海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
話が長くなりそうな相手を前にして、「結局、何が言いたいの?」と心の中でつぶやいてしまった経験はありませんか。
そんなもどかしさを一言で切り出せる「cut to the chase」を、『モダンファミリー』シーズン5第13話の前半、食事の席で本題を尋ねるヘイリーの一言から、一緒に見ていきましょう。
「cut to the chase」の意味とニュアンス
cut to the chase
意味:本題に入る、前置きを省いて要点を言う
cut to the chase は、長い前置きや遠回しな話を切り上げて、話の核心に入ることを表す口語表現です。「回りくどい話はいいから、要点をお願い」という気持ちを、短い言葉で伝えられます。
chase は辞書では「追跡」を意味する語ですが、この表現では文字どおりの追跡を指してはいません。「話の一番の中身」を表す比喩として働いていて、cut to は「そこへ一気に進む」という動きを表します。つまり、途中の道のりを飛ばして、いちばん大事なところへ入るイメージです。
使い方には2つの向きがあります。ひとつは、相手に向かって「本題に入ってほしい」と促す使い方です。Can we just cut to the chase? のように、疑問の形にするとやわらかく促せます。もうひとつは、自分から「単刀直入にいきます」と切り出す使い方で、Let’s cut to the chase. の形が典型です。どちらの向きでも、前置きを省いて要点に移るという中身は変わりません。
くだけた響きのある表現なので、親しい間柄の会話にも、会議や商談の場面にも使えます。相手の話をさえぎる形になりやすいため、口調や表情でやわらかさを調整すると、角が立ちにくくなります。
【ここがポイント!】
- 「cut to the chase」の核は、前置きを飛ばして話の中心へ一気に進むこと
- 相手に促す形(Can we just …?)と、自分から切り出す形(Let’s …)の両方で使える
- chase は文字どおりの「追跡」ではなく、話の核心を表す比喩
『モダンファミリー』S05E13のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ヘイリーが「もう本題に入らない?」と切り出し、その場にいるフィルとクレアが答えていく場面です。ヘイリーの問いかけに対して、両親がどんな言葉を返すのかに注目です。
Haley: Uh, can we just cut to the chase?
(えっと、もう本題に入らない?)Phil: He’s got great lips.
(彼、いい唇してるんだよなあ。)Haley: No, no, no, no, no. What are we doing here? What is this about?
(いやいやいやいや。私たち、ここで何してるの? 何の話なの?)Claire: Nothing! We just wanted to have a fun night out with our daughter.
(何でもないわよ! 娘と楽しい夜のお出かけをしたかっただけよ。)Phil: Yeah! Just think of us as your friends.
(そうそう! 俺たちのことは友だちだと思ってくれればいいんだ。)Modern Family Season5 Episode13 (Three Dinners)
シーン解説と心理考察
ヘイリーは Uh, can we just cut to the chase? と、ためらいを表す Uh をひとつ置いてから切り出します。can we just … の形には、「余計なことは抜きにして」という気持ちが含まれています。命令ではなく提案の形にしているので、きつい言い方にはなっていません。
ところが、この問いかけに対するフィルの返事は、本題への答えではありません。He’s got great lips. と、思ったことをそのまま口にします。ヘイリーの問いとは別のところへ話が向かっているため、ヘイリーはすぐに No を5回重ねて、What are we doing here? What is this about? と尋ね直します。No を何度も繰り返す言い方に、話を進めたい気持ちの強さが表れています。
尋ね直しの中身も見てみましょう。What are we doing here? は「私たちはここで何をしているのか」、What is this about? は「これは何についての話なのか」という意味です。どちらも、この食事の目的そのものを問う言葉になっていて、最初の cut to the chase と同じ方向を向いています。
これに対してクレアは、Nothing! と答え、a fun night out with our daughter、つまり娘との楽しい夜のお出かけをしたかっただけだと続けます。フィルも Just think of us as your friends. と、友だちだと思ってほしいと重ねます。二人の返事は、ヘイリーが尋ねた「何の話なのか」に、「楽しい夜のお出かけ」という言葉で答える形です。
本題を知りたいヘイリーと、楽しい夜だと言う両親。同じ席にいながら、話の向いている先が少しずれていて、そのずれがこの短いやり取りのおかしさになっています。cut to the chase は、その食い違いを浮かび上がらせる入口の一言として置かれています。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
遠回りの道が続く地図を思い浮かべてみましょう。曲がりくねった道をたどらず、ばっさりと切って一直線に目的地へ向かう。そんな動きが、cut(切る)という動詞の感覚です。
前置きを切り落として、いちばん大事な部分へ入る。この動きを頭に置くと、「本題に入る」という意味と cut がつながります。ヘイリーの Can we just cut to the chase? も、話の周りをぐるぐる回る時間を切り落として、核心へ進みたいという気持ちの言葉として読めます。
覚えるときは、Let’s cut to the chase. をひとかたまりで口に出してみるのがおすすめです。会議の冒頭や、話が長くなりそうな場面を思い浮かべながら声に出すと、使う場面と一緒に記憶に残ります。
例文で覚える「cut to the chase」
前置きを省きたい場面で使える cut to the chase を、3つの例文で確認していきましょう。
Let’s cut to the chase: how much is this going to cost?
