海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
スポーツの試合の前に、有名人やゲストが記念すべき最初の一球を投げる——そんな華やかな場面、テレビで見たことはありませんか。
今回は、その「始球式をする」を意味する「throw out the first pitch」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン8第3話の冒頭、ハワードが大リーグの始球式に招かれたと仲間に打ち明けるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「throw out the first pitch」の意味とニュアンス
throw out the first pitch
意味:始球式をする/試合開始の第一球を投げる
throw out は「外へ投げる」が基本の句動詞ですが、ここでの the first pitch とセットになると、試合のセレモニーとして象徴的な一球を投げる、という決まった言い回しになります。単に最初に球を投げるという動作の説明ではなく、開幕や記念行事を彩る公式の儀式を指す表現です。
野球の試合では、有名人・政治家・地元の名士などがゲストとして招かれ、試合に先立ってマウンド付近から本塁へ向けて一球を投げます。この the first pitch は「始球式」という行事そのものを表す名詞句として定着しており、throw out the first pitch で「始球式を務める」という一連の意味になります。out には「観衆の前へ、公の場へ」という広がりの感覚が含まれていると言えます。
【ここがポイント!】
- 核は the first pitch という「始球式の象徴の一球」を投げるイメージ
- ただ投げるのではなく、開幕や記念の場を飾る公式の行事を指す一言
- 名誉なことである一方、失敗が目立ちやすい場面でもあるのが面白いところ
『ビッグバン★セオリー』S08E03のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
アパートでハワードが投球の練習をしているところに、ペニーが帰ってきます。何の練習かと尋ねるペニーに、ハワードが少し得意げに、しかしいつもの自虐を交えながら事情を説明する場面です。フレーズはこの説明のなかで飛び出します。
Penny: For what?
(何のために?)Howard: The Angels wanted an astronaut to throw out the first pitch, so guess who they called?
(エンジェルスが始球式に宇宙飛行士を呼びたがっててさ、誰に声がかかったと思う?)Penny: What, you? Really?
(え、あなた? 本当に?)Howard: Well, a lot of people who weren’t available, but then me.
(まあ、都合のつかない人がいっぱいいて、その次が僕。)The Big Bang Theory Season8 Episode3(The First Pitch Insufficiency)
シーン解説と心理考察
宇宙飛行士という肩書きを持つハワードに、大リーグの球団から始球式の依頼が舞い込んだという、彼にとっては晴れがましい話です。栄誉を語りながらも「都合のつかない人がいっぱいいて、その次が僕」と自分を落とすあたりに、ハワードらしい照れ隠しと自己評価の低さがにじむ場面です。
ペニーの「え、あなた?」という率直な驚きが、運動とは縁の薄いこの仲間たちの関係性をやわらかく見せています。この後ハワードは本番に向けて練習を重ねることになり、throw out the first pitch という一言がエピソード全体を引っぱるきっかけとして響きます。華やかな依頼と、それを受けた本人の微妙な気後れのギャップが、冒頭から会話の温度を作っています。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
マウンドに立ったゲストが、大観衆の見守るなか、試合開始を告げる記念の一球を本塁へ向けて投げ放つ——その光景をそのまま思い浮かべてみましょう。throw out の out は「みんなの前へ放つ」という公の場の感覚です。ハワードが宇宙飛行士として大勢の観客の前でこの一球に臨むという、劇中の気負いと緊張感に重ねると、throw out the first pitch が「始球式をする」という意味で記憶に残ります。最初の一球(the first pitch)が、ただの投球ではなくセレモニーであることが、シーンの華やかさとともに体感できます。
例文で覚える「throw out the first pitch」
始球式という具体的な行事を指すフレーズなので、誰が・どの試合で投げるのかとセットで使うと自然です。3つの例文で使い方の幅を見ていきましょう。
A famous singer will throw out the first pitch at tonight’s game.
(有名歌手が今夜の試合で始球式を務める。)
スポーツニュースで話題を紹介する場面です。誰がゲストとして招かれたかを伝える、最も標準的な使い方です。
The mayor threw out the first pitch to mark the stadium’s reopening.
(市長が球場の再開を記念して始球式を行った。)
式典や公式行事を報じる文脈で使われています。過去形は threw となる点も合わせて押さえておきたいところです。
A: Did you hear who’s throwing out the first pitch this year?
B: Yeah, an astronaut. Pretty cool, right?
(A:今年の始球式、誰がやるか聞いた?)
(B:うん、宇宙飛行士だって。かっこいいよね?)
友人同士のカジュアルな会話です。進行形で「これから誰がやるのか」を話題にする、軽い盛り上がりのニュアンスです。
あわせて覚えたい関連表現
ceremonial first pitch
(儀礼的な始球式の一球)
始球式の「球そのもの」を名詞で指す言い方です。throw out the first pitch が投げる動作を表すのに対し、こちらは行事の対象を名指しする表現になります。
kick off
(〜を開始する)
イベントや催しの幕開けを表す比喩で、球技に限らず幅広く使えます。始球式に特化した throw out the first pitch とは違い、物事一般のスタートを軽く言いたいときに便利です。
get the ball rolling
(物事を始動させる)
こちらも「最初の一歩を踏み出す」という比喩表現です。実際の投球ではなく、比喩としての「始め」を指す点が、文字どおりの一球を投げる今回のフレーズとの違いです。
Note|アメリカの始球式という文化
throw out the first pitch という表現の背景には、アメリカの野球文化に根づいた始球式の習慣があります。
大リーグでは、有名人・政治家・退役軍人・地元の名士、さらには宇宙飛行士まで、さまざまなゲストが始球式に招かれるのが恒例の行事となっています。ゲストにとっては大きな名誉である一方、投球フォームの良し悪しや球が届くかどうかが大観衆の前にさらされ、中継やSNSで一瞬にして拡散される場でもあります。うまく投げても大きな称賛にはつながりにくく、失敗すれば長く語り草になってしまう——この「栄誉と気まずさが背中合わせ」の構造が、始球式という行事の独特な緊張感を生んでいるとされます。劇中でハワードが、依頼を喜びつつも本番に向けて練習に練習を重ね、それでも不安を拭えないのは、まさにこの始球式ならではのプレッシャーを反映していると言えます。
throw out the first pitch を覚えるとき、この「華やかだが逃げ場のない一球」という文化的な手触りまで知っておくと、ニュースやドラマでこの表現に出会ったときの理解がぐっと深まります。
栄誉と緊張が同居する、たった一球の物語なのですね。
まとめ|ハワードの一球から覚える「始球式」
throw out the first pitch は、試合開始を告げる記念の一球を投げる、つまり「始球式をする」ことを表すひとまとまりの表現です。the first pitch という象徴の球を、観衆の前へ throw out する——この公の場の感覚をつかんでおくと、意味がぶれません。
スポーツニュースや式典の話題で、誰がゲストとして招かれたかを伝えるときに、そのまま使える便利なフレーズです。ハワードのように気負ってしまう場面も含めて、始球式という行事ごとイメージできるようになります。
栄誉あるマウンドの一球を表す言葉として、英語の引き出しに加えてみてくださいね。


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