海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
『フレンズ』シーズン4第7話では、ロスが自作の曲を仲間に聴かせたことをきっかけに、演奏の感想をめぐるやりとりが、場所を変えていくつかの場面で交わされます。
感想を伝える英語は、ほめ言葉とけなし言葉に分けて覚えがちです。ところがこの回では、同じ言葉でも、誰に向けて言うのか、相手が何を望んでいるのかによって働きが変わります。場面ごとに順に見ていきます。
「Terrific」本人を前にしたほめ言葉
場面はモニカとレイチェルの部屋です。ロスが仲間の前で自分の曲を弾き終えると、まずモニカが Terrific. と感想を返します。
Monica: Terrific.
(すばらしかった。)
Friends Season4 Episode7(The One Where Chandler Crosses the Line)
このあと、フィービー、レイチェルと感想が続きます。
Phoebe: Wow! It was so… wow!
(わあ!すっごく……わあ!)
Ross: Really? I mean, really?
(本当に?いや、本当に?)
Rachel: Oh, yeah! I mean, you should… play in public.
(ええ、もちろん!ほら、人前で……演奏したらいいのに。)
Ross: Wow! Thanks, you guys! That’s, oh… oh, I want to play you another piece.
(うわあ!ありがとう、みんな!それは、ああ……そうだ、もう1曲聴かせたいな。)
Friends Season4 Episode7(The One Where Chandler Crosses the Line)
terrific は「すばらしい」「最高の」という意味のほめ言葉です。フィービーの It was so… wow! は、so のあとに来るはずの形容詞が見つからず、wow で言い切った形になっています。レイチェルの You should ~ は「〜したらいいのに」という提案の形で、人前で弾くことを勧めることがそのままほめ言葉として働いています。
三人の感想はいずれも、曲のどこがよかったのかには触れていません。それでもロスは Really? I mean, really? と二度聞き返し、お礼を言って、もう1曲聴かせたいと言い出します。ほめ言葉を受けた側が「本当に?」と確かめる Really? は、うれしさを表す返しとして使われることの多い形です。なお、ロスとレイチェルがそろって使う I mean は、言い直したり言葉を足したりするときのつなぎで、ここでは「いや」「ほら」くらいの軽い働きをしています。
「It’s so different」本人のいない所で交わす感想
ロスが別のディスクを取りに部屋を出ていくと、残った仲間の会話が続きます。フィービーとチャンドラーのやりとりです。
Phoebe: It was so moving.
(すごく心に響いた。)
Phoebe: Plus, it’s so different from the stuff you usually hear.
(それに、普段耳にするものとは全然違うし。)
Chandler: You mean music?
(音楽のことか?)
Friends Season4 Episode7(The One Where Chandler Crosses the Line)
moving は「感動的な」「心を動かす」という意味の形容詞です。フィービーはこの回のほかの場面でも、ロス本人に向かって演奏をほめています。ここでも本心から気に入っている言葉として読めます。
続く different from ~ は「〜とは違う」という中立的な言い方です。ほめ言葉にもけなし言葉にもなり得るため、受け取る側の解釈しだいで意味が変わります。
フィービーは「普段耳にするものとは違う」とほめる意味で使っていますが、チャンドラーは You mean music?(普段聴くものって、音楽のことか?)と返します。普段耳にするもの=音楽だとすると、ロスの曲は音楽とは違うものだ、という皮肉になるわけです。You mean ~? は「〜のこと?」と相手の言葉の中身を確かめる形で、ここでは冗談の受け答えに使われています。
同じ演奏をほめる言葉でも、言い方しだいで皮肉の材料になってしまうという場面です。
「You suck, too」けなし言葉が逆に働くとき
場面がカフェのセントラルパークに移り、ロスが店で演奏します。演奏が終わったあと、今夜は弾かないと言うフィービーに、モニカとレイチェルが話しかけます。
Monica: Phoebe, Ross sucks.
(フィービー、ロスはひどいわよ。)
Rachel: Phoebe, the place has emptied
(フィービー、お店から人がいなくなったのよ)
Phoebe: Oh, my God, he’s not even appreciated in his own time.
(なんてこと、ロスは同じ時代の人に認めてもらえないのね。)
Phoebe: I would give anything to not be appreciated in my own time!
(私だって、同じ時代の人に認められずにすむなら何でもするのに!)
Friends Season4 Episode7(The One Where Chandler Crosses the Line)
suck はくだけた口語で「ひどい」「下手だ」を表す強い言葉で、使う相手や場面を選ぶ語とされます。モニカはこの言葉を、ロス本人ではなくフィービーに向けて言っています。
ところがフィービーは、appreciated in one’s own time(同じ時代の人に認められる)を使って、認められないのはむしろうらやましいと返します。I would give anything to ~ は「〜するためなら何でもする」と強く望む言い方です。レイチェルの the place has emptied は、現在完了で「店から人がいなくなってしまった」という今の状態を伝えています。
Monica: Okay. Um, Phoebe… you suck, too.
(分かった。えっと、フィービー……あなたもひどいわよ。)
Rachel: Yeah, Phoebe, you’re… awful!
(そうよ、フィービー、あなたって……最悪!)
Phoebe: You guys.
(もう、二人とも。)
Phoebe: Yeah, you suck, too.
(うん、二人もひどいわよ。)
Friends Season4 Episode7(The One Where Chandler Crosses the Line)
今度は本人に面と向かって you suck, too と awful(ひどい、最悪の)が向けられます。too は「ロスと同じく」を表しています。フィービーは You guys. と言ってから同じ言葉を二人に返しており、けなし言葉をうれしい言葉として受け取っていると読み取れます。
まとめ|ほめ言葉とけなし言葉の働き
terrific や You should play in public のようなほめ言葉、different や You mean music? のような含みのある言い方、そして suck や awful を見てきました。同じ言葉でも、誰に向けるかと相手の望みによって働きが変わることが分かります。
仲間の言葉の裏表を追いながら観ると、感想を伝える英語の幅が見えてきます。
演奏をめぐるほかの場面の英語は、この回のほかのコラムやフレーズ記事で扱っています。


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