海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
「今は出費(手間)がかさむけど、長い目で見ればこっちが得だよ」——目先の損得ではなく、もっと先を見据えて判断を語りたくなる場面はありませんか。
そんなときに役立つ「in the long run」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン8第22話、ドローンを分解しようとするハワードが、保証書を馬鹿にしつつもある例外だけは認めるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「in the long run」の意味とニュアンス
in the long run
意味:長い目で見れば、長期的には、最終的には
long run を直訳すると「長い走り」、つまり長い時間の経過を表します。in the long run で「その長い時間の中で見れば」、すなわち「目先ではなく、時間が経った先の結果に注目すれば」という意味の副詞句になります。
典型的に使われるのは、「今は損・面倒・出費でも、長期的には得・正しい・報われる」という文脈です。短期の負担と長期の利益を天秤にかけて判断を語るとき、この表現が説得力を添えてくれます。対になるのは in the short run / in the short term(短期的には)で、両者を並べると「短期ではこう、長期ではこう」と時間軸を切り替えて論じられます。投資・健康・学習・ビジネスなど、時間をかけて結果が出る話題で特に活躍する、汎用性の高い言い回しです。
【ここがポイント!】
- long run(長い走り)の中で見れば=「長い目で見れば」が意味の核
- 「今は損でも長期的には得」という判断を語るときの定番表現
- in the short run と対にすると、時間軸を切り替えて論じられるのがコツ
『ビッグバン★セオリー』S08E22のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ラージのドローンを修理しようと分解にかかるハワードに、シェルドンが「保証が無効になるのでは」と心配します。工学の修士号を盾に保証書を馬鹿にしてみせたハワードが、すぐに「ただし AppleCare は別」と現実的な但し書きを足すところに見どころがあります。
Howard: Let’s open this baby up.
(さあ、こいつを開けてみよう。)Sheldon: Won’t that void the warranty?
(それって保証が無効になるんじゃないの?)Howard: Sheldon, I have a master’s degree in engineering. I wipe my bottom with warranties. Except for AppleCare. That pays for itself in the long run.
(シェルドン、僕は工学の修士号を持ってるんだ。保証書なんてお尻を拭く紙さ。AppleCareは別だけどね。あれは長い目で見れば元が取れる。)The Big Bang Theory Season8 Episode22(The Graduation Transmission)
シーン解説と心理考察
「保証書なんてお尻を拭く紙だ」と豪語したそばから、「ただし AppleCare は別、あれは長い目で見れば元が取れる」と但し書きを足すハワードの落差が、このシーンの可笑しさを生んでいます。技術者としての見栄と、抜け目ない損得勘定が同居しているのです。
あらゆる保証を不要と切り捨てたい一方で、AppleCare だけは in the long run で得だと認めてしまう——その妙に現実的な金銭感覚が、ハワードらしさをよく表しています。大言壮語を一瞬で台無しにする本音が、彼のキャラクターに愛嬌を添えています。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
フルマラソン(long run=長距離走)を思い浮かべてみてください。スタート直後の100m地点(短期)では、誰が勝つかまるで分かりません。けれど42.195kmという「長い走り(the long run)の中で(in)」見れば、本当の勝者がはっきりします——だから「長い目で見れば」です。
劇中のハワードが、AppleCare という保険を「今は出費でも、ゴール地点では元が取れている」と計算した場面と重ねると、in the long run の発想ごと覚えられます。短距離ではなく長距離で結果を見る、という絵が記憶の助けになります。
例文で覚える「in the long run」
in the long run は、短期の負担と長期の利益を比べて語るときに活躍します。場面を変えながら、3つの例で見てみましょう。
Buying quality shoes is cheaper in the long run.
(質の良い靴を買う方が、長い目で見れば安上がりだ。)
目先は高くても良い物を選ぶ場面です。劇中の「元が取れる」と同じく、初期費用と長期コストを比べる金銭の文脈にぴったりです。
Cutting corners now may cost us more in the long run.
(今手を抜くと、長期的にはかえって高くつくかもしれない。)
目先の節約のリスクを指摘する場面です。cost more in the long run は頻出の組み合わせで、ビジネスの会議でもよく登場します。
A: I don’t know if all this studying is really worth it.
B: Trust me, learning the basics properly will help you in the long run.
(A:こんなに勉強して、本当に意味があるのかな。)
(B:大丈夫、基礎をきちんとやっておけば、長い目で見て必ず役に立つよ。)
遠回りに見える努力を励ます会話です。help you in the long run の形で、「今は実感がなくても先で効いてくる」と背中を押せます。
あわせて覚えたい関連表現
in the long term
(長期的には)
in the long run とほぼ同義の表現です。意味の重なりは大きいものの、in the long term の方がややフォーマルで文書・ビジネス寄り、in the long run はやや口語的で会話に溶け込みやすい、という温度差があります。
over time
(時間をかけて、次第に)
「時間とともに徐々に」という変化の過程に焦点を当てた言い方です。in the long run が「最終的な結果」を指すのに対し、over time は結果に至るまでのゆるやかな推移そのものを表します。
in the end
(結局のところ、最終的に)
「あれこれあった末に最後は」と結末を指す表現です。in the long run が「長い時間軸で見たときの帰結」を含意するのに対し、in the end は時間の長さよりも「最終的にどうなったか」という締めくくりに重きを置きます。
Note|long run と long term ―― 会話とビジネスで揺れる使い分け
in the long run を覚えると、すぐ隣に in the long term という、よく似た表現があることに気づきます。どちらも「長期的には」と訳せて、意味はほとんど重なります。では、何が違うのでしょうか。
鍵になるのは、フォーマル度(かしこまり度)の差です。一般に、日常会話やくだけた場面では in the long run が選ばれやすく、報告書・契約書・ビジネスのプレゼンといった改まった文脈では in the long term が好まれる傾向があります。run という動きのある語が会話の軽やかさになじむのに対し、term(期間)はより硬く、文書向きの落ち着いた響きを持つためだと考えられます。実際、経済学では the long run / the short run という対が基本概念として定着しており、ここでは run が学術用語として使われています。一方、ビジネスの戦略文書では long-term goals(長期目標)のように term が標準です。つまり、同じ「長期」でも、会話では run、書き言葉やビジネスでは term へと自然に振れる——意味ではなくレジスター(場面に応じた言葉づかい)で使い分けられているわけです。劇中のハワードが友人との砕けた会話で in the long run を選んだのも、この口語寄りの響きがその場にしっくり来たからでした。
ほぼ同義の二つを、場面で選び分けられるようになると、表現の解像度がぐっと上がります。
まとめ|ハワードの本音から学ぶ「長い目で見れば」
in the long run は、目先ではなく時間が経った先の結果に注目する、「長い目で見れば・長期的には」を表す表現です。
今は損や手間でも長期的には得になる、という判断を語りたいとき、この一言が説得力を添えてくれます。対になる in the short run と並べれば、「短期ではこう、長期ではこう」と時間軸を切り替えて論じることもできます。投資・健康・学習・ビジネスと、活躍の場面はとても広いはずです。
先を見据えた判断を伝える一言として、表現の引き出しに加えてみてください。
保証書を馬鹿にしつつ AppleCare だけは認めたハワードの後ろに、見栄を張りたい気持ちと、損はしたくない本音とがせめぎ合う、誰にも覚えのある人間らしさがのぞいていました。


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