海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
「正直、これは私の得意分野じゃなくて……」と、自分の苦手をやわらかく打ち明けたい場面が、誰にでもあるのではないでしょうか。
その気持ちにぴったりの「be one’s strong suit」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン8第24話、交際5周年の記念日に、皮肉の通じないシェルドンが堂々と「苦手なんだ」と認めるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「be one’s strong suit」の意味とニュアンス
be one’s strong suit
意味:〜の得意分野である、〜が得意だ
suit は、トランプのスペード・ハート・ダイヤ・クラブといった「組札(スート)」を指します。strong suit は手札の中で最も強い組札、つまり「いちばん勝負できるカード」のこと。そこから転じて「自分の最も得意な領域=得意分野」を表すようになりました。
特徴的なのは、否定形で使われることがとても多い点です。Patience isn’t my strong suit(我慢は苦手でね)のように、not one’s strong suit で「〜は得意じゃない=苦手だ」を、角を立てずに婉曲に伝えられます。「下手だ」「できない」と直接言う代わりに、「得意分野ではない」と裏返して述べることで、やわらかく自分や相手の弱点に触れられる、便利な言い回しです。
【ここがポイント!】
- トランプの「最も強い組札」が「得意分野」の核イメージ
- 否定形 not one’s strong suit で「苦手だ」を婉曲に言えるのが最大の使いどころ
- 「下手」と直接言わず裏返して伝える、角の立たない一言
『ビッグバン★セオリー』S08E24のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
交際5周年の記念日だというのに、シェルドンは新しいドラマ『フラッシュ』を観始めるべきか否かに気を取られています。ロマンチックな空気を期待していたエイミーが「この皮肉が分かる?」と詰め寄ると、シェルドンが皮肉をまるで理解しないまま、あっさり「得意じゃない」と認めるところに見どころがあります。
Amy: Sheldon, do you understand the irony of your fixation on a man with super speed, while after five years all I can get out of you is a distracted make-out session on a couch?
(シェルドン、超スピードの男に夢中なくせに、5年経っても私が引き出せるのはソファでの上の空なキスだけ——この皮肉、分かる?)Sheldon: Irony’s not really my strong suit. But I have been getting better with sarcasm, if you want to give that a try.
(皮肉は僕の得意分野じゃなくてね。でも嫌味なら上達してきたから、それで試してみてもいいよ。)Amy: Oh, sure, I’d love to.
(ええ、ぜひお願いするわ。)The Big Bang Theory Season8 Episode24(The Commitment Determination)
シーン解説と心理考察
エイミーが投げかけたのは、明らかに皮肉を込めた抗議です。ところがシェルドンはその皮肉を額面どおりに受け取り、「皮肉は得意分野じゃない」と弱点を悪びれず事実として認めてしまいます。自分の不得意を淡々と申告する律儀さが、彼らしさをよく表しています。
さらに「嫌味なら上達中だから、それで試してもいい」とズレた提案を重ねるところに、エイミーの怒りに気づいていない鈍さがにじみます。怒りを皮肉で包んだエイミーと、その包みをほどけないシェルドンの噛み合わなさが、二人のやり取りらしいテンポとして響きます。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
トランプの手札を広げた場面を思い浮かべてみてください。スペード・ハート・ダイヤ・クラブの4つの組札のうち、いちばん強いカードが揃った組——それが勝負どころで切り出せる「strong suit(強い組札)」です。
得意分野とは、まさに自信を持って場に出せる「強い手札」のこと。劇中でシェルドンが「皮肉は僕の strong suit じゃない」と、その手札が弱いことをあっさり明かした場面とセットにすると、「勝負札=得意」というイメージごと記憶に残ります。
例文で覚える「be one’s strong suit」
be one’s strong suit は、得意を述べるときにも、否定形で苦手をやわらかく認めるときにも使えます。とくに後者が活躍する3つの例で見てみましょう。
Cooking isn’t really my strong suit, so I usually order takeout.
(料理はあまり得意じゃないから、たいてい出前を頼むの。)
劇中と同じ、否定形での婉曲な自己申告です。「下手」と言う代わりに「得意分野ではない」と裏返すと、やわらかく聞こえます。
Attention to detail is her strong suit, which makes her perfect for this job.
(細部への注意は彼女の得意分野で、だからこの仕事にうってつけなんだ。)
肯定形で「強み」を述べる使い方です。人の長所を評価して推薦する場面にぴったりです。
A: Small talk has never been my strong suit.
B: Don’t worry, you’ll get better with practice.
(A:世間話は昔から苦手なんだ。)
(B:心配ないよ、練習すればうまくなるさ。)
never を添えると「ずっと苦手」と強調できます。弱点を打ち明けつつ前を向く、自然な言い方です。
あわせて覚えたい関連表現
one’s forte
(得意なこと、専門)
同じ「得意分野」ですが、音楽由来でややフォーマルな硬い響きを持ちます。strong suit のほうが日常会話になじみます。
up one’s alley
(得意・好みに合っている)
「興味や好みに合う」というニュアンスが強い表現です。strong suit が「能力的に優れている」に重心があるのに対し、こちらは「性に合う」寄りです。
not one’s thing
(〜は性に合わない、得意じゃない)
カジュアルに「苦手・好みでない」と言う口語です。not one’s strong suit より軽く、能力というより嗜好を指すことが多くなります。
Note|トランプの「強い組札」から生まれた得意分野
be one’s strong suit を面白くしているのは、「得意分野」という抽象的な意味が、トランプという身近な遊びから生まれている点です。
この suit は、スペードやハートといったトランプの「組札(スート)」を指します。strong suit は、手札の中で最も強いカードが揃った組札、つまり勝負どころで頼りになる「切り札の束」のことだとされています。そこから「自分の最も強い領域=得意分野」という比喩へ広がっていったと言われています。同じくトランプ由来の follow suit(前の人と同じ組札を出す→右へ倣う)と並べてみると、カードゲームの語彙が日常表現の中に静かに溶け込んでいるのが見えてきます。興味深いのは、この表現が肯定形より否定形で使われることが多い点です。自分の弱い手札を「strong suit ではない」と裏返して示すことで、弱点をやわらかく認める婉曲表現として定着しました。
シェルドンが「皮肉は僕の strong suit じゃない」と弱点を口にしたのも、この言葉が「弱い手札を裏返して見せる」器を備えていたからこそでした。
言葉の出どころを知ると、何気ない一言の奥にカードの絵柄が透けて見えてきます。
まとめ|シェルドンの率直さから学ぶ「得意分野」
be one’s strong suit は、トランプの最も強い組札のイメージから生まれた、「〜の得意分野である」を表す表現です。
肯定形なら「強み」を述べる一言に、否定形 not one’s strong suit なら「苦手だ」を角を立てずに伝える婉曲表現にと、向きによって表情を変えます。とりわけ「下手」と直接言わずに裏返して述べられるところに、この言い回しの使い勝手の良さがあります。
自分の苦手をやわらかく打ち明けたいとき、誰かの強みをさらりと称えたいとき、表現の引き出しに加えてみてください。
皮肉が通じないことを悪びれもせず「得意じゃない」と認めたシェルドンの後ろには、弱点を弱点のまま差し出せる、ある種のまっすぐさがのぞいていた場面でした。


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