海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
大事な予定を前に、本当はそわそわしているのに「べつに、大したことじゃないし」と自分に言い聞かせた経験はありませんか。
そんなときに口をついて出る「make a big deal out of」は、何かを大げさに受け止める・おおごとにする、という意味の表現です。『ビッグバン★セオリー』シーズン5第13話、レナードと久しぶりのデートを控えたペニーが、寝室で女子会をしながら緊張を抑え込もうとする場面から、一緒に見ていきましょう。
「make a big deal out of」の意味とニュアンス
make a big deal out of
意味:〜を大げさに考える、〜を騒ぎ立てる
deal は「取引・取り決め」のほか、「重大事・大ごと」という意味でも使われます。a big deal で「大事なこと」、make a big deal out of 〜 で「〜を材料にして大ごとを作り出す」という構造です。
実際の会話では、否定形の「don’t make a big deal out of it(大したことじゃない)」がとくに多く登場します。自分が動揺している事柄をあえて軽く扱おうとするとき、あるいは過剰に反応している相手をなだめるときに使われます。out of の部分が「〜を出発点にして」という働きをしていて、小さな出来事から大きな騒ぎが生まれていくイメージを支えています。
【ここがポイント!】
- 核は deal の「大ごと」、それを out of で「小さなことから作り出す」イメージ
- 否定形「don’t make a big deal out of it」で使われることがとても多い表現
- 自分の動揺を打ち消すときにも、相手の過剰反応をたしなめるときにも使える一言
『ビッグバン★セオリー』S05E13のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
レナードと2年ぶりにデートをすることになったペニーが、寝室でエイミーとバーナデットに服装を見てもらいながら準備を進めます。平静を装いたいのに、エイミーの不謹慎な合いの手で余計に落ち着かなくなっていく、その流れの中でこの一言が出ます。
Bernadette: Do you think you’ll sleep with him tonight?
(今夜、彼と寝ると思う?)Penny: Absolutely not. Look, we’re just gonna have dinner and, you know, see how it goes. Screw it. I’m not gonna make a big deal out of this. It’s just dinner.
(ありえない。ただ食事して、様子を見るだけ。……もういいわ。これを大げさに考えるのやめる。ただの食事じゃない)Amy: With a dead man.
(死にゆく男とのね)The Big Bang Theory Season5 Episode13(The Recombination Hypothesis)
シーン解説と心理考察
「ただの食事」と繰り返すペニーの言葉には、膨らみそうになる期待と不安を自分で抑えようとする様子が表れています。make a big deal out of の否定形は、その自己説得のいわば芯として置かれています。本心では大ごとだと分かっているからこそ、わざわざ「大げさにしない」と宣言する必要があるわけです。
そこへエイミーが「死にゆく男との食事ね」と茶々を入れることで、ペニーの平静を装う努力がやわらかく崩されていきます。落ち着こうとする側と、引っかき回す側の温度差が、この短いやり取りに重なっています。緊張を打ち消そうとするほど緊張が際立つという、誰にでも覚えのある心の動きが見どころです。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
deal を「商談・大きな案件」と捉えると、このフレーズの輪郭がつかみやすくなります。なんでもない出来事を、わざわざ大きな商談(big deal)に仕立て上げてしまう——その「小さなネタを大ごとに膨らませる」動きが out of に込められています。
ペニーが「ただの食事」を心の中で一大イベントにしかけて、あわてて「やめる」と打ち消す姿を思い出してみてください。膨らませる方向と、それを否定する方向。その両方をセットで思い浮かべると、否定形での使い方ごと記憶に残りやすくなります。
例文で覚える「make a big deal out of」
否定形での「大げさにしないで」という使い方を中心に、3つの場面で見ていきます。
Please don’t make a big deal out of my birthday — a small dinner is enough.
(誕生日を大げさにしないで。ささやかな食事で十分だから)
家族や友人に控えめなお祝いを頼む場面です。最も頻出の否定形パターンで、相手の気遣いをやわらかく受け止める言い方になっています。
She made a big deal out of one small typo in the report.
(彼女は報告書のたった一つの誤字を大げさに騒ぎ立てた)
同僚の過剰反応を後から振り返って話す場面です。三人称・過去形にすると、相手の反応を少し冷静に評するニュアンスが出ます。
A: I think I made a mistake in the email I just sent.
B: Don’t make a big deal out of it. Just send a quick correction.
(A:さっき送ったメール、間違えたかも)
(B:大げさに考えないで。さっと訂正を送ればいいよ)
職場で焦っている相手を落ち着かせる会話です。返しの中で使うことで、「落ち着いて」というメッセージを自然に伝えられます。
あわせて覚えたい関連表現
blow something out of proportion
(〜を実際以上に大げさにとらえる)
同じ「大げさにする」でも、こちらは事実の規模をゆがめて誇張するニュアンスが強い表現です。make a big deal out of が「重要でないものを重要扱いする」のに対し、こちらは「実態より大きく見せる」点に重きがあります。
make a fuss
(大騒ぎする、ちやほやする)
fuss は感情的な騒ぎ立てを指し、心配ごとにも歓待にも使えます。make a big deal out of よりも、わいわいと騒ぐ様子が前に出る言い回しです。
overreact
(過剰反応する)
一語の動詞で「反応が大きすぎる」点に焦点を当てます。out of の構文を取らないぶん、短くストレートに相手の反応を指摘できます。
Note|deal が「重大事」を意味するようになるまで
何気なく使う a big deal の deal が、なぜ「重大事」を表すのか。その背景には、この語が歩んできた長い意味の変化があります。
deal はもともと「分配する・分け与える」という動作や「分けられた量・部分」を表す古英語の語に由来するとされます。トランプを deal(配る)と言うのも、a great deal of(たくさんの)という量の表現も、この「分配・量」の核から枝分かれしたものと考えられます。そこから「取り決め・取引」の意味が育ち、さらにビジネスの世界で「大きな案件」を big deal と呼ぶ感覚が日常へ広がっていきました。a big deal が「重大事」を指すようになったのは、この「大きな商談=重要なもの」という連想が下敷きにあるとされています。今では no big deal(大したことない)、what’s the big deal?(何が問題なの?)、make a big deal out of it(大げさにする)など、deal を核にした定型句がいくつも日常会話に根づいています。
こうして見ると、ペニーが口にした make a big deal out of も、「取引」から「重大事」へと広がった deal の歴史の上に成り立っている表現だと分かります。小さな出来事を、心の中で大きな「案件」に格上げしてしまう——その感覚が言葉の成り立ちに重なっています。
言葉の来歴を知ると、否定形が多用される理由も腑に落ちてきます。
まとめ|緊張を打ち消す「大したことない」を英語で
make a big deal out of は、ある出来事を大ごととして受け止める、あるいは騒ぎ立てることを表す表現です。とりわけ否定形では、自分の動揺をなだめたり、相手の過剰反応をやわらげたりする働きをします。
この一言が使えるようになると、緊張する場面で「落ち着いて、大したことじゃない」という気持ちを、肩の力を抜いた言い方で伝えられるようになります。ペニーのように、自分に言い聞かせる独り言としても自然に響きます。
平静を装いたい場面で、ふっと力を抜くための一言として、表現の引き出しに加えてみてください。


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