海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
しばらく現場を離れていた人が久しぶりに戻ってきたとき、「あの人、長いことブランクがあったから」と誰かに説明したくなること、ありますよね。日本語なら「ブランク」の一語で片づくところを、英語ではどう言い表すのでしょうか。
そんなときに使える「be out of the game」を、『メンタリスト』シーズン3第5話の序盤、殺された騎手の雇い主コブ・ホルウェルが厩舎で聞き込みを受けるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「be out of the game」の意味とニュアンス
be out of the game
意味:第一線から離れている、現役を退いている
game は「試合」を指す語ですが、英語ではもう少し広く、人が競い合って結果を出す場そのものを指すことがあります。be out of the game は、その場の外側にいる状態を表す言い方です。
引退した人にも使えますし、けがや休職で一時的に離れている人にも使えます。離れた理由を問わないところがこの表現の便利なところで、自分から辞めたのか、辞めさせられたのかを言わずに済みます。相手の事情に踏み込みたくない場面でも、角を立てずに状況だけを伝えられます。
対象はスポーツに限りません。ビジネス、業界、恋愛と、勝ち負けのある場ならどこでも成立します。復帰を表す be back in the game と対にして覚えておくと、離脱と復帰をひと組で言い分けられるようになります。
【ここがポイント!】
- 核にあるのは「試合が行われている場の、外側に立っている」という位置のイメージ
- 引退にも休職にも使える、離脱の理由を問わない懐の広い言い方
- 復帰を表す be back in the game とセットで押さえておくのがコツ
『メンタリスト』S03E05のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
殺害されたジョッキー、ビル・サットンの雇い主コブ・ホルウェルへの聞き込み。リズボンが雇用期間をたずねると、返ってきたのは「3週間」という予想外の短さでした。その落差を埋めるようにホルウェルが語り出したのが、被害者の空白の時期です。
Lisbon: How long did he work for you?
(彼はどのくらいここで働いていたんですか)Holwell: About three weeks.
(3週間ほどだ)Lisbon: That’s all?
(それだけ?)Holwell: Oh, I’d known Bill for years. He’d been out of the game for a while. When he came back, I hired him but quick.
(いや、ビルとは何年も前からの知り合いでね。しばらく第一線を離れてたんだ。戻ってきたときは、すぐに雇ったよ)The Mentalist Season3 Episode5 (The Red Ponies)
シーン解説と心理考察
雇用期間の短さを問われたホルウェルが、質問の答えではなく二人の関係の長さから語り始めるところに、この場面の呼吸が表れています。3週間という事実は雇い主として不利にも響きかねませんが、彼はそれを「長い付き合いの末の再会」という物語に置き換えて差し出しています。
out of the game という言い方も、その選択の延長線上にあります。suspended(資格停止)と言えば処分の事実がむき出しになりますが、この一言なら、ただ場を離れていたという中立な事実になります。旧友をかばう気配が、この語の選び方ににじむ場面です。
続けて口にする「戻ってきたときは、すぐに雇った」という一言には、迷いのなさを強調する響きがあります。温情ある雇い主という自画像が、ここでひととおり完成します。それが本心だけで組み立てられたものかどうかは、まだ観客には見えません。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
競技場の白いラインを、頭の中に一本引いてみましょう。線の内側では試合が動いていて、選手たちが走っている。out of the game は、その線をまたいで外側に立っている人の姿です。走る力が消えたわけではなく、いまはただ、線の向こうにいない。それだけを表しています。
このシーンのサットンは、資格停止という形で2年間、競馬場という「線の内側」から締め出されていました。だからこそ彼が戻ったとき、ホルウェルは迷わず線の内側へ引き入れます。白線を一本またぐ動作を思い浮かべておけば、come back や be back in the saddle といった復帰の表現まで、同じ映像の中で結びつけて覚えられます。
例文で覚える「be out of the game」
離脱の理由をぼかせるのがこの表現の持ち味です。ブランクを語る三つの場面で見てみましょう。
He’s been out of the game since the injury, but he’s training again.
