「have the floor」の意味と使い方|『メンタリスト』S04E05で学ぶ英会話

「have the floor」の意味と使い方を解説

海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。

会議で説明している途中に横から口を挟まれて、「いや、いま話しているのはこちらなのですが」と言い返したくなった経験はありませんか。日本語だと、つい言葉を飲み込んでしまう場面かもしれません。

そんなときに使われる「have the floor」を、犯罪捜査ドラマ『メンタリスト』シーズン4第5話の序盤、小さな島の町民集会でフェリー増便をめぐって住民同士が言い争う場面から、一緒に見ていきましょう。

目次

「have the floor」の意味とニュアンス

have the floor
意味:発言権を持っている、いま発言しているのは自分だ

会議・議会・討論会などで、正式に発言を認められている状態を表す言い方です。ここでの floor は建物の床そのものではなく、議場のうち出席者が着席し、発言する側が立つ平らな空間を指しています。そこに立っている人だけが話せる、という場の作りが、そのまま言葉になりました。

大事なのは、これが「話したい」という希望ではなく「話す権利をすでに得ている」という手続き上の事実を述べる表現だという点です。だからこそ、遮られたときの抗議として自然に働きます。I have the floor. と言えば、内容の是非に踏み込まずに「順番を守ってほしい」とだけ伝えられます。

動詞を入れ替えると役割が変わるのも特徴です。take the floor なら発言に立つこと、yield the floor なら発言権を譲ること、hold the floor なら話し続けていることを指します。同じ the floor をめぐって、始める・持つ・譲る・保つの四つが一続きの語彙として並んでいます。

【ここがポイント!】

  • 核にあるのは、議場の中で発言者だけが立てる「床」のイメージ
  • 「話したい」ではなく「話す権利がある」と告げる、手続き寄りの一言
  • 遮られたときの抗議として使われることが多く、内容論に踏み込まずに済むのがコツ

『メンタリスト』S04E05のシーンで見てみよう

意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。

舞台はサンフェリクス島の町民集会です。夏場のフェリーを増便するかどうかで、収益を見込む住民と、環境への影響を訴える蝶の保護家ガーディナーが正面からぶつかっています。数字を並べて説明していた側の話が途中で遮られ、遮られた本人が抗議に回ります。手続きを持ち出した一言が、かえって場の空気を固くしていく流れに注目してみてください。

Peter: Now–now two additional ferry crossings a weekend during the summer months equals a 35% increase in revenues projected. Now I don’t understand how anyone can be against that.
(夏場の週末にフェリーを2便増やせば、収益は35パーセント増と試算されている。これに反対する理由がわからないね。)

Gardiner: The runoff from Stack’s cattle ranch is already affecting the groundwater pH balance, and another thing that you never bring up in these–
(スタックの牧場から流れ出る表流水が、もう地下水のpHバランスに影響しているんだ。それに、あんたがこういう場で絶対に持ち出さないことがもう一つ–)

Peter: I had the floor
(私が発言していたんだが–)

Lydia: Oh, now, Peter. Let’s not be so fussy.
(まあまあ、ピーター。そう固いことを言わないで。)

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シーン解説と心理考察

ここでの I had the floor は、ガーディナーの主張への反論ではありません。中身に一切触れず、順番を破ったという一点だけを突いています。議論では押されているものの、それを認めたくない話し手の身のこわばりが、この選択にそのまま表れています。

過去形になっているところも見どころです。have the floor ではなく had the floor と言った瞬間、「さっきまで自分の番だったのに奪われた」という時間の落差が生まれます。抗議でありながら、すでに失ったものを数えている言い方でもあり、勢いのなさがにじむ場面です。

さらに、この一言に対して別の住民が「そう固いことを言わないで」と割って入ります。手続きを盾にした抗議が、共同体の中ではむしろ小さく扱われてしまう。閉じた島の集会という舞台設定が、短いやり取りの温度をやわらかく見せています。直後にリズボンとジェーンが会場に踏み込み、島の内輪の争いは殺人事件の捜査に一気に上書きされていきます。

