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準備万端のつもりだったのに、「それではうまくいかない」と指摘される。そんなとき、「それはまた結構なことになった」と皮肉まじりに返す人もいます。
そんな場面にぴったりの「a fine kettle of fish」を、『モダンファミリー』シーズン8第3話の中盤、生徒会長選の演説に向けて準備を進めるマニーが、ジェイの指摘に言い返す一言から、一緒に見ていきましょう。
「a fine kettle of fish」の意味とニュアンス
a fine kettle of fish
意味:やっかいな状況、困った事態(皮肉で fine と言う)
a fine kettle of fish は、思いがけず面倒な状況になったことを、皮肉まじりに言い表す表現です。fine は「立派な」「結構な」という意味の語ですが、ここでは字面とは逆に、「ありがたくない状況」を指して使われています。いい状況に見えるように言って、本当は困っているという、皮肉の働きを持つ言い方です。
形としては、this is や that’s、it’s などを主語に置き、a fine kettle of fish を補語として続けます。It’s a fine kettle of fish. や Well, this is a fine kettle of fish. のように、今の状況を一言でまとめる文になります。台詞のように文頭に Well, を置くと、「やれやれ」という切り出しになります。
この表現は、やや大げさで芝居がかった響きを持っています。同じ状況を a mess で言えば飾らない言い方になりますが、a fine kettle of fish は、わざとらしさのある皮肉として働きます。言う側が余裕を見せたり、あえて気取った言い方をしたりする場面にも合います。
日本語にするときは、「やっかいなことになった」「困った事態だ」「結構なことになったものだ」といった訳が当てはまります。「結構な」を残すと皮肉が出て、「やっかいな」にすると意味が前に出ます。
【ここがポイント!】
- 「a fine kettle of fish」の核は、fine を皮肉に使って「困った状況」を表す言い方
- this is や that’s を主語に、補語として置く形が基本
- a mess より芝居がかった響きがあり、気取った皮肉に向いた表現
『モダンファミリー』S08E03のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
マニーは生徒会長に立候補していて、母のグロリアに、演説のときはスーツとネクタイを着ていくつもりだと話します。それを聞いたグロリアの夫のジェイは、聞き手に合わせるべきだと意見を挟みます。ジェイの指摘を受けたマニーが、どう言い返すのかに注目です。
Manny: I’m running for president, Mom. I’ll wear a suit and tie.
(僕は会長に立候補しているんだよ、お母さん。スーツとネクタイを着ていくつもりだ。)Jay: Well, then you’ll be dressed for your funeral. Kid, you got to know your audience.
(だったら、お前は自分の葬式にふさわしい格好をしていくことになるな。坊主、聞き手をわきまえろ。)Manny: You don’t think I can relate to my peers? Well, this is a fine kettle of fish.
(僕が同世代と通じ合えないと思ってるんですか? これはまた、結構なことになりましたね。)Modern Family Season8 Episode3 (Blindsided)
シーン解説と心理考察
マニーの I’m running for president, Mom. という言い出しには、立候補している者としての自覚が表れています。スーツとネクタイという服装も、演説に臨む準備の一つとして語られています。
ジェイの返しは、スーツ姿が演説の場に合わないという指摘です。Kid, you got to know your audience. は、演説を聞く側に合わせるべきだという助言の形になっています。「坊主」という呼びかけが、年上から年下への言葉であることを示しています。
you got to know your audience の got to は、「〜しなければならない」という意味の口語的な言い方で、助言を強く押し出す形です。know your audience は、話す相手がどんな人たちかをよく知ったうえで話す、という意味の言い方で、演説やプレゼンの場面に向いています。
マニーはその指摘を、You don’t think I can relate to my peers? と、疑問の形で受け止め直します。relate to は「共感する」「気持ちが通じ合う」という意味で、「自分は同世代と気持ちが通じないと言いたいのか」という確認です。続く Well, this is a fine kettle of fish. で、自分の準備が通用しないと言われた状況を、皮肉を込めて言い表しています。
fine を使って困った状況を言い表すところに、素直に不満を口にするのではなく、言葉を飾って返すマニーらしい言い回しが重なっています。ジェイの助言に、改まった言い方で切り返す会話の温度が、この三つの発言のあいだに流れています。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
fine は「結構な」、kettle は「鍋ややかん」、fish は「魚」です。まず、ごちそうが盛られた立派な鍋を頭に浮かべてみましょう。ところが蓋を開けると、中では魚がごちゃごちゃに煮えていて、手がつけられない状態でした。見た目の期待と中身のずれが、この表現の皮肉に重なります。
マニーが言った this is a fine kettle of fish も、ジェイの一言で、準備した服装の自信が崩れた瞬間を、この鍋に重ねた言い方でした。鍋の蓋を開けて、思わず「結構なことで」とつぶやく絵を思い浮かべると、使いどころが思い出せます。
例文で覚える「a fine kettle of fish」
思わぬ事態に直面した場面で使う a fine kettle of fish を、3つの例文で確認していきましょう。
Well, this is a fine kettle of fish. The flight is cancelled and the hotel is full.
