海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
相手のもったいぶった態度に、思わず皮肉のひとつも言いたくなったことはありませんか。隠す必要のないことまで秘密めかされると、大げさだと軽く茶化したくなるものです。
そんなときに使える「cloak and dagger」を、『メンタリスト』シーズン6第4話の中盤、CBIの建物の外で、自分が監視されていたのかを単刀直入に尋ねたジェーンが、相手のあっさりした肯定に軽口で返すシーンから、一緒に見ていきましょう。
「cloak and dagger」の意味とニュアンス
cloak and dagger
意味:秘密主義の、隠密めいた
顔を隠すマント(cloak)と、懐に忍ばせた短剣(dagger)。この二つの小道具が並ぶ絵から、秘密裏に事を進めるやり方全般を指す形容句として定着した表現です。
使い方は二通りあります。ひとつは so cloak and dagger、all very cloak and dagger のように補語として置く形です。もうひとつは cloak-and-dagger story、cloak-and-dagger operation のようにハイフンでつないで名詞を修飾する形で、こちらはスパイ物というジャンルそのものを指すこともあります。
響きとしては、感心よりも茶化しの色が強めです。諜報機関や内密の交渉を評するとき、大げさで芝居がかっているという皮肉を含ませたい場面で選ばれます。事実として非公開だと述べるだけなら、別の表現の方が中立に収まります。
裏を返せば、この表現には「本当にそこまでする必要があるのか」という疑いが常に付随します。相手のやり方を評価しているようでいて、実際には距離を取っている言い方です。
【ここがポイント!】
- マントと短剣という古い舞台の絵が、そのまま秘密主義の代名詞になった言い方
- ハイフンでつなげば cloak-and-dagger story のようにジャンル名としても使える
- 感心ではなく、大げさだと茶化す色が乗りやすいのが使いどころ
『メンタリスト』S06E04のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
CBIの建物の外で、ジェーンが国土安全保障省のカークランドを呼び止める場面です。二人きりで話したいと切り出したジェーンは、前置きもなしに、自分が監視されていたのかを直接尋ねます。はぐらかされることを見込んでいたであろう質問に、意外なほどあっさりした肯定が返ってきます。
Jane: Has Homeland Security been investigating me?
(国土安全保障省は僕を調べていたのか?)Kirkland: Yes.
(そうだ)Jane: I’m surprised you’re allowed to tell me that. I mean, you guys are usually so cloak and dagger.
(それを教えてもらえるとは意外だな。君たちはいつも秘密主義じゃないか)Kirkland: Well, it’s no secret that Homeland Security has the Red John case. Yeah, your name has come up in various ways.
(まあ、国土安全保障省がレッド・ジョンの件を担当しているのは別に秘密じゃない。それに、君の名前はいろんな形で浮上していたからな)The Mentalist Season6 Episode4 (Red Listed)
シーン解説と心理考察
肯定が返ってきた瞬間、ジェーンは驚きをそのまま口にせず、相手のいつものやり方との落差を突く形に変えています。正面から問い詰めるのではなく、普段の秘密主義を持ち出して茶化す。会話の温度を上げないまま主導権だけを取りにいく、ジェーンらしい運びです。
カークランドの側も、その軽口には乗らず、事実の説明で受け流します。担当しているのは公然の事実だ、名前は前から挙がっていた。答えているようでいて、肝心の「なぜ調べていたのか」には触れていません。
互いに札を伏せたまま、穏やかな口調だけが続きます。声を荒げる者も、席を立つ者もいない。それでいて、どちらも相手から何かを引き出そうとしている。この静かな緊張感が、シリーズを通じたこの二人の距離感を端的に表しています。
この直後、ジェーンは本題であるオフィス侵入の件を切り出します。軽口はそこへ至る助走として置かれていたと読み取れる構成で、雑談に見える部分にも役割が与えられている場面です。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
石畳の路地、街灯の届かない場所に立つ人影。マントで顔まで覆い、その内側に短剣を隠している。古い舞台や活劇で繰り返し描かれてきた、この一枚絵をそのまま思い浮かべてみてください。
隠すための布と、隠される刃。二つがそろって初めて成立する構図が、この表現の骨格です。マントだけなら単に姿を隠しているだけですが、短剣が加わることで、何かを企てているという含みが生まれます。
ジェーンの軽口も、要するに「君たちはいつもそのマント姿だろう」と言っているわけでした。相手のもったいぶった物腰にこの絵を重ねる癖をつけておくと、使いどころが自然に見えてきます。
例文で覚える「cloak and dagger」
作品の話題からビジネスの内幕まで、幅広い場面で使える表現です。補語として置くか、名詞を修飾するかで見え方が変わります。三つの例文で使い方の幅を見てみましょう。
The negotiations were all very cloak and dagger — no one outside the room knew what was discussed.
