海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
最初は苗字に「さん」をつけて呼んでいた相手を、いつのまにか下の名前で呼ぶようになっていた。そんな経験はありませんか。
そんな間柄を一言で言い表せる「be on a first-name basis」を、『モダンファミリー』シーズン7第3話の前半、ディランに「ダンフィーさん」と呼びかけられたフィルが、親しげに返す場面から、一緒に見ていきましょう。
「be on a first-name basis」の意味とニュアンス
be on a first-name basis
意味:(互いに)下の名前で呼び合う親しい間柄である
be on a first-name basis は、肩書きや苗字ではなく、下の名前で呼び合うほど打ち解けた関係にあることを表す表現です。first-name は「名」、つまり姓に対する下の名前のことで、basis は「基盤」「やり方」を意味します。呼び方という形式を土台にして、関係の近さを言い表す言い方です。
基本の形は be 動詞で状態を述べる形で、「~とは下の名前で呼び合う仲だ」と言いたいときは、あとに with + 人 を続けます。I’m on a first-name basis with the owner. のように使い、with のあとが呼び合う相手になります。呼び合う相手を言わずに、We’re on a first-name basis. のように、二人の関係をそのまま述べる使い方もできます。
on a ~ basis という型には、on a daily basis(毎日)や on a regular basis(定期的に)のように、形容詞を挟んで「~というやり方で」「~という間隔で」を表す仲間がいます。first-name を挟んだこの表現は、「下の名前というやり方で」付き合っている、つまり下の名前で呼び合う関係だという意味になります。
日本語に置き換えるときは、「下の名前で呼び合う仲」「名前で呼び合う間柄」「気の置けない仲」のように訳します。「親しい」とだけ訳すと、呼び方に注目した原文の焦点が消えてしまうため、訳文でも「呼び合う」という動作を残すと、原文の感じに近づきます。
この表現が描くのは、あくまで呼び方で測った距離です。実際にどれほど深い付き合いかまでは語らず、「肩書き抜きで呼べる程度には近い」という関係を、形から示します。
【ここがポイント!】
- 「be on a first-name basis」の核は、呼び方を土台にして関係の近さを示すイメージ
- 呼び合う相手は with + 人 で添え、二人の関係を言うだけなら we’re on a first-name basis と言い切れる
- 「親しい」ではなく「下の名前で呼び合う」まで訳に残すと、原文の焦点が伝わる
『モダンファミリー』S07E03のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ディランがフィルに声をかけ、ヘイリーも加わって頼み事を持ちかける場面です。ディランはヘイリーの恋人で、自分でTシャツの事業をしています。今回のフレーズは、ディランに「ダンフィーさん」と呼ばれたフィルの返事に出てきます。
Dylan: Hey, Mr. Dunphy, can we have just a moment of your time?
(ダンフィーさん、ちょっとだけお時間いただけますか?)Phil: Come on, now. How long have we known each other? We should be on a first-name basis. Better yet, a nickname basis, Vitamin D.
(おいおい、よしてくれよ。知り合ってどれくらいになる? 俺たちは下の名前で呼び合う仲でいいだろう。いや、いっそあだ名で呼び合う仲にしよう、ビタミンD。)Haley: Glad to hear you say that, ‘cause, um, we have a favor to ask you. You know how Dyl– Vitamin D has his own t-shirt business?
(そう言ってくれてよかった。実はお願いがあるの。ディ、じゃなくて、ビタミンDが自分のTシャツのビジネスをしてるの、知ってるでしょ?)Phil: Oh, I should’ve seen this coming. Um Yes, I will model for you, but I’m gonna need to own the negatives.
(ああ、こうなるって予想しておくべきだったな。えーと…いいよ、モデルになってやる。ただし、ネガは俺のものにさせてもらうぞ。)Modern Family Season7 Episode3 (The Closet Case)
シーン解説と心理考察
ディランは冒頭で、「Mr. Dunphy」という呼びかけと「just a moment」という控えめな頼み方が重なった、丁寧な切り出しです。苗字に Mr. をつけた呼び方は、相手との間に礼儀正しい距離を置く言い方で、頼み事を始める側の気づかいがにじんでいます。
フィルはその距離を、すぐに縮めにかかります。「Come on, now」と受けたあと、「How long have we known each other?」と、これまでの付き合いの長さを持ち出し、苗字に Mr. をつけるほど他人行儀な間柄ではないと示します。そして we should be on a first-name basis と、下の名前で呼び合う仲でいいと言い切ります。頼み事の中身を聞く前に、呼び方のほうが先に近くなっています。
フィルの一言は、そこで終わりません。「Better yet, a nickname basis」と、下の名前よりさらに親しい、あだ名で呼び合う仲を提案し、ディランを「ビタミンD」と呼びます。basis という同じ語をもう一度使って、「下の名前」から「あだ名」へ段を上げる言い回しになっています。肩書き抜きで気さくに接したいフィルの陽気さと遊び心が出ているところです。
ヘイリーは「そう言ってくれてよかった」と話を引き取り、お願いがあると切り出します。ディランの名前を言いかけて「ビタミンD」と言い直すところに、フィルのあだ名にあわせる様子が見えます。Tシャツの事業の話が出ると、フィルは「こうなると予想しておくべきだった」と言い、モデルを引き受ける返事をします。ただし「ネガは俺のものにさせてもらう」と、自分の条件を添えることを忘れません。
このあとヘイリーは、Tシャツのモデルとは別に、ディランをしばらくヘイリーのいる地下室に泊めてほしいという頼み事を口にします。呼び方を縮めて打ち解けた直後に、本題の頼み事が続く流れです。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
be on a first-name basis は、名札のイメージで覚えられます。苗字と肩書きが並んだ名札ではなく、下の名前だけが大きく書かれた名札を胸につけている人を思い浮かべてみましょう。名札に書かれているのが first-name だけなので、「下の名前を土台にして付き合っている」という意味につながります。
フィルの場合は、この名札が一段階ずつ変わっていきます。ディランが「ダンフィーさん」と呼びかけた時点では、名札に苗字と Mr. が書かれています。フィルはそれを「下の名前」に書き換えようと言い、さらに「あだ名」の名札にまで書き換えます。名札が書き換わるたびに、二人の距離が縮まっていく。そう考えると、first-name basis から nickname basis へ進む言い回しも、頭に残りやすくなります。
自分の身のまわりでも、苗字に「さん」をつけて呼んでいた相手を、いつから下の名前で呼ぶようになったかを思い返してみましょう。その相手とは、まさに be on a first-name basis の関係です。
例文で覚える「be on a first-name basis」
下の名前で呼び合う関係を言う be on a first-name basis を、3つの例文で確認していきましょう。
I’ve worked with my manager for years, so we’re on a first-name basis.
