海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
長く同じ仕事を続けていると、教わったわけではないのに身についた小さな工夫が、いつのまにか増えているものです。人に聞かれると、少し得意な気持ちで教えたくなります。
そんな場面にぴったりの「a trick of the trade」を、『モダンファミリー』シーズン7第22話の前半、職場に戻ったジェイがコツを披露する一言から、一緒に見ていきましょう。
「a trick of the trade」の意味とニュアンス
a trick of the trade
意味:その仕事ならではのコツ、(商売・職業の)ちょっとした裏ワザ
a trick of the trade は、ある職業や業界で働く人が経験の中で身につけた、ちょっとしたやり方やコツを指す表現です。trade は「商売」「職業」、trick はここでは「工夫」「こつ」の意味で使われています。「その道の人だけが知っている小さな知恵」を、軽く紹介するときの言い方です。
見出しの形は a trick of the trade ですが、ドラマの台詞では冒頭の a が Little に置き換わった Little trick of the trade の形で出てきます。意味は同じで、「ちょっとしたコツ」という軽い調子が前に出ます。主語や動詞を置かず、名詞のかたまりだけを投げ出す言い方なので、会話の中で「ひとつ教えておくとね」と切り出すときに合います。複数形の tricks of the trade の形でも、同じ意味で使えます。
of the trade の the は、話題になっている職業や業界を指して「その商売」「その道」と範囲を絞る働きをします。a trick の部分は「ひとつのコツ」、of the trade の部分は「その仕事の」と分けて読むと、全体の意味が組み立てやすくなります。
日本語にするときは、「仕事のコツ」「その道ならではの裏ワザ」「現場で身につく工夫」あたりが合います。「商売のごまかし」と直訳すると意味がずれるので、trick は「工夫」と読み替えるのがポイントです。
【ここがポイント!】
- 「a trick of the trade」の核は、その仕事で働く人が身につけたちょっとしたコツ
- 冠詞の a が Little に変わった Little trick of the trade や、複数形の tricks of the trade でも意味は同じ
- trick は「ごまかし」ではなく「工夫」と読む
『モダンファミリー』S07E22のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ジェイが職場に戻ってきた場面です。「おかえり、ジェイ!」と声をかけてきた相手に、ジェイは buddy と呼びかけて返し、続けてその呼び方に込めたコツを明かします。ジェイとクレアは父と娘で、そのあと二人はオフィスで言葉を交わします。
オフィスでは、ジェイがランプの位置に気づいて話を続けます。クレアの返事は、短い相づちだけです。
Jay: Good to be back, buddy. Little trick of the trade when you don’t know somebody’s name, you call ‘em “buddy.”
(戻ってこられて嬉しいぜ、バディ。ちょっとしたコツだ。相手の名前がわからないときは、「バディ」って呼ぶのさ。)Claire: Mm.
(ふうん。)Jay: So, the old office, huh?
(へえ、昔のオフィスか。)Claire: Mm.
(うん。)Jay: I see you got the lamp over there now. I tried it there once. You’ll see.
(ランプはそこに置いたのか。俺も一度そこに置いたことがあってな。まあ、そのうちわかる。)Modern Family Season7 Episode22 (Double Click)
シーン解説と心理考察
ジェイの Good to be back, buddy. は、「おかえり」と声をかけてきた相手への、「戻ってこられて嬉しい」という返事です。Good to be back は It’s good to be back の頭を省いた形で、口に出して言うときの短い言い回しです。ここで buddy と呼びかけたあとに、Little trick of the trade が続きます。buddy は「仲間」「相棒」を表す名詞で、呼びかけに使うと親しげな響きになります。相手の名前を口にしなくても、親しげに返事ができる語です。
Little trick of the trade のあとには when you don’t know somebody’s name, you call ‘em “buddy.” が来ます。when 以下は「相手の名前がわからないときは」という条件で、you は特定の誰かではなく「人は誰でも」の意味です。call ‘em “buddy” の ‘em は them を縮めた形で、somebody を受けています。声をかけてきた相手への直前の buddy が、このコツをそのまま使った例になっています。
クレアは Mm. と短く返し、ジェイの So, the old office, huh? にも Mm. と返します。huh? は「へえ」「ふうん」にあたる付け足しです。Mm. は短い相づちの音で、どちらも短い返事にとどまっています。
ジェイは続けて、I see you got the lamp over there now. と、ランプの位置に目を留めます。I see (that) you got … は「〜しているんだな」と状況を確かめる形です。I tried it there once. の it はランプ、there はクレアがいま置いている位置を指します。You’ll see. は「そのうちわかる」という意味です。once は「かつて一度」の意味で、ジェイ自身に試した経験があることを示しています。
仕事の現場に戻ってきた人が、あいさつ代わりにコツをひとつ披露する。a trick of the trade が持つ「経験者の小さな知恵」という響きが、この短いやりとりに表れています。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
trade を「商売道具のそろった作業場」、trick をその作業場の引き出しにしまってある「小さなメモ」と見立てると、覚えやすくなります。誰にでも通じる一般論ではなく、その仕事の中でだけ役に立つ工夫、というところが決め手です。
ジェイの Little trick of the trade も、相手の名前がわからないときは buddy と呼ぶ、という使いどころの限られたコツでした。日本語では「この道ならではの、ちょっとした知恵」を当てると、場面になじみます。
例文で覚える「a trick of the trade」
a trick of the trade を、3つの例文で確認していきましょう。
Here’s a trick of the trade: keep your knives sharp, and you’ll work faster.