(けがをして以来ずっと第一線を離れていたけど、また練習を始めたよ)
共通の知人のスポーツ復帰を話題にする場面です。since で理由を添えると、離れていた期間の長さが自然に伝わります。
I’ve been out of the game for three years, so the software has completely changed on me.
(3年ブランクがあったので、ソフトがすっかり変わってしまっていて)
育休や休職から復帰した初日の自己紹介にあたる一言です。深刻ぶらずに事情を共有できるため、職場の会話でも扱いやすくなります。
A: Is your uncle still in real estate?
B: No, he’s been out of the game for years now. He just watches the market for fun.
(A:おじさんはまだ不動産の仕事を?)
(B:いや、もう何年も前から離れてるよ。今は趣味で市場を眺めてるだけ)
家族の近況をたずねるやりとりです。引退という言葉を避けたまま現状だけを答えられるので、相手の事情に立ち入らずに済みます。
あわせて覚えたい関連表現
be on the sidelines
(傍観している、蚊帳の外にいる)
競技場の脇に控えている状態を指します。be out of the game が場そのものから離れていることを表すのに対し、こちらは近くにいながら参加していない、という距離感を伝えます。
be out of action
(動けない状態にある、稼働していない)
けがや故障で機能が止まっていることを指し、人にも機械にも使えます。be out of the game のように業界から退くという広がりはなく、原因が物理的なものに限られます。
be back in the saddle
(復帰する、また元の仕事に戻る)
鞍にまたがり直す姿から生まれた、復帰を表す言い方です。be out of the game の反対方向を指すため、離脱と復帰を対にして覚えるときに役立ちます。
Note|アメリカ英語がスポーツの言葉に頼る理由
be out of the game を訳すとき、日本語では「ブランク」や「引退」といった言葉に置き換えることになります。もとの英語に競技場の気配が残っていることは、訳文からはほとんど見えません。
英語、とりわけアメリカ英語には、スポーツ由来の言い回しが日常語として大量に流れ込んでいます。野球からは step up to the plate(打席に立つ、責任を引き受ける)、curveball(予期せぬ変化球、不意の難題)、ballpark figure(概算)。アメリカンフットボールからは game plan(作戦、方針)、Monday morning quarterback(あとから批評する人)。競技を離れた場面でも、これらは会議の席で普通に使われます。drop the ball にいたっては、球を落とすという原義よりも「へまをする」という意味のほうが先に浮かぶ人のほうが多いはずです。
面白いのは、この種の表現が「その競技を知らない相手にも通じる」ところまで一般化している点です。ルールを説明せずに使える段階に達した言い回しは、もはや比喩として意識されません。be out of the game もその一つで、話し手がスポーツを思い浮かべている保証はどこにもありません。
ホルウェルが競馬場でこの一言を口にしたのは偶然ですが、競技の場から離れていた男を語るのに、競技場生まれの言葉が選ばれた形になりました。原義と文脈がたまたま重なった例といえます。
言葉の来歴を知っていると、同じ一言が少し立体的に見えてきます。
まとめ|白線の外に立っていた時間
be out of the game は、試合が行われている場の外側にいる状態を表す言い方です。引退にも休職にも使え、離れた理由を明かさずに済むところに、この表現のしなやかさがあります。
ブランクのある人を紹介するとき、自分の空白期間を軽く伝えるとき、誰かの近況を角を立てずに説明するとき。日本語の「ブランク」ではやや説明的になってしまう場面を、ひと息で言い切れるようになります。復帰を表す be back in the game を隣に置いておけば、離れていた時間とそこから戻る動きを、ひと続きの言葉で語れます。
しばらく離れていた誰かの話をするとき、白線の外に立つ姿を思い浮かべながら、表現の引き出しに加えてみてください。


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