(単刀直入にいこう。これ、いくらかかるの?)
見積もりを急いで確認するビジネスの場面です。コロンのあとに知りたいことを続けると、何を聞きたいのかがすぐに伝わります。
I don’t have much time, so could you cut to the chase?
(あまり時間がないから、本題に入ってもらえる?)
話が長い相手に、日常の会話で本題を促す場面です。so の前に理由を添えると、要点を求める事情が伝わってやわらかくなります。
A: I have a long story to tell you.
B: Please cut to the chase.
(A:長い話があるんだけど。)
(B:本題に入ってよ。)
前置きが長くなりそうな相手に促す、友人同士の会話です。Please を添えることで、ぶっきらぼうな印象をやわらげています。
あわせて覚えたい関連表現
get to the point
(要点を言う、本題に入る)
get to the point は中立的で、丁寧な場面でも使いやすい表現です。cut to the chase は前置きを切り落とす勢いがあり、やや砕けた響きを持ちます。
long story short
(要するに、手短に言うと)
long story short は、話す側が自分の話を短くまとめるときの言い方です。cut to the chase は、相手に本題を促すときにも使えます。
beat around the bush
(遠回しに言う)
beat around the bush は、核心を避けて遠回しに話すことを表します。cut to the chase とは反対の状態を指す表現です。
Note|cut to the chase の3つの形と、chase を追跡と訳すとずれる理由
cut to the chase は、使い方の形がいくつかあります。ヘイリーの一言を出発点に、形と訳し方を整理してみましょう。
まず形です。ヘイリーの Can we just cut to the chase? は、相手に本題を促す疑問の形です。just が入ることで、「余計なものは抜いて、ただ本題だけ」という響きが加わります。次に、Let’s cut to the chase. は、自分も含めて「本題に入りましょう」と切り出す形です。Let’s のあとに動詞の原形が続きます。さらに、She cut to the chase and asked him if he was going to quit. のように、過去形にして「彼女は単刀直入に切り出した」という出来事を述べる形もあります。cut は原形と過去形が同じ形なので、形だけでは見分けがつきません。前後の文脈で時制を判断します。
次に訳し方です。chase を辞書どおりに「追跡」と訳して、「追跡へ切り込む」と読むと、意味が通りません。この chase は、話の核心を表す比喩の語です。訳すときは、chase を単独で訳そうとせず、cut to the chase 全体を「本題に入る」「単刀直入に言う」というひとまとまりで捉えると、外れません。
ヘイリーの一言も、「追跡に切り込みたい」ではなく、「もう本題に入りたい」という気持ちの言葉です。フレーズ全体の意味でとらえることが、訳を外さないコツです。
まとめ|前置きを切り落として、本題へ進む
cut to the chase は、前置きや遠回しな話を切り上げて、話の核心に入ることを表す口語表現です。
Can we just cut to the chase? と相手に促す形も、Let’s cut to the chase. と自分から切り出す形も、中身は同じです。chase は文字どおりの「追跡」ではなく、話の中心を表す比喩として働いています。get to the point との違いは、前置きを切り落とす勢いと、砕けた響きにあります。
食事の席で本題を尋ねるヘイリーと、楽しい夜のお出かけだと答える両親。そのやり取りの入口にあったのが、cut to the chase の一言でした。会議でも日常の会話でも、話を先へ進めたい場面で思い出してみてください。


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