海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
四六時中まとわりついてくる相手に、「どうにかこの人から解放されたい」と内心ため息をついた経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。
その本音にぴったりの「get someone out of one’s hair」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン9第4話、新しいルームメイトを探すシェルドンに、居候中のスチュアートを押しつけたいバーナデットが、つい本音をのぞかせるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「get someone out of one’s hair」の意味とニュアンス
get someone out of one’s hair
意味:(人)を厄介払いする、(人)から解放される
直訳すると「(誰かを)自分の髪から出す」。髪にまとわりついて離れないものを取り除く、というイメージから、「うるさくつきまとう相手を追い払う」「煩わしい存在から解放される」という意味で使われます。
主語と目的語の関係で見え方が変わるのが特徴です。I need to get the kids out of my hair なら「子どもたちを厄介払いしたい(私が解放されたい)」、get us out of his hair なら「私たちが彼を煩わしさから解放してあげる」と、誰が誰を解放するのかが入れ替わります。
関連して keep ~ out of one’s hair(邪魔させないでおく)、stay out of one’s hair(邪魔をしないでおく)もよく使われます。反対に in one’s hair の形だと「まとわりついて邪魔」という意味になり、out / in の切り替えで「解放」と「邪魔」がきれいに反転します。やや口語的で、軽い愚痴やユーモアを含んで使われることの多い表現です。
【ここがポイント!】
- 「髪に絡みついたものを取り除く」=「煩わしい相手を追い払う」イメージが核
- 誰が解放されるのかは主語と目的語の関係で決まる
- in one’s hair なら逆に「まとわりついて邪魔」、out / in で意味が反転する
『ビッグバン★セオリー』S09E04のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ルームメイト探しに悩むシェルドンが、相談に訪れたハワード夫妻の家。バーナデットは、長く居候しているスチュアートを送り出すチャンスとばかりに彼を推薦しますが、その理由として漏らした本音に、当のスチュアートが即座に反応するところに見どころがあります。
Bernadette: Stuart. He’s been living with us for a while now. I’m sure he’d love to get us out of his hair.
(スチュアートよ。もうずっとうちに住んでるの。私たちがいなくなれば、せいせいするはずよ。)Stuart: Nope, couldn’t be happier.
(いや、今が最高に幸せだよ。)The Big Bang Theory Season9 Episode4(The 2003 Approximation)
シーン解説と心理考察
バーナデットの「he’d love to get us out of his hair」には、ささやかな自己正当化がにじみます。本当は居候のスチュアートを送り出したいのに、それを「彼のほうが私たちから解放されたいはず」と相手の願望にすり替えて言うところに、彼女の如才なさが表れています。
ところがスチュアートはその気遣いの建前をまるごとすり抜け、「いや、今が最高に幸せ」と即答します。厄介払いしたい側の遠回しな本音と、居心地の良さを手放したくない居候の即答が、見事に噛み合わない。get someone out of one’s hair という、相手を立てつつ追い払う便利な言い回しが、当人にあっさり否定される構図が、この短いやり取りの可笑しさを支えています。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
髪に小さな虫やほこりが絡みついて、手で払いのけようとする動作を思い浮かべてみてください。鬱陶しくて、早く