(仕事のコツを教えるよ。包丁を研いでおくと、作業が速くなる。)
先輩が後輩にコツを教える場面です。Here’s a … の形で切り出し、コロンのあとに具体的な中身を続けています。
Every carpenter has a few tricks of the trade they never write down.
(大工はみんな、書き残さない仕事のコツをいくつか持っている。)
職人の世界を説明する文です。複数形の tricks of the trade にして、「いくつかのコツ」を表しています。
A: How do you remember all those names?
B: Little trick of the trade. I repeat each name out loud right away.
(A:どうやって、そんなに大勢の名前を覚えているの?)
(B:ちょっとした仕事のコツだよ。聞いたらすぐ声に出して繰り返すんだ。)
仕事の工夫を聞かれる会話です。ドラマの台詞と同じ Little trick of the trade の形で、あとに具体的な中身が続きます。
あわせて覚えたい関連表現
know the ropes
(やり方を心得ている、勝手がわかっている)
know the ropes は、仕事や環境の勝手を一通りわかっている状態を指します。a trick of the trade は、その中にある個別のコツのほうを指します。
rule of thumb
(経験則、大まかな目安)
rule of thumb は、経験から出た大まかな目安のことです。a trick of the trade は、仕事を楽にしたり上手に進めたりする具体的な工夫を指します。
insider tip
(内部の人だけが知っているヒント)
insider tip は、業界や集団の内側の人が知っている情報全般を指します。a trick of the trade は、仕事のやり方に関するコツに絞られます。
Note|trick が「ごまかし」ではなく「こつ」になる理由
trick of the trade で読み違えやすいのは、trick の一語です。辞書では、trick に「計略」「いたずら」「手品」「こつ」といった意味が並んでいます。そのうち「ごまかし」に近い意味で取ると、trade の「商売」と合わさって、「商売のごまかし」と読めてしまいます。
けれども、この表現で働いているのは「こつ」の意味です。trade は「商売」だけでなく「職業」も表し、trick of the trade は「その職業のこつ」という意味のまとまりとして使われます。of the trade は、そのこつがどの世界のものかを示す部分です。
日本語に置き換えるときは、「商売の」ではなく「その仕事ならではの」と訳すと、意味が正しく伝わります。ジェイの Little trick of the trade も、「商売のちょっとしたごまかし」ではなく、「ちょっとしたコツ」と受け取るのが適切です。
単語の意味を足し合わせても全体の意味にならないとき、まず一語ずつの別の意味を疑ってみる。trick のように複数の意味を持つ語がある表現では、この見方が役に立ちます。
まとめ|その道の人が持っている、小さなコツの言い方
a trick of the trade は、ある仕事で働く人が身につけた、ちょっとしたコツを指す表現です。台詞では Little trick of the trade の形で、短く切り出すときの言い方として出てきました。
職場に戻ってきたジェイが、声をかけてきた相手を buddy と呼んで返し、名前が分からないときの呼び方をコツとして明かす。その一言に、経験のある人が持つ小さな知恵という響きが表れていました。Little trick of the trade の形で切り出せば、コツの中身をあとに続けて説明する流れも自然に作れます。


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