『メンタリスト』流・覚え方のコツ

会議室の中央に、一段高い板が置かれている光景を思い浮かべてみてください。その板に立てるのは一度に一人だけ。立っている間は誰も割り込めず、降りれば次の人が上がれます。この板の上にいる状態が have the floor です。

町民集会の場面では、数字を説明していた住民がその板から押しのけられ、I had the floor と過去形で抗議します。板の上にいた自分と、いま押しのけられた自分。二つの位置の差が、そのまま時制の差になっているわけです。板に上がる take、板を降りて譲る yield、板の上に居座り続ける hold まで並べて思い出すと、四つの言い方が一枚の絵に収まります。

このエピソードの他のフレーズ

例文で覚える「have the floor」

会議の場から日常の雑談まで、順番を主張したり譲ったりする場面で幅広く使える表現です。3つの例文で、使いどころを見ていきましょう。

Hold on, I still have the floor.
(待ってください、まだこちらが話している途中です。)
打ち合わせで説明の途中に割り込まれたときの一言です。Hold on を先に置くことで、強く出すぎずに主導権を戻せます。

I’ll yield the floor to my colleague, who knows the details.
(詳しい同僚に発言を譲ります。)
プレゼンで担当を交代する場面で使われます。yield the floor は have the floor の対になる動作で、フォーマルな場ほど自然に響きます。

A: Can I jump in here for a second?
B: Let him finish. He has the floor.
(A:ちょっと口を挟んでもいいですか?)
(B:最後まで聞きましょう。いま彼の番です。)
議事進行役が場を整理するやり取りです。三人称で使うと、当人ではなく周りが順番を守らせる形になります。

あわせて覚えたい関連表現

take the floor
(発言に立つ、演壇に立つ)
have が「発言権を持っている状態」を指すのに対し、take は「発言を始める動作」を指します。議事録では take the floor が選ばれやすい表現です。

hold the floor
(話し続ける、場を独占する)
権利を持ったまま長く話し続けることを表します。have が中立なのに対し、hold には「なかなか譲らない」という含みが混じることがあります。

get a word in
(口を挟む、一言差し込む)
権利がないまま隙を突いて話す、くだけた言い方です。have the floor が正式な順番の話なのに対し、こちらは順番の外側から入り込む動きを描きます。

Note|議場の「床」が発言権になるまで

床を意味する floor が、なぜ発言権を表すようになったのでしょうか。この言い回しの背景には、議場という建物の作りが関わっているとされています。

英語圏の議場は、議長席や傍聴席と、議員が着席して議論する平らな空間とが区別された構造を持っています。この後者の空間が the floor と呼ばれ、the floor of the House のように場所そのものを指す言い方として今も残っています。議長が発言者を指名する recognize は発言権に直接関わります。一方、point of order は議事手続きへの異議、second the motion は動議への賛同を表し、どちらも単に「誰がいつ話すか」を決める語ではありません。そのなかで、floor に立つことが「発言を認められた状態」と重なり、have / take / yield / hold という動詞群を伴って定着していったと説明されています。劇中でも、別の集会場面で Point of order. The chair has not recognized Mr. Gardiner. という台詞が出てきます。

この背景を知っておくと、have the floor が単なる「話している」ではないことがはっきりします。床という物理的な場所を一人が占めるという発想があるからこそ、この表現は「順番」と「権利」を同時に含みます。日本語の「発言権」が制度としての権利だけを指すのに対して、英語側は立ち位置という身体的な絵をまだ手放していないわけです。

会議の一言に、議場の床がそのまま残っている。そう思うと、少し見え方が変わってきます。

まとめ|順番を守らせる、たった一言

have the floor は、話の中身ではなく順番だけを問題にする表現です。だからこそ、対立している相手にも使えます。内容論に踏み込まずに「いまはこちらの番です」とだけ伝えられる、線の引き方のうまい言い方だと言えます。

会議で説明を遮られたとき、日本語では黙って引き下がるか、逆に強く言い返すかの二択になりがちです。この表現を知っていると、そのあいだにもう一つ選択肢が生まれます。take と yield まで一緒に押さえておけば、発言を始めるときも譲るときも、同じ語彙の中で動けます。

会議の場で、順番を穏やかに取り戻すための一言として、表現の引き出しに加えてみてください。

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