「wild goose chase」の意味と使い方|『メンタリスト』S03E22で学ぶ英会話

「wild goose chase」の意味と使い方を解説

海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。

遠くの店まで足を運んだのに目当ての品がなかった、窓口をたらい回しにされて何ひとつ進まなかった。後から振り返ると、最初から成果の出ようがなかった、という経験はありませんか。

そんなときにぴったりの「wild goose chase」を、『メンタリスト』シーズン3第22話の序盤、有力な容疑者が浮かんだと聞かされたジェーンが気のない返事を返すシーンから、一緒に見ていきましょう。

目次

「wild goose chase」の意味とニュアンス

wild goose chase
意味:無駄骨、徒労に終わる追跡

直訳すると「野生のガチョウを追いかけること」。空を渡る雁を人が走って捕まえようとしても、近づけば飛び立ち、また降りては飛び立つだけで、いつまでも手は届きません。この「追う側は真剣なのに、そもそも捕まる見込みがない」という絵が、そのまま比喩になっています。

日本語では「無駄骨」「徒労」「空振り」などが近い訳語になります。ただ、単に「失敗した」と言っているわけではありません。時間と労力をかけて追いかけたのに、その追跡自体が最初から実を結ばないものだった、という空しさが核にあります。

使われるのは、捜査、調査、探し物、問い合わせなど、何かを追いかける場面です。it turned out to be a wild goose chase(結局、無駄骨だった)のように結果を振り返る形と、send someone on a wild goose chase(人を無駄足に行かせる)のように誰かを巻き込む形の両方でよく登場します。

【ここがポイント!】

  • 核は「追いかけても捕まらない」という、追跡そのものの空しさ
  • 失敗の報告ではなく、追跡が実を結ばなかったことを名指しする一言
  • 結果を振り返る it turned out to be 〜 と、人を巻き込む send someone on 〜 の2つの形を押さえるのがコツ

『メンタリスト』S03E22のシーンで見てみよう

意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。

コンサートバイオリニストが射殺され、CBI が捜査に入った直後の場面です。捜査本部には被害者の元恋人という分かりやすい容疑者が浮かんでいますが、ジェーンは事件そっちのけで、被害者が生前に残した演奏の録音に聴き入っています。しびれを切らしたリズボンが声をかけたところに、ジェーンの返事が飛びます。

Lisbon: We’ve got a little homicide investigation going on here. You care to join us?
(こっちは殺人事件の捜査中なんだけど。参加する気はある?)

Jane: Yeah, I’m a little busy right now. Brahms’ “Concerto in D major.” Eleanor’s the soloist. She’s very good, very elegant, rubato.
(ああ、今ちょっと忙しくてね。ブラームスのニ長調協奏曲。エレノアがソリストだ。とてもうまい。実に優雅で、ルバートがいい。)

Lisbon: Music later. We have a viable suspect— the victim’s ex-boyfriend.
(音楽は後。有力な容疑者がいるの。被害者の元恋人よ。)

Jane: Meh. Wild goose chase, I hope.
(ふうん。無駄骨だといいけどね。)

The Mentalist Season3 Episode22(ラプソディー・イン・レッド)

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シーン解説と心理考察

有力な容疑者が浮かんだと聞けば、捜査官なら前に進む手応えを感じるところです。ところがジェーンが返すのは Wild goose chase, I hope.、つまり無駄骨だといい、という願望でした。捜査の前進を望まないという反応の異様さが、この一言に重なっています。

理由は続くセリフで明かされます。元恋人が犯人では、悲劇的ではあっても平凡すぎる。ジェーンにとって事件は解くべき謎であり、答えが最初から見えている事件には興味が湧かないという価値観が表れています。

直前まで被害者の演奏録音を繰り返し聴いていたことも、この態度と地続きです。リズボンが Music later. と切り捨てた「音楽」は、ジェーンから見れば被害者という人物を知るための手がかりであり、供述よりも雄弁な材料でした。捜査の順序を共有していない二人の距離が、短いやり取りの温度差ににじむ場面です。

『メンタリスト』流・覚え方のコツ

野原に降りた雁の群れを、素手で捕まえようと追いかけている姿を思い浮かべてください。走って近づけば飛び立ち、少し先に降りる。また走れば、また飛び立つ。追いかけている本人は本気で足を動かしていますが、そもそも捕まる相手ではありません。この「本気で走る足」と「絶対に届かない距離」の落差が、wild goose chase の手触りそのものです。

劇中では、捜査が正しい方向に進みそうな場面でジェーンが Wild goose chase, I hope. と口にします。有力容疑者という手がかりを、届かない雁の影として扱ってしまう。この場面と結びつけておけば、このフレーズが「成果の見込みのない追跡」を指す言葉だと、皮肉の温度ごと残ります。

