海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
つらい時期の真っただ中にいるとき、「この苦しさも、いつかは終わる」と自分に言い聞かせて踏ん張った経験はありませんか。その気持ちを、英語圏では一つの古い格言で言い表すことがあります。
今回は、その「これもまた過ぎ去る」にあたる「this too shall pass」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン7第20話の終盤、シェルドンが落ち込むハワードを古い逸話で慰めようとするシーンから、一緒に見ていきましょう。
「this too shall pass」の意味とニュアンス
this too shall pass
意味:これもまた過ぎ去る、これもいつか終わる
this too shall pass は、良いことも悪いことも一時的で、いずれ過ぎ去っていくという無常観を表す格言です。主に、つらい状況にある人を慰め、励ますために使われます。
直訳すると「これもまた過ぎ去るだろう」。注目したいのは shall という助動詞です。日常会話では will を使うのが一般的ですが、この格言はあえて古風な shall を保っています。それによって、聖書やことわざのような荘厳さと普遍性を帯びた響きになっています。
苦しい時期にある人への慰めとしてはもちろん、自分自身に言い聞かせる言葉としても使われます。「今がどんなにつらくても、これは永遠には続かない」——そんな静かな希望を伝える表現だと言えます。
【ここがポイント!】
- 良いことも悪いことも過ぎ去る、という無常観を一言にした格言
- 古風な shall が、聖書やことわざのような荘厳さと普遍性を添えている
- 人を慰めるときにも、自分に言い聞かせるときにも使えるのが持ち味
『ビッグバン★セオリー』S07E20のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
過去の失態を打ち明けて落ち込むハワードに、シェルドンが慰めの言葉をかけようとします。彼が持ち出したのは、中東の詩人が語ったという「ある王と指輪」の逸話です。ところが、せっかくの格言は思わぬ形で裏切られることになります。
Sheldon: I’ve always been a fan of a story about a king who assembled a group of wise men to create a ring that would make him happy when he was sad. And that ring was inscribed with the phrase, this too shall pass.
(僕は昔から、ある王の話が好きでね。悲しいときに自分を幸せにしてくれる指輪を作らせるため、賢者たちを集めたんだ。その指輪には「これもまた過ぎ去る」という言葉が刻まれていた)Barry: Whatever you say, Clogzilla.
(お好きにどうぞ、クロッグジラさん)Sheldon: Clogzilla. That’s pretty funny. I don’t think that’s gonna pass.
(クロッグジラ。なかなか面白いね。それは過ぎ去らないと思うよ)The Big Bang Theory Season7 Episode20(The Relationship Diremption)
シーン解説と心理考察
シェルドンが this too shall pass という荘厳な格言で場を締めようとした直後に、バリーがハワードを Clogzilla(トイレを詰まらせた怪獣の意のあだ名)とからかう——この落差にシーンの妙があります。「すべては過ぎ去る」と説いたばかりのシェルドンが、間髪入れず「でも、そのあだ名は過ぎ去らないと思う」と落とすのです。
格言で人を慰めようとしながら、その慰めを自ら台無しにしてしまうところに、シェルドンらしい無神経さと知識自慢が同時に表れています。人を励ますことよりも、自分の知る逸話を披露することを優先してしまう——そのズレが笑いを生んでいます。
「これもまた過ぎ去る」という時間の重みを持つ格言と、くだらないあだ名という軽さ。この二つを並べることで、深刻になりすぎないシットコムらしい温度が保たれています。慰めが裏目に出るおかしさが、この場面の見どころです。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
悲しいときに見れば慰められ、嬉しいときに見れば謙虚になれる——そんな魔法の指輪に刻まれた一文として this too shall pass を思い浮かべてみてください。喜びも苦しみも、川の水のように pass(流れ去って)いく、そのイメージが言葉の核にあります。
シェルドンが荘厳に this too shall pass を説いた直後、Clogzilla というあだ名だけは「過ぎ去らない」と落とす場面とセットにすると、格言の重みとギャグの軽さが対になって記憶に残ります。pass という単語の「通り過ぎる」感覚を、流れる水の動きと結びつけると忘れにくくなります。
例文で覚える「this too shall pass」
this too shall pass は、人を慰める場面でも、自分を励ます場面でも使えます。3つの例文でその幅を掴んでみましょう。
I know things are hard right now, but this too shall pass.
