海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
相手に不満をぶつけられて、「そもそも、その人を選んだのは自分でしょう」と切り返したくなった経験はありませんか。
そんな切り返しに使える「hitch your wagon to」を、『モダンファミリー』シーズン5第3話の中盤、仕事で関わる女性たちのことでクレアに責められたフィルが、自分の職業を持ち出して言い返す場面から、一緒に見ていきましょう。
「hitch your wagon to」の意味とニュアンス
hitch your wagon to
意味:〜に自分の将来や運命を結びつける
hitch your wagon toは、有望な人物や組織、あるいは目標に、自分の将来を結びつけることを表す表現です。hitchは「つなぐ」、wagonは「荷馬車」という意味の語で、荷馬車を引き馬につなぐように、自分の進む方向を相手にゆだねる様子が言葉になっています。
つないだ荷馬車は、引き馬が進む方向に一緒に進みます。そのため、誰かや何かに自分をつなぐと、その相手の行き先や勢いに、自分も引っ張られていくという含みが出ます。対象は人や会社のこともあれば、「hitch your wagon to a star」のように高い目標のこともあり、対象によって「運命を託す」「大きな目標に向かう」と、意味の向きが変わる表現です。
hitch your wagon toのyourは主語に合わせて変わり、hitch his wagon toやhitch my wagon toのような形でも使われます。話し手が「その選択をしたのは相手自身だ」と指摘するときにも、「自分はその人に賭けた」と自分の選択を語るときにも使えるため、相手や状況によって、託す、賭ける、一緒になる、と訳し分けられます。
【ここがポイント!】
- 「hitch your wagon to」の核は、荷馬車を引き馬につなぐイメージ
- 相手の行き先や勢いに自分の将来を預けるという含みがある表現
- 対象が人・会社なら「託す」、場面によっては「一緒になる」と訳し分けるのがコツ
『モダンファミリー』S05E03のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
クレアが、フィルの仕事で関わる女性たちとの距離感に不満を口にする夫婦の会話です。フィルは明るく声をかけますが、クレアはその呼び方を退け、フィルはそれは仕事だと返します。やり取りの終わりにフィルが口にする、職業を持ち出した一言に注目です。
Phil: It’s all gonna be fine. Daddy’s home, superstar.
(全部うまくいくさ。パパのお帰りだぞ、スーパースター。)Claire: No. Don’t call me that. I’m not of one your needy little divorcées.
(やめて。私をそう呼ばないで。私は、あなたのところに頼ってくる離婚した女性たちの一人じゃないのよ。)Phil: Um, that is work.
(いや、その、それは仕事なんだよ。)Claire: Is it? ‘Cause I kind of feel like part of you loves being a hero to those women.
(そうかしら? だって、あなたの一部は、あの女性たちのヒーローでいるのが好きなんじゃないかって気がするの。)Phil: I’m a helper of people. Hey, you knew what you signed up for when you hitched your wagon to a realtor man.
(俺は人助けをする人間なんだ。なあ、不動産屋の男と一緒になったとき、何を引き受けることになるか、君は分かってたはずだろ。)Modern Family Season5 Episode3 (Larry’s Wife)
シーン解説と心理考察
フィルの「Daddy’s home, superstar.」は、明るい調子でクレアに呼びかける一言です。クレアはその呼び名を「やめて」と退け、自分はフィルが世話を焼く離婚した女性たちの一人ではない、と言い返します。呼び名ひとつから、クレアの不満がどこに向いているのかが見えてきます。
フィルが「それは仕事だ」と答えると、クレアは「あの女性たちのヒーローでいるのが好きなのでは」と、さらに踏み込みます。仕事という説明では済まないのではないか、という問いかけです。これに対してフィルは、「I’m a helper of people.」と自分の性分を語る形で応じています。
そのうえでフィルが持ち出すのが、「hitched your wagon to a realtor man」という言い方です。不動産屋の男と一緒になった時点で、何を引き受けることになるか、君は分かっていたはずだ、という趣旨です。クレアの選択を指摘する形で、自分の職業を持ち出しています。責めるクレアと、職業を盾に軽く受け流すフィルの温度差が、会話の空気を作っています。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
荷馬車を引き馬につなぐ場面を思い浮かべてみましょう。つないだ荷馬車は、引き馬が進む方向に、一緒に進んでいきます。自分の将来を誰かにつなぐと、その相手の行き先や運勢に自分も引っ張られる。その様子が、hitch your wagon toのイメージです。
フィルの一言は、その荷馬車の先につながれているのが「不動産屋の男」だ、という指摘でした。つないだ時点で、引き馬の仕事や暮らしぶりに付き合っていくことは分かっていたはずだ、という言い分が、荷馬車のイメージとぴったり重なります。
引き馬につながれた荷馬車の絵と一緒に、つないだ相手が不動産屋の男だったというフィルの言い分を、ひとつの場面として覚えておきましょう。
例文で覚える「hitch your wagon to」
対象が人や会社になる3つの例文で、使い方の幅を確認していきましょう。
Many young engineers hitch their wagons to fast-growing startups.