例文で覚える「wild goose chase」

追跡や探し物が空振りに終わった場面で活躍するフレーズです。結果を振り返る形、人を巻き込む形、会話でのやり取りと、3つの使い方で見ていきましょう。

We drove all the way across town, but it turned out to be a wild goose chase.
(町の反対側まで車を走らせたのに、結局は無駄骨だった。)
遠くの店まで探しに行った品物が置いていなかった、という帰り道の会話です。it turned out to be a 〜 と組み合わせると、「行ってみて初めて分かった」という順序まで伝わります。

Don’t send the team on a wild goose chase without checking the data first.
(先にデータを確認せずに、チームを無駄足に行かせないでください。)
根拠の薄い指示で部下を動かそうとする同僚を、会議の場で押しとどめる一言です。send someone on a wild goose chase の形にすると、責任が「行かせる側」にあることがはっきりします。

A: Did you find the file in the archive?
B: No. Whoever gave me that reference number sent me on a wild goose chase.
(A:資料庫でファイルは見つかった?)
(B:いや。あの整理番号を教えた人のおかげで、完全に無駄足だったよ。)
頼まれた調べ物が空振りに終わったあとの、同僚同士のやり取りです。Whoever 〜 と組み合わせると、徒労の原因を軽く咎める響きが加わります。

あわせて覚えたい関連表現

a fool’s errand
(愚か者の使い、無駄な用事)
引き受けた用件そのものが最初から無意味だった、という評価に重心があります。追いかける動きを描く wild goose chase に対し、こちらは用事の中身を無意味だと切り捨てる言い方です。

chase one’s tail
(堂々巡りをする、空回りする)
犬が自分の尻尾を追う姿から生まれた表現で、忙しく動いているのに前に進まない状態を指します。追う対象が外にある wild goose chase と違い、こちらは自分の中で完結した空回りです。

a dead end
(行き止まり、手詰まり)
追跡が止まった地点そのものを指す名詞です。wild goose chase が過程全体への評価であるのに対し、a dead end は「ここで終わった」という結果の状態を表します。

Note|ガチョウを追う競技だった「wild-goose chase」

ガチョウを追いかけるという奇妙な絵は、いったいどこから来たのでしょうか。実はこの表現、もともと捕まえられない鳥の話ではなく、16世紀イングランドで行われていた馬術競技の名前だったと説明されています。

その競技では、まず先頭の騎手が自由なコースを走り出します。後続の騎手たちは一定の間隔を保ったまま、その軌跡をなぞって追いかけなければなりません。空を渡る雁が斜めの列を作って飛ぶ姿に隊形が似ていたことから、この名前がついたとされます。つまり「野生のガチョウ」は追われる獲物ではなく、騎手たちが描く隊形のたとえだったわけです。競技の名前だった段階では、現在のような「徒労」という否定的な響きは、まだ薄かったことになります。

この語がシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』に現れることも、しばしば引き合いに出されます。登場人物が言葉の応酬をする場面で使われており、当時すでに一般に通じる言葉だったことをうかがわせます。ただし、そこでの用法も競技を踏まえた言葉遊びであって、現代の「無駄骨」とはまだ重なりません。競技そのものが廃れ、名前だけが言葉として残ったとき、人々は元の由来を忘れ、字面どおり「野生のガチョウを追いかける」という絵で解釈し直しました。今の意味は、この読み替えの上に成り立っていると整理できます。

そう考えると、ジェーンが口にした Wild goose chase, I hope. の背後には、二重の追いかけが横たわっていることになります。競技で先頭を追う騎手と、捕まらない鳥を追う人。どちらの絵でも、追う側だけが真剣に走り続けています。

言葉のほうも、由来から遠ざかりながら走り続けてきたのでしょう。

まとめ|ジェーンが「無駄骨だといい」と願った理由

wild goose chase は、失敗の報告ではありません。追いかけたこと自体が実を結ばなかった、という徒労を名指しする言葉です。捕まらない鳥を追う絵が核にあるので、「頑張ったのに」という悔しさよりも、「そもそも届かなかった」という空しさのほうが前に出ます。

この一言があると、空振りに終わった調べ物や外出を、湿っぽくならずに片づけられます。it turned out to be a wild goose chase と結果を振り返る形も、send someone on a wild goose chase と原因を軽く咎める形も、どちらも会話の中で自然に収まります。

有力な手がかりを前に「無駄骨だといい」と願うジェーンの反応は、事件を謎として味わう彼の姿勢そのものでした。空振りを語る言葉として、表現の引き出しに加えてみてください。

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