(今がつらいのはわかるよ。でも、これもまた過ぎ去るから)
落ち込んでいる相手を慰める場面です。this too shall pass の最も典型的な使い方で、相手の今の苦しさを認めたうえで、静かに希望を添えています。
Whenever I feel overwhelmed, I remind myself that this too shall pass.
(打ちのめされそうなとき、いつも「これもまた過ぎ去る」と自分に言い聞かせている)
自分を励ます習慣を語る場面です。remind myself(自分に言い聞かせる)と組み合わせることで、この格言が自分の心を支える言葉になっていることが伝わります。
A: I failed the exam again. I feel like giving up.
B: Hey, this too shall pass. You’ll get there next time.
(A:また試験に落ちちゃった。もう諦めたい気分だよ)
(B:ねえ、これもまた過ぎ去るって。次はきっとうまくいくよ)
落ち込む友人に声をかける場面です。会話の中で使うと、相手の気持ちに寄り添いながら前を向かせる、やさしい励ましになります。
あわせて覚えたい関連表現
time heals all wounds
(時がすべての傷を癒す)
時間が経てば痛みは和らぐ、という回復に焦点を当てた表現です。状況そのものの移ろいを語る this too shall pass とは、見ている対象が少し違います。
it is what it is
(仕方ない、そういうものだ)
変えられない現状を受け入れるニュアンスの表現です。「いずれ変わる」という前向きな含みを持つ this too shall pass とは、向きが対照的です。
tomorrow is another day
(明日は明日の風が吹く)
未来への希望に焦点を当てた表現です。this too shall pass が良いことも悪いことも過ぎ去ると捉えるのに対し、こちらは「また新しい一日が来る」という前向きさが中心です。
Note|「過ぎ去る指輪」の逸話と古い助動詞 shall
this too shall pass は、長い歴史を持つ格言として世界中で語り継がれてきました。その由来には諸説あり、ペルシアの詩人たちの物語や、旧約聖書のソロモン王にまつわる逸話として伝えられることが多い表現です。
劇中でシェルドンが語るのは、ある王と賢者たちの物語です。王が「悲しいときには自分を慰め、嬉しいときには戒めてくれる言葉」を求め、賢者たちがこの一文を指輪に刻んだ——という筋立てです。良いときも悪いときも永遠には続かない、という人生の無常を、たった一つの言葉に込めたところにこの逸話の魅力があります。アメリカでは、エイブラハム・リンカーンが大統領就任前のスピーチでこの格言に触れたとも伝えられており、政治家の演説から個人の座右の銘まで、幅広く使われてきました。言葉の形にも注目したいところです。現代英語なら this will pass と言うところを、あえて古い助動詞 shall を使うことで、聖書やことわざのような重みが生まれています。格言が古い形のまま現代に残る——その典型例がこの表現です。
this too shall pass を覚えるときは、背景にある「過ぎ去る指輪」の物語と、shall が醸し出す荘厳さをセットで意識すると、ただの慰めの言葉以上の深みが感じられるようになります。シェルドンが知識として披露したくなる気持ちも、少しわかるかもしれません。
どんな時も、流れていくものなのですね。
まとめ|シェルドンの空回りから学ぶ「これもまた過ぎ去る」
this too shall pass は、良いことも悪いことも一時的で、いずれ過ぎ去っていくという無常観を表す格言です。古い助動詞 shall が添える荘厳さと、「過ぎ去る指輪」の逸話を背景に、ただの慰め以上の深い響きを持っています。
このフレーズが使えるようになると、つらい状況にある人に「今は苦しくても、これは永遠には続かないよ」と寄り添ったり、自分自身を静かに励ましたりする言葉を、英語で届けられるようになります。シェルドンのように格言で締めたつもりが空回りすることもありますが、タイミングさえ合えば、相手の心にやさしく残る一言になるはずです。
苦しい時期を越えようとしている誰かを思い浮かべながら、表現の引き出しに加えてみてくださいね。


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