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手伝いを買って出たら、次の週にはもっと大きな仕事が回ってきた。よかれと思ってしたことが、感謝ではなく追加の負担や余計な疑いになって返ってくる。そんな場面が、職場にも家族のあいだにもあります。
そこで肩をすくめながら口にされる「no good deed goes unpunished」を、『メンタリスト』シーズン3第14話の終盤、呼び出されたジェーンがリズボンを連れて叔母のジョディを訪ねるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「no good deed goes unpunished」の意味とニュアンス
no good deed goes unpunished
意味:親切をすると、かえって面倒や災難が返ってくる
直訳すると「罰を受けずに済む善行は一つもない」。よい行いには報いがある、という言い方を丸ごとひっくり返した形です。善意が感謝ではなく、余計な仕事や疑いや非難になって戻ってきたときに使われます。
構文はことわざらしく重々しいのに、実際の使われ方はずいぶん軽いのが特徴です。人生を悲観する場面よりも、シフトを代わったら週末がつぶれた、書類を一枚直したら五枚任された、といった日常の愚痴を締めるときのほうがよく登場します。
もう一つの特徴は、責める相手を名指ししない点です。あの人がひどい、とは言わず、世の中とはそういうものだ、という一般論の形に逃がす。おかげで、その場にいる相手を直接責めずに不満だけを置いていける、扱いやすい一言になっています。
【ここがポイント!】
- 善行には報いがある、という言い方を丸ごと反転させたことわざ
- 親切が余計な仕事に化けたときなど、自嘲や皮肉を込めて使われることがある
- ことわざの形で一般化するが、軽く聞こえるか強い非難になるかは場面と口調で変わる
『メンタリスト』S03E14のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
姪の様子がおかしいと連絡を受け、ジェーンはリズボンを連れて叔母のジョディの家を訪ねます。ジョディはこの回を通してジェーンのやり方を警戒し続けてきた人物です。玄関先の短いやりとりに、その距離感がそのまま出ています。
Jodie: Hi. Thank you for coming. I-I don’t know what’s wrong.
(来てくださってありがとう。何が起きているのか分からなくて)Jane: Not at all. I brought Lisbon along, on account of you don’t trust me, despite the fact that I helped her quit smoking. Now that’s gratitude.
(いえいえ。信用していただけていないようなので、リズボンも連れてきました。禁煙の手助けまでしたというのに。これが感謝というものですね)話者未確定(正本では話者境界なし): In there. No good deed goes unpunished.
(あの部屋よ。親切にすると、ろくなことにならない)The Mentalist Season3 Episode14(Blood for Blood)
シーン解説と心理考察
ジェーンは不満を直接ぶつけていません。信用されていない、という事実を自分から先に言葉にしてしまい、そのうえで禁煙を手伝った話を持ち出す。恩を着せているようでいて、口調は最後まで軽いままです。
Now that’s gratitude という一言は、ここでは感謝とはこういうものらしい、と皮肉を込めて響きます。本気の抗議か軽口かは台詞だけでは固定できず、口調や映像を含めて判断する必要があります。
続く正本行には In there. と対象句が並びますが、文字資料にはその間の話者境界がありません。そのため、対象句をジェーンまたはジョディの発話と決めて人物心理を説明することはできず、映像か話者ラベル付き資料での確認が必要です。
この直後、場面は軽い応酬から一気に重い事実へ折り返します。日常的な皮肉が一つ置かれているからこそ、その落差が効いてくる構成になっています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
花束を差し出した手に、代わりに書類の束がどさりと積まれる絵を思い浮かべてみましょう。差し出したのは good deed、返ってきたのは punishment。この取り違えの一瞬が、ことわざ全体の骨組みです。
good deed のすぐうしろに unpunished という否定形が置かれているところも効いています。善い行いと罰という、本来なら結びつかない二語が一文の中で隣り合う。その居心地の悪さが、そのまま皮肉になっています。
玄関先の短いやりとりを思い出すと、場面と一緒に覚えられます。ことわざの形は仰々しくても、実際の響きは口調や状況によって軽い自嘲にも強い皮肉にも変わります。
例文で覚える「no good deed goes unpunished」
出来事を先に話し、最後にこの一文を置くのが基本の形です。職場から日常まで、3つの場面で見ていきましょう。
I covered his shift, and now I’m working all weekend. No good deed goes unpunished.
