海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
「絶対に無理」と言い切りたいけれど、ただ no と言うだけでは気持ちが収まらない、という場面があります。
そんなときに使える「a cold day in hell」を、『モダンファミリー』シーズン8第8話の中盤、請願書の署名をめぐるジェイの一言から、一緒に見ていきましょう。
「a cold day in hell」の意味とニュアンス
a cold day in hell
意味:絶対にありえない(地獄が寒くなる日でもなければ起こらない)
a cold day in hell は、直訳すると「地獄の寒い日」です。地獄は普通、燃えるように暑い場所を思い浮かべるので、その地獄が寒くなる日は、まず来ません。そこから、「そんなことは絶対に起こらない」「決してありえない」と、強く否定する表現になりました。
この表現は、It’ll be a cold day in hell before … の形で使うのが基本です。before のあとに「ありえないこと」を置き、「…するなんて、地獄が寒くなる日でもなければありえない」という言い方です。before のあとの動詞は、これから先のことでも、現在形で書きます。ドラマのジェイの一言も、It’ll be a cold day in hell before that hippie tees off in flip-flops. と、この形に沿っています。
形は一つではありません。before の代わりに when を置いて、It’ll be a cold day in hell when … と言うこともできます。また、a cold day in hell だけを、文の後ろに置く言い方もあります。I’ll lend him money again on a cold day in hell. のように、on を付けて「地獄が寒くなる日にでもならなければ」という意味にもできます。on a cold day in hell は、ありえない日を「〜の日に」という時の言い方に置いた形です。
【ここがポイント!】
- 「a cold day in hell」の核は、「地獄が寒くなる日でもなければ起こらない」という大げさな否定
- It’ll be a cold day in hell before … の形で、ありえないことを後ろに置く
- before の代わりに when や on を使った形もあり、強い拒否や起こりそうにないことの否定に使える
『モダンファミリー』S08E08のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ジェイが、ゲイリーの請願書にまつわる署名の条件に触れ、それに応じる気持ちはないと言い切る場面です。フレーズは、その言い切りの後半に出てきます。
Jay: Gary won’t sign my petition unless I sign his. It’ll be a cold day in hell before that hippie tees off in flip-flops.
(ゲイリーは、俺が向こうの請願書に署名しないかぎり、俺の請願書には署名しないんだとさ。あのヒッピーがビーチサンダルでティーオフするなんて、地獄が凍る日でもなけりゃありえんな。)Modern Family Season8 Episode8 (The Alliance)
シーン解説と心理考察
ジェイの一言は二つの文でできていて、前半が事情の説明、後半が自分の気持ちです。前半の Gary won’t sign my petition unless I sign his. では、まずゲイリーの条件が語られます。won’t sign は「署名しようとしない」、unless は「〜しないかぎり」という意味です。
his は、his petition、つまりゲイリーの請願書を指します。my petition がジェイの請願書、his がゲイリーの請願書で、お互いの請願書に署名し合うことが、ゲイリー側の条件になっています。ジェイの請願書に署名してほしければ、ジェイもゲイリーの請願書に署名しろ、という交換条件です。それぞれの請願書が何についてのものかは、この一言では語られていません。
後半の It’ll be a cold day in hell before that hippie tees off in flip-flops. が、ジェイの本心の部分です。tee off は、ゴルフでティーに置いたボールを最初に打つことを指し、in flip-flops はビーチサンダルを履いたまま、という意味です。ビーチサンダルでティーオフするなんて、地獄が寒くなる日でもなければありえない、と大げさに言い切っています。
ここで注目したいのは、ジェイの言葉の組み立てです。前半で相手の条件を述べ、後半で a cold day in hell を使って、それに応じる気持ちはまったくないと強く言い切っています。事実を述べる文のあとに、大げさな慣用句が続く落差が、ジェイの拒否の強さをはっきり見せています。
a cold day in hell は、冗談めかした誇張ですが、言いたいことは本気の拒否です。「ありえない」と言うだけなら It will never happen. で済むところを、地獄が寒くなる日という大げさな絵に置き換えることで、強い調子が加わっています。遠回しにせず、きっぱり言い切る形です。
あのヒッピーがビーチサンダルでティーオフする、という具体的な絵が出てくる点も、この言い方の面白いところです。ありえないことの例として挙げられているのが、ビーチサンダルでのティーオフです。具体的な例を添えることで、「ありえない」という言い切りに、はっきりした輪郭が出ています。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
地獄といえば、燃え盛る炎の中の、焼けつくような暑さの場所です。そこに、冷たい風が吹き、霜が降りて、寒い日がやってくる。そんな日を、カレンダーの中から探してみてください。見つからないはずです。
この「見つからない日」が、そのまま「絶対にありえない」という意味になります。cold と hell の組み合わせは、ふつうは結びつかないものを並べて、「その日は来ない」と言うための道具です。
ジェイの言うビーチサンダルでティーオフする日も、カレンダーには見つからない日として、地獄が寒くなる日と並んでいます。ありえないことの例えとして、cold と hell を並べた形を、一つの塊で覚えておきましょう。
例文で覚える「a cold day in hell」
before・when・on と、使う形を変えながら例文で確かめます。
A: Do you think he’ll apologize?
