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家族だからこそ言えてしまう厳しい一言が飛び出す瞬間が、ドラマには時々あります。
そんな場面で使われるのが「one’s own flesh and blood」です。血を分けた身内であることを、あえて言葉にして持ち出す言い方です。犯罪捜査ドラマ『メンタリスト』シーズン3第21話から、捜査官リグスビーが実の父親と向き合う場面を、一緒に見ていきましょう。
「one’s own flesh and blood」の意味とニュアンス
one’s own flesh and blood
意味:自分と血のつながった家族、血を分けた身内
flesh は「肉」、blood は「血」。体をつくる二つの材料を並べることで、同じ体から分かれた相手、つまり血縁者を指します。日本語の「血を分けた」とほぼ同じ発想でできている言い方です。
ただの family と比べると、はるかに重く響きます。切っても切れないつながりであることを、わざわざ言葉にして差し出しているからです。そのため、中立的な事実の説明にはあまり使われません。
実際に使われるのは、その重さを主張の根拠にしたい場面です。「身内なのだから当然こうすべきだ」と助けを求めるとき、あるいは「身内なのにこの仕打ちか」と責めるとき。どちらの向きでも、血縁が話し手の言い分を支える土台になっています。
my own、his own のように所有格と own を伴う形が定型です。own が入ることで「ほかでもない自分の」という強調が加わります。
【ここがポイント!】
- 肉と血という体の材料を並べて、同じ体から分かれた相手を指す言い方
- family より格段に重く、事実の説明ではなく主張の根拠として使われる一言
- 助けを求めるときにも責めるときにも使えるので、前後の文脈から向きを読むのがコツ
『メンタリスト』S03E21のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
刑務官の殺害事件を追う捜査の途中、捜査官リグスビーは元受刑者リストに載っていた実の父スティーヴンを訪ねます。アリバイの確認を終えたあと、リグスビーは父の暮らしぶりへ話を向けます。まともに働いていないことを察したうえでの質問でしたが、父はそれに答えず、まったく別の方向から言葉を返します。その一言に、このフレーズが登場します。
Rigsby: You working?
(仕事はしてるのか)Steven: I get by.
(食ってはいける)Rigsby: Smuggling cigarettes? Dealing meth again?
(タバコの密輸か。またクスリの売買か)Steven: My own flesh and blood — a lousy cop. Makes me wanna puke.
(俺の血を分けた息子が、しみったれた警官とはな。吐き気がする)Rigsby: I just don’t wanna see you back in jail. That’s all.
(あんたにまた刑務所へ戻ってほしくないだけだ。それだけだよ)The Mentalist Season3 Episode21 (Like a Redheaded Stepchild)
シーン解説と心理考察
この一言の使い方が、通常とは逆を向いているところに目が留まります。血を分けた身内だという主張は、ふつう相手との近さを訴えるために持ち出されます。ところが父は、まさにその近さを恥として突きつけています。血縁が愛情の根拠ではなく、裏切りの重さを測る物差しとして働いている場面です。
父の言い分では、息子が警官になったこと自体が身内への背信にあたります。だからこそ「自分の血を分けた」という前置きが必要になります。ただの知り合いが警官でも腹は立たない。血がつながっているからこそ許せない、という筋道がこの一言に重なっています。
対するリグスビーは、非難に非難で返しません。刑務所に戻ってほしくない、という短い一言だけを置きます。息子として父を案じる言葉ですが、父はそれを「独善的だ」と切り返し、母親の血のせいだとまで言います。やり取りが示しているのは和らぎではなく、息子の気遣いさえ侮辱として受け取る父の嫌悪と、長く続いてきた親子の対立です。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
flesh(肉)と blood(血)。体をつくる二つの材料が並んでいる、という絵をそのまま持っておきましょう。同じ材料からできている、つまり同じ体から分かれた相手だ、という理屈です。日本語の「血を分けた」に、もう一つ材料が足されただけと考えれば、形も残りやすくなります。
このシーンでは、父がその言葉を口にした直後に「吐き気がする」と続けました。血のつながりを持ち出しておきながら、次の呼吸で嫌悪をぶつける。この落差が強いので、一度見ると場面ごと記憶に残ります。
my own flesh and blood と、所有格に own が重なる形が定型です。「ほかでもない自分の」という念押しが入っていると押さえておけば、語順も自然に出てきます。
例文で覚える「one’s own flesh and blood」
血縁を主張の土台に据える言い方なので、責める側にも守る側にも回ります。三つの場面で見ていきましょう。
How could you do that to your own flesh and blood?