(上司とは何年も一緒に働いているので、下の名前で呼び合う仲です。)
職場での人間関係を説明するビジネスの場面です。so のあとに we’re on a first-name basis を続けて、付き合いの長さが呼び方の近さにつながっていることを示しています。
I’m on a first-name basis with the barista at my corner café.
(角のカフェのバリスタとは、下の名前で呼び合う仲です。)
通い慣れた店の話をする日常の場面です。with + 人 の形で、呼び合う相手を添えています。
A: Should I call you Dr. Lee?
B: Please, we’re on a first-name basis now. Call me Jun.
(A:リー先生とお呼びしたほうがいいですか?)
(B:いえいえ、もう下の名前で呼び合う仲でしょう。ジュンと呼んでください。)
呼び方を相手に確認する会話です。now を添えると、ある時点から呼び方が変わった、というニュアンスが出ます。
あわせて覚えたい関連表現
be on good terms with someone
(~と良好な関係にある)
be on good terms は、関係がうまくいっているかどうかを広く表す言い方です。be on a first-name basis が呼び方という形に着目するのに対し、こちらは関係の良し悪しに焦点があります。
be on speaking terms
(口をきく間柄である)
be on speaking terms は、会話を交わす関係があることを述べる言い方です。最低限のつながりを指すので、呼び方まで踏み込む be on a first-name basis とは、述べている範囲が違います。
call someone by their first name
(~を下の名前で呼ぶ)
こちらは「下の名前で呼ぶ」という動作を述べる言い方です。関係の状態を表す be on a first-name basis とは、動作を言うか状態を言うかという視点の違いがあります。
Note|「親しい間柄」を表す be on a first-name basis・be on good terms・be on speaking terms の使い分け
人との関係を英語で述べるとき、「何に注目して関係を言うか」で、選ぶ表現が変わります。ここでは、be on a first-name basis、be on good terms、be on speaking terms の3つを、注目する点で整理します。
be on a first-name basis は、呼び方に注目します。肩書きや苗字を挟まずに呼び合えるかどうかが基準で、関係の近さを呼び方という形から示します。フィルが「下の名前で呼び合う仲でいいだろう」と言ったのも、呼び方を改める提案でした。
be on good terms は、関係がうまくいっているかに注目します。呼び方には触れず、「仲が悪くない」「良好だ」という評価を述べる言い方です。be on speaking terms は、口をきく関係があるかどうかに注目します。「口をきく間柄である」という事実を述べるだけで、親しさの度合いまでは語りません。
3つを並べると、呼び方の近さを言うなら first-name basis、関係の良し悪しを言うなら good terms、会話が成り立つかどうかを言うなら speaking terms、という使い分けになります。同じ「付き合いがある」を表す言い方でも、着目する点が違うので、伝えたいことに合わせて選べます。
ディランの「Mr. Dunphy」とフィルの「first-name basis」の対比は、この違いをよく表しています。ディランは苗字に Mr. をつける呼び方で関係を測り、フィルは下の名前、さらにあだ名へと、呼び方の段を上げていきました。呼び方に注目した表現だからこそ、場面の中で呼び方が変わっていく様子とぴったり重なります。
まとめ|呼び方を変えて、距離を縮める
be on a first-name basis は、肩書きや苗字ではなく、下の名前で呼び合う親しい間柄であることを表す表現です。呼び合う相手は with + 人 で添え、二人の関係をそのまま述べるときは we’re on a first-name basis と言い切ります。
関係の良し悪しを言う be on good terms と、口をきく関係を言う be on speaking terms は、同じ「付き合い」でも見ている点が別です。
ディランの丁寧な呼びかけを、あだ名で呼び合う仲にまで引き上げてしまうフィルの一言には、頼み事を聞く前から相手の距離を縮めてしまう、陽気な人柄がのぞいていました。職場でも友人の間でも、呼び方が近づいたことを伝えたい場面で出番のある表現です。


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