B: It’ll be a cold day in hell before he says sorry.
(A:彼は謝ると思う?)
(B:彼が謝るなんて、地獄が凍る日でもなけりゃありえないよ。)
before のあとに、ありえないことを置いた基本の往復会話です。before he says sorry のように、先のことでも現在形で書きます。
I’ll lend him money again on a cold day in hell.
(彼にまたお金を貸すなんて、絶対にありえない。)
on を付けて、文の後ろに置いた形です。「地獄が寒くなる日にでもなれば貸すかもしれない」という言い方で、貸す気がまったくないと伝えます。
He says he’ll clean his room, but it’ll be a cold day in hell before he does.
(彼は部屋を片づけると言うけれど、そんな日は絶対に来ないよ。)
口先だけの約束を疑う場面です。before he does と、does が clean his room の代わりに入っています。
あわせて覚えたい関連表現
when pigs fly
(ありえない(ブタが空を飛ぶとき))
when pigs fly は、起こりえないことを、ブタが空を飛ぶ日にたとえる、やや軽い言い方です。a cold day in hell は、強く拒否する気持ちが前に出る言い方です。
never in a million years
(絶対に(100万年たっても)ない)
never in a million years は、「決して」を強める直接的な言い方です。a cold day in hell は、ありえない日にたとえる形をとります。
over my dead body
(私の目の黒いうちは許さない)
over my dead body は、自分が阻止するという強い意志を表します。a cold day in hell は、起こりえないという見込みの強い否定を表す言い方です。
Note|「地獄の寒い日」と直訳したときのずれ、cold と hell が作る「絶対にありえない」
a cold day in hell を、そのまま日本語にすると「地獄の寒い日」です。この直訳だと、何を言いたいのかが伝わりません。「地獄に寒い日があるの?」と、意味が分からないまま終わってしまいます。
ずれの原因は、cold と hell の関係にあります。hell は普通、暑いところを思わせる語で、そこに cold が組み合わさると、ふつうは起きないことを言う形になります。つまり、「地獄の寒い日」という言葉自体が、ありえないことの例えです。日本語に直すときは、この例えの部分は活かしつつ、言いたい意味である「絶対にありえない」まで一気に訳すと伝わります。
訳し方は、before のあとに何が来るかで選べます。ジェイの「ビーチサンダルでティーオフする」のように、行動が来るなら、「〜するなんて、地獄が凍る日でもなけりゃありえない」と、例えを残した訳が合います。謝る、貸すなど、拒否の気持ちが前に出る内容なら、「絶対に〜しない」と、意味を取り出して訳すほうが自然です。
もうひとつ気をつけたいのが、it の中身です。It’ll be a cold day in hell の it は、特定の物を指さず、「そういうこと」という漠然とした状況を表します。訳すときは it を訳語に出さず、「〜するなんて」と、before 以下の内容を主役にして日本語にします。
このように、直訳の「地獄の寒い日」は例えとして活かし、実際の訳では「絶対にありえない」まで言い切る。この二段構えが、a cold day in hell を日本語にするときの選び方です。
まとめ|地獄が凍る日を、待ってみる
a cold day in hell は、地獄が寒くなる日にでもならなければ起こらない、という大げさな言い方で、「絶対にありえない」と強く否定する表現です。It’ll be a cold day in hell before … の形で、ありえないことを後ろに置きます。
before のほかに when や on を使った形もあり、強い拒否や、起こりそうにないことの否定に使えます。日本語に直すときは、例えを残した「地獄が凍る日でもなけりゃありえない」と、意味を取り出した「絶対にありえない」を、文脈で選び分けます。
署名の条件を述べたあと、ビーチサンダルでのティーオフを例に出して、きっぱり言い切るジェイの一言。それに a cold day in hell が選ばれたのは、拒否の強さを、大げさな絵でそのまま見せられるからでした。


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