(よくも血を分けた身内にそんなことができたな)
家族のあいだで裏切りが明らかになり、相手を問い詰める場面です。この表現がもっとも自然に働く型で、非難の重さを血縁で裏づけています。
I can’t turn my back on my own flesh and blood.
(血のつながった相手を見捨てることはできない)
援助するかどうかで迷った末に、決断を口にする場面です。can’t と組み合わせると、選択ではなく果たすべき務めとして語られます。
A: Why would you lend him that much money?
B: He’s my own flesh and blood. What was I supposed to do?
(A:なんで彼にそんな大金を貸したの)
(B:血のつながった身内だからさ。ほかにどうしろって)
友人から判断の理由を問われ、血縁を答えとして差し出す場面です。理屈の説明を省いても通じてしまうところに、この言い方の強さがあります。
あわせて覚えたい関連表現
blood is thicker than water
(血は水よりも濃い)
ことわざの形で、血縁が他の関係より優先されるという一般論を述べます。one’s own flesh and blood は特定の相手を指す名詞句なので、文の中での働きが異なります。
next of kin
(最近親者)
病院や役所で使われる事務・法律の用語で、感情を含みません。同じ血縁でも、手続き上の続柄を指すという点で用途がまったく違います。
one’s own kind
(自分と同類の者)
血縁ではなく、出身や立場、性質が同じ者を指します。集団への帰属を語る場面で使われ、家族関係には用いません。
Note|英訳聖書が残した flesh and blood
flesh and blood という組み合わせは、血縁を指すときだけに使われるわけではありません。同じ形が、まったく別の意味でも英語に残っています。その二つの顔を見ていきましょう。
flesh and blood は、英訳聖書に繰り返し現れる表現として英語に根づいたとされています。そこで指していたのは血縁ではなく、生身の人間そのものでした。霊的な存在や神と対比して、肉体を持ち、傷つき、疲れ、限界のある存在としての人間を言い表す言い方です。
この用法は現代英語にも残っています。He’s only flesh and blood.(彼だって生身の人間だ)と言えば、完璧を求めるのは酷だという意味になります。失敗した相手をかばうとき、あるいは自分の限界を認めるときの定型句です。ここでの flesh and blood に、家族の意味はまったく含まれていません。
一方で、同じ二語が血縁を指す用法にも広がりました。同じ肉と血からできている、という理屈をたどれば、生身の人間という意味からも、血のつながりという意味からも、無理なく説明がつきます。所有格と own を伴う my own flesh and blood の形になると、後者の意味に定まります。
つまり、形が同じでも見分けは難しくありません。所有格が付いていれば血縁、only や just を伴って人間一般を語っていれば生身の人間です。劇中の父の一言に my own が付いていたのは、息子を指していたからでした。
同じ二語が、人間そのものと、家族の重さを両方担っています。
まとめ|血のつながりを言葉にするとき
one’s own flesh and blood は、血縁を単なる事実としてではなく、主張の土台として差し出す言い方です。family と言えば済むところをあえてこの形にするとき、話し手は必ず何かを訴えています。
助けを求める場面では、断りにくさを生む一言になります。責める場面では、非難の重さを一段引き上げます。同じ表現がどちらにも転ぶので、聞こえてきたら前後の文脈から向きを確かめるのが実用上の要点です。
家族という言葉では足りないときに選ばれる、重さのある一言です。関係の近さを言葉で押し出す表現として、会話のレパートリーに加えてみてください。


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