(彼のシフトを代わったら、週末ずっと仕事になった。親切も報われないね)
同僚を助けたつもりが自分の予定を失った場面です。出来事を説明したあとに一文で締めると、愚痴が重くなりすぎません。
I lent him my car, and it came back empty. No good deed goes unpunished.
(車を貸したら、ガソリンを空にして返ってきた。まったく、親切も考えものだ)
友人への不満を、自嘲まじりにまとめる例です。軽く聞こえるか非難として響くかは、相手との関係や口調で変わります。
A: You organized the whole event by yourself?
B: I offered to help with lunch. No good deed goes unpunished.
(A:イベント全体を一人で仕切ったの?)
(B:昼食の手配を手伝うって言っただけなんだけどね。善意も考えものだよ)
引き受けた仕事が膨らんだ経緯を説明する場面です。経緯とことわざを続けると、事情と気分が同時に伝わります。
あわせて覚えたい関連表現
that’s the thanks I get
(それが私へのお礼ってわけか)
相手から受けた扱いに、不満を直接向ける言い方です。一般論に逃がさない分、no good deed goes unpunished よりも当てこすりの色が濃くなります。
it backfired
(裏目に出た)
善意に限らず、計画や行動が意図と逆の結果を招いたことに焦点があります。文脈によっては皮肉や非難を込めて使われることもあります。
give someone an inch and they’ll take a mile
(少し譲ると、どこまでもつけ込まれる)
相手のずうずうしさを問題にする表現です。自分の善意そのものを笑いに変える今回のことわざとは、責める先が違います。
Note|作者が決まらないまま残ったことわざ
この一文には、洒落た誰かの発言としてよく紹介されるという特徴があります。オスカー・ワイルドの言葉、あるいはクレア・ブース・ルースの言葉。名前は挙がるのに、決め手になる記録がなかなか出てこない一句です。
引用の出典を追う Quote Investigator の調査によれば、いちばん古い骨組みは12世紀の書き手ウォルター・マップにさかのぼります。ある人物について、よい行いを罰さずにおくことも、悪い行いを報いずにおくこともなかった、と評した一節で、善悪と賞罰を反転させる発想がすでに現れています。ただし、これは現代の定型句そのものではありません。
近い形が印刷物に現れるのは20世紀です。1942年のコラムには、ワシントンの外交官たちの言い回しとして、この句に地名を添えた形が紹介されています。1949年の記事では、クレア・ブース・ルースの口ぐせとして伝えられました。オスカー・ワイルドへの帰属が活字に現れるのは1972年になってからで、ワイルドが亡くなった1900年からはかなり間が空いています。同じ調査は、こうした帰属のいずれについても決定的な裏づけは見つかっていない、としています。
つまりこのことわざは、作者を一人に決められないまま定着した表現です。誰の言葉かがはっきりしないのに広まったのは、言いたくなる場面が誰にでもあるからでしょう。
親切が裏目に出た経験だけが、途切れずに受け継がれてきたことになります。
まとめ|善意が裏目に出たときの一言
no good deed goes unpunished は、善意が思わぬ負担や疑いになって返ってきたときの一言です。ことわざの形で状況を一般化しますが、特定の相手への皮肉や非難として聞こえることもあります。
手伝いを申し出たら仕事が増えた、貸したものが傷んで戻った。そんな出来事を自嘲まじりに語る場面でも使えます。誰かを責める響きを避けたいなら、相手との関係や言い方に注意が必要です。
劇中の対象句話者は文字資料だけでは確定できません。話者を確認できた段階で、その人物と場面に即した解説へ最終調整します。


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