ、という行為に焦点を置く言い方です。
【ここがポイント!】
- 表情を変えず、真顔のまま話したり振る舞ったりする様子を表す
- 冗談を笑わずに言う場面と、嘘を平然と口にする場面の両方で使える表現
- 褒め言葉か非難かは前後の文脈が決めるので、そこを読み取るのがコツ
『メンタリスト』S03E18のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
亡くなったティムが生前に語っていた不可解な体験が明らかになり、CBIが遺族を再訪します。妻のペレグリンは夫の言葉を信じており、母エルスペスはそれを一蹴する。二人の応酬が重なる中で、この表現が飛び出します。
Elspeth: Rubbish! When someone tells you something contrary to fact, they are lying, full stop.
(ばかばかしい! 事実に反することを言ったなら、それは嘘。以上よ)Peregrine: Don’t start, Mother.
(やめて、お母さん)[…]
Elspeth: And he said it with a straight face. You honestly think…
(しかも真顔でそう言ったのよ。本気で信じているの…)Lisbon: Ladies. Ladies, that’s enough.
(お二人とも。もうそこまでに)The Mentalist Season3 Episode18(The Red Mile)
シーン解説と心理考察
エルスペスの論法は徹底しています。事実に反することを言えば、それは嘘。full stop、以上。例外も情状も認めない一文で、娘の主張を切り落としています。
続く And he said it with a straight face という一言で、エルスペスは「真顔で語った」ことを非難の材料にしています。ただし、表情だけから発言の真偽や本人の感情を確定することはできません。
同じ表情でも、誠実さと受け取る人もいれば、厚かましさと受け取る人もいます。この場面が示すのは真顔の客観的な意味ではなく、家族が同じ出来事を別々に解釈していることです。
そして You honestly think… と言いかけたところで、リズボンが Ladies と割って入ります。捜査に必要な情報を聞き出しに来た側が、家族の対立に巻き込まれて仕切り直しを図る。事件の背景に一族の関係がどう絡んでいるかを、視聴者に予感させる場面でもあります。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
おかしい話をしているのに話し手が笑わない場面を思い浮かべると、この表現の使いどころがつかめます。焦点は、内面で何を感じているかではなく、外から見える表情が変わらないことです。
keep a straight face は「笑わずに真顔を保つ」、with a straight face は「真顔で」という違いがあります。どちらも、感情を確実に隠していると断定する表現ではありません。
劇中では、母親が「真顔でそう言った」と吐き捨てます。同じ真顔を、娘は誠実さの証と受け取り、母は厚かましさの証と受け取る。あの応接間の温度差ごと覚えておくと、この表現が冗談にも嘘にも使える理由が腑に落ちます。
例文で覚える「with a straight face」
冗談を言い切る場面から、相手の言い分に呆れる場面まで幅があります。3つの例文で、その振れ幅を見ていきましょう。
He told the whole story with a straight face, and half the room believed him.
(彼は最後まで真顔で話しきって、部屋の半分は本気にした)
場を盛り上げた作り話を後から人に伝える場面です。文末に置くのがこの表現の最も基本的な形になります。
The presenter delivered the sales figures with a straight face, though everyone knew the numbers were off.
(発表者は平然と売上の数字を読み上げたが、その数字がおかしいことは全員が知っていた)
社内の出来事を第三者に報告する場面です。though 節と組み合わせると、表情と内容の食い違いがくっきり浮かび上がります。
A: He said the delay was nobody’s fault.
B: How can he say that with a straight face after last week?
(A:今回の遅延は誰のせいでもないって言ってたよ)
(B:先週のことがあって、よくそれを真顔で言えるね)
相手の言い分に呆れて問い返す場面です。劇中のエルスペスに近い、非難を含んだ使い方になります。
あわせて覚えたい関連表現
keep a straight face
(真顔を保つ、笑いをこらえる)
表情を保つ行為そのものを述語にした形です。with a straight face が「どう言ったか」を修飾するのに対し、こちらは I couldn’t keep a straight face のように、こらえきれなかった側を語るときによく使われます。
a poker face
(感情を出さない顔)
ポーカーで手札を悟らせないための無表情に由来します。隠しているのが感情や思惑である点、そして長時間保つものである点が、笑いを一瞬こらえる straight face との違いになります。
deadpan
(無表情な、真顔の)
形容詞や副詞として使い、笑いを取るための無表情という芸風の色が濃い語です。deadpan humor は一つの型として定着しており、特定の一瞬を指す straight face とは指す範囲が異なります。
Note|真顔から読み取れること、読み取れないこと
straight face は外から観察できる表情を表す言葉です。そこから話者の内面や発言の真偽まで自動的に決まるわけではありません。
微表情は短時間に現れる表情として研究されてきましたが、隠された感情や嘘を高い精度で見抜ける万能の手がかりではありません。検証研究では、訓練を受けた人でも識別精度に大きな制約があることが示されています。
したがって、with a straight face を「感情を能動的に抑えている証拠」と読む必要はありません。単に笑わなかった、表情を崩さなかったという描写として受け取り、評価は文脈から判断します。
劇中でエルスペスは「真顔で言った」ことを、自分の評価を補強する材料にしています。しかし、その読みはエルスペス自身の解釈です。母娘の対立は、表情の科学的な判定ではなく、同じ話をどう受け取ったかの違いにあります。
真顔は見える事実ですが、その意味は前後の状況と切り離せません。
まとめ|応接間の温度差から学ぶこと
「with a straight face」は、崩れそうな顔の線を保ったまま何かを言い切ることを表します。冗談を笑わずに言う場面にも、嘘を平然と口にする場面にも使える、幅の広い言い回しです。
褒め言葉になるか非難になるかは、前後の文脈が決めます。この判断ができるようになると、映画やドラマのセリフの受け取り方が一段細かくなります。keep a straight face、poker face、deadpan との違いを押さえておけば、選び分けも利くようになります。
同じ真顔が正反対に読まれた応接間の数十秒を思い出しながら、表現の引き出しに加えてみてください。


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