(多くの若いエンジニアが、急成長するスタートアップに自分の将来を託す。)
就職や転職の選び方を説明するビジネスの場面です。fast-growingのような勢いを表す語が添えられると、引き馬の力強さも伝わります。
If you hitch your wagon to the wrong person, you’ll pay for it later.
(相手を間違えて運命を預けたら、あとで代償を払うことになる。)
人間関係の選び方に忠告する日常の場面です。wrong personを対象にすると、荷馬車をつなぐ相手の選択が重要だと強調できます。
A: Why did you join his company?
B: I hitched my wagon to him because I believe in his vision.
(A:どうして彼の会社に入ったの?)
(B:彼のビジョンを信じているから、彼に運命を預けたんだ。)
転職の理由を尋ねられて答える会話です。becauseで理由を続けると、自分の選択の根拠を説明する形になります。
あわせて覚えたい関連表現
throw in one’s lot with
(〜と運命をともにする)
throw in one’s lot withは腹をくくって相手と行動をともにする決断の重さに焦点があり、hitch your wagon toは相手の勢いや方向に自分をつなぐ点に焦点があります。
tie oneself to
(〜に縛られる、〜と結びつく)
tie oneself toは自由を手放して縛られる感覚が強く、hitch your wagon toは相手に運ばれて進むイメージが中心という違いがあります。
ride on someone’s coattails
(〜の威光にあやかる、〜の成功に便乗する)
ride on someone’s coattailsは他人の成功に乗っかる、やや批判的な言い方で、hitch your wagon toは相手を選んで自分の将来を託す中立的な言い方です。
Note|「乗っかる」「託す」「一緒になる」、hitch one’s wagon toの訳し分け
hitch one’s wagon toには、日本語で決まった一つの訳語があるわけではありません。場面ごとに、いくつかの訳を使い分けることになります。
たとえば、勢いのある人物や会社を対象にして「自分の将来をそこに預ける」という意味では、「託す」「賭ける」が合います。「乗っかる」と訳すこともできますが、その場合は他人の成功にただ便乗するような響きが出やすく、ride on someone’s coattailsに近い印象になります。相手を選んで将来を預けるという中立的な意味を出したいときは、「託す」のほうが原文に近い訳です。
今回のフィルの「you hitched your wagon to a realtor man」では、相手はクレアの夫である「不動産屋の男」自身で、「その相手と人生を結びつけた」という文脈です。ここでは「託す」よりも、「一緒になったとき」と訳したほうが、日本語として自然に聞こえます。直後のwhat you signed up for(何を引き受けることになるか)との組み合わせも、選んだ時点で受け入れたはずの条件を指摘する言い方になっています。
hitch one’s wagon toを訳すときは、対象が有望な相手なら「託す」、人生をともにする相手なら「一緒になる」、便乗のニュアンスを出したいときだけ「乗っかる」と、場面から選んでいきましょう。
まとめ|自分がつないだ荷馬車を、どう語るか
hitch your wagon toは、誰かや何かに自分の将来を結びつけることを表す表現です。荷馬車を引き馬につなぐように、相手の行き先や勢いに自分をゆだねる様子が、言葉のイメージになっています。
自分の選択を「託した」と語るときも、相手の選択を「自分で選んだことだ」と指摘するときも、同じ表現で言い表せます。対象が人か、会社か、目標かによって、訳を変えて捉えるのがポイントです。荷馬車と引き馬のイメージを持っておくと、文脈が変わっても意味の芯がぶれません。
フィルが自分の職業を持ち出して、クレアの選択を指摘した場面。言い合いの中でも、フィルなりの軽さが失われない一言でした。


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