(これはまた、やっかいなことになった。フライトは欠航で、ホテルも満室だ。)
旅行中のトラブルに直面した場面です。状況を並べる文が続くことで、困った事態の中身が具体的に伝わります。
We lost the contract and the client wants a refund. That’s a fine kettle of fish.
(契約を失い、顧客は返金を求めている。やっかいな事態だ。)
仕事の失敗が重なったビジネスの場面です。先に事実を述べてから、That’s を主語にして状況をまとめています。
A: The key is inside, and the door just locked.
B: Well, that’s a fine kettle of fish.
(A:鍵は中にあって、ドアが今ロックされたんだ。)
(B:やれやれ、やっかいなことになったね。)
うっかりミスで困る場面の会話です。B の Well, が、ため息まじりの切り出しになっています。
あわせて覚えたい関連表現
a pretty pickle
(困った立場、苦境)
a pretty pickle は、pretty を皮肉に使う点で a fine kettle of fish に近い表現です。どちらも、前向きな形容詞で困った状況を言い表す仕組みを持っています。
in a mess
(面倒な状態にある)
in a mess は、皮肉を含まずに状況をそのまま言う表現です。a fine kettle of fish は、同じ状況を皮肉と少しの芝居がかった調子で言う違いがあります。
in a fix
(窮地に立たされて)
in a fix は、前置詞の in と一緒に使います。a fine kettle of fish は、this is や that’s を主語にして補語として置く形が中心で、文の組み立てが違います。
Note|fine も kettle も字面どおりに読むと外れる、a fine kettle of fish の意味
a fine kettle of fish は、構成する語を一つずつ訳すと、意味が見えにくくなる表現です。fine は「立派な」、kettle は「鍋」、fish は「魚」で、字面どおりなら「立派な魚入りの鍋」になります。ところが、実際の意味は「やっかいな状況」で、ほめ言葉の意味はまったくありません。
この食い違いを生んでいるのが、fine の皮肉な使い方です。fine は本来、よい状態を表す形容詞です。それを困った状況の前に置くと、「結構なものだ」という、わざとらしいほめ方になります。a pretty pickle の pretty も同じ働きをしています。
もう一つ注意したいのが、kettle of fish の部分です。「魚の入った鍋」という字面は、「ごちゃごちゃして手がつけられない状態」という比喩として働いています。語の由来を調べなくても、辞書の定義どおりに「やっかいな状況」と覚えれば十分に使えます。
文頭の Well, や、冠詞の a にも注目すると、この表現の型が見えてきます。Well, this is a fine kettle of fish. のように、a が付いた名詞の補語として置かれるため、複数形にはならず、ひとまとまりの句として覚えるのが近道です。
a fine kettle of fish に出会ったら、fine を字面どおりのほめ言葉として受け取っていないか、読み直してみてください。皮肉の表現は、その一呼吸で読み違いを避けられます。
まとめ|ほめ言葉の形で、困りごとを言い表す一言
a fine kettle of fish は、思いがけず面倒になった状況を、fine という皮肉を使って言い表す表現です。this is や that’s を主語に置く形で、今の状況を一言でまとめられます。
ジェイに服装の方針を指摘されたマニーが、Well, this is a fine kettle of fish. と切り返す場面は、困った状況を飾った言葉で言い返す使い方の見本のようなものです。やや芝居がかった響きがあるため、軽い皮肉を込めたいときに向いた一言です。


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