(交渉はいかにも秘密めいたもので、部屋の外の誰も何が話し合われたか知らなかった)
機密性の高い交渉を評する場面です。all very を前に置くと、大げさだと茶化す色が強まり、話し手が距離を取っていることが伝わります。
I love a good cloak and dagger spy novel.
(秘密めいたスパイ小説が大好きなんだ)
ハイフンなしでも名詞を修飾できる、ジャンルを語る使い方です。a good ~ の形にすると、出来のいい作品を指す口語らしい響きになります。
A: Why all the cloak and dagger stuff? Just tell me what’s going on.
B: I have my reasons. Trust me on this one.
(A:なんでそんなに秘密主義なんだ?ただ何が起きてるのか教えてくれよ)
(B:こっちにも事情があるんだ。今回は信じてくれ)
相手のもったいぶった態度に苛立つやり取りです。stuff を添えると、細かい事情ごとひとまとめに切り捨てる調子が出ます。
あわせて覚えたい関連表現
under wraps
(秘密にされて、公表されずに)
包み(wrap)に隠されている状態から生まれた言い方で、情報や計画がまだ表に出ていないことを事務的に述べます。やり方そのものを茶化す cloak and dagger とは温度が違い、新製品や企画の発表前などによく使われます。
behind closed doors
(非公開の場で、内密に)
扉を閉めた中で行われるという絵から、会議や交渉が関係者だけで進むことを指します。中立的な表現で皮肉の含みはほとんどなく、報道などでもそのまま使われます。
shadowy
(影のある、正体不明の)
組織や人物そのものの得体の知れなさを形容する語です。進め方に焦点がある cloak and dagger に対し、こちらは存在そのものの不透明さを問題にするため、a shadowy organization のように名詞を直接修飾する形で使われます。
Note|マントと短剣が「スパイ物」の代名詞になるまで
cloak and dagger という言い方は、もともと演劇の世界から来たものだと説明されることが多い表現です。暗殺や陰謀を扱う劇では、マントと剣を身につけた登場人物が定番でした。スペイン語で「マントと剣の劇」を意味するジャンル名がその源にあるとする説が知られていますが、英語への入り方については諸説あり、確定した経緯として扱われているわけではありません。
はっきりしているのは、舞台衣装だった二つの小道具が、やがて作品のジャンルを指す言葉になり、さらに現実の諜報活動そのものを形容する語へと守備範囲を広げていったことです。冷戦期のスパイ映画や小説をめぐる評では、cloak-and-dagger がジャンル形容語として繰り返し使われました。
この経路をたどると、なぜこの表現に芝居がかった響きが残るのかも見えてきます。出どころが舞台である以上、実務の描写というより演出の描写なのです。実際の諜報活動が地味な事務作業の積み重ねだとしても、この語を使った瞬間に、マントの人影という劇的な絵が呼び出されてしまいます。
ジェーンが相手の秘密主義を茶化すのに使ったのも、この含みがあってこそでした。大げさな演目みたいだ、という揶揄が言葉そのものに埋め込まれているからこそ、短い一言で皮肉が成立しています。
舞台の一場面が、言葉だけになって現代の会話に残っています。
まとめ|秘密めいたやり方を一言で表す英語
cloak and dagger は、マントと短剣という古い舞台の絵から生まれた、秘密主義なやり方を形容する表現でした。
スパイ物の話題を語るときにも、内密すぎる交渉を評するときにも使えます。ただ非公開だと述べるのではなく、大げさで芝居がかっているという含みが乗る点が、この一言の持ち味です。
ハイフンでつないでジャンル名として使う形も押さえておくと、映画や小説の話題でそのまま出てきます。相手のやり方に少し呆れているとき、怒りに寄せずに気持ちを伝えられる便利な一語でもあります。
路地に立つマント姿の一枚絵ごと、表現の引き出しに加えてみてください。


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