海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
取調室で相手が黙り込んでいるのに、質問ではなくトランプを取り出す。そんな不思議な間合いが、ドラマには時々あります。
その場面で口にされる「kill time」を、『メンタリスト』シーズン4第12話から、口を割らない容疑者を前にジェーンがカードマジックを始めるシーンを通して、一緒に見ていきましょう。
「kill time」の意味とニュアンス
kill time
意味:時間をつぶす / 暇をやり過ごす
何かを待つあいだの余った時間を、たいして意味のない行為で埋めることを指します。直訳は「時間を殺す」ですが、物騒な響きはほとんど残っておらず、日常のごく普通の言い回しとして使われます。
軸にあるのは「持て余している」という感覚です。楽しんでいるわけでも、有意義に使っているわけでもない。過ぎるのを待つのが退屈なので、とりあえず何かで埋めている。その行為自体に価値を置かない含みが伴います。
語順を変えた an hour to kill(潰すべき一時間)という形もよく使われます。この場合、余った時間が数えられる持ち物のように扱われていて、日程の隙間を能動的に埋める発想がはっきり出ます。
なお、同じ「時間を使う」でも waste time は非難の色を帯びます。kill time は「どうせ空いている時間」が前提なので、自分の行動について言っても後ろめたさが出にくいのが特徴です。
【ここがポイント!】
- 核にあるのは「有意義に使う」ではなく「持て余している」感覚
- an hour to kill のように、余った時間を数える形でも使える一言
- waste time と違って非難の色が薄いので、自分について言いやすいのがコツ
『メンタリスト』S04E12のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
CBI の取調室に、麻薬組織の幹部オソリオが座っています。勾留の根拠が弱いことを本人も承知していて、弁護士が来るまで黙っていればいいと決め込んでいる状況です。ジェーンは尋問らしい質問をひとつもせず、机の上でトランプの3枚当てを始め、クイーンがどこにあるかを何度も尋ねます。苛立ったオソリオが突き放したところへ返すのが、この一言です。
Jane: Where is she?
(どこにある?)Osorio: I don’t give a damn where she is. What do you think I am? A child?
(どこにあろうが知ったことか。俺を何だと思ってる。子どもか?)Jane: Excuse me. I was just trying to kill a little time. Where is she?
(これは失礼。ちょっと時間をつぶそうとしただけです。……どこにある?)Osorio: She’s on the right. How you do that?
(右だ。……どうやってるんだ、それ)The Mentalist Season4 Episode12(My Bloody Valentine)
シーン解説と心理考察
この一言は、弁解のように見えて宣言として機能しています。「あなたを取り調べているのではない」と告げているからです。目的のない行為だと申告することで、相手が構えていた警戒の的が外れます。
効き目はすぐに表れます。突き放したはずのオソリオが、次には自分から How you do that? と尋ねている。会話の主導権が渡ったのではなく、そもそも尋問という枠組みが解かれたことで、口が開いたかたちです。
kill a little time と a little を挟んでいるのも見逃せません。ほんの少しの暇つぶしだと重ねて小さく見せることで、意図のなさをさらに強調しています。この後、カードの手さばきを教わったオソリオは、問われるより先に事件の見立てを口にすることになります。捜査の方向が変わるきっかけが、暇つぶしという建前から生まれている点が見どころです。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
砂時計の砂が落ちきるのを待ちきれず、時計そのものを横に倒してしまう絵を思い浮かべてください。有効に使うのではなく、過ぎるのを早めるために潰しにかかる。その「対象として片づける」手つきが、kill という動詞に込められています。
spend time が財布からお金を出す動き、waste time がうっかりこぼす動きだとすれば、kill time は積極的に消しにいく動きです。三つを並べて手の動作で覚えると、混ざりません。
取調室で相手を待たせるのではなく、自分が暇をつぶしていることにして距離を縮めた場面を思い出すと、この言葉が持つ「目的のなさの申告」という働きまで一緒に残ります。
例文で覚える「kill time」
待ち時間を語る場面なら、たいていこの表現が使えます。3つの例文で形の変化を見ていきましょう。
I read the whole magazine just to kill time before my flight.
(搭乗までの時間つぶしに、雑誌を丸ごと読んでしまった)
空港での待ち時間を振り返って話す場面です。just to を添えると「他にすることがなかった」という感覚がはっきり出ます。
We’ve got an hour to kill before the next session.
(次のセッションまで一時間ある)
研修やカンファレンスの合間に、同僚と過ごし方を相談する場面です。time to kill の語順では、余った時間が「持ち物」のように扱われます。
A: What were you doing in the lobby all that time?
B: Just killing time. My appointment got pushed back an hour.
(A:あんなに長くロビーで何してたの?)
(B:時間をつぶしてただけ。予約が一時間ずれ込んでね)
遅れた理由を軽く説明する会話です。進行形にすると「その最中だった」という描写になり、言い訳がましさが出にくくなります。
あわせて覚えたい関連表現
pass the time
(時間を過ごす)
同じ状況で使えますが、kill にある「厄介払い」の響きがなく穏やかです。今回のフレーズが空いた30分向けなら、こちらは長い療養や船旅のように、静かにやり過ごす期間に向いています。
waste time
(時間を無駄にする)
非難の色がはっきり出る表現です。kill time が「どうせ空いている時間」を前提にするのに対して、こちらは「使えたはずの時間」を失った含みになります。
bide one’s time
(好機を待つ)
同じ「待つ」でも目的がある言い方です。何かを狙って意図的に待機する意味なので、手持ち無沙汰の kill time とは向きが正反対になります。
Note|「つぶす」と kill、時間を扱う手つきの違い
日本語の「時間をつぶす」と英語の kill time は、どちらも時間をモノのように扱っています。ここまでは同じです。違うのは、その手つきです。
「つぶす」は形を崩す動きで、押し固めたり平たくしたりする感覚に近い。一方 kill は仕留める動きで、対象を消してしまう強さがあります。同じ状況を語りながら、日本語は変形を、英語は消去を選んでいるわけです。
この違いは、英語が時間をどう数えているかにつながっています。spend(使う)、save(節約する)、waste(浪費する)、buy(買う)。並べてみると分かるとおり、英語は時間をお金と同じ枠に入れて動詞を選んでいます。so much time、run out of time といった言い方も同じ発想の延長です。だから kill という強い動詞も、資源を処分する行為として無理なく収まります。
日本語で「時間を殺す」と言えば異様に響くのに、英語では日常語として定着している。その差は語感の問題というより、時間を何と同じものとして扱ってきたかの違いに近いと言えます。
劇中でジェーンがこの語を選んだのも、この性質があってこそです。「潰してよい余りの時間」という前提を持ち込むことで、取調室という場の目的そのものを、一瞬で無効にしてみせました。
言葉の選び方ひとつで、部屋の意味が変わることがある。
まとめ|暇つぶしという建前の使い道
kill time は、待ち時間を意味のない行為で埋めることを指す表現です。持て余しているという前提が込みになっているため、有意義に使ったという含みは出ません。そこが spend time との分かれ目になります。
空港の乗り継ぎ、会議までの中途半端な30分、遅れてくる相手を待つロビー。使いどころは日常のあちこちにあります。an hour to kill という語順まで押さえておけば、聞き取りでも取りこぼしません。
そして劇中のように、目的のなさを申告することで相手の構えを解く使い方もある。単なる暇つぶしの言葉ではなく、場の空気を変える一手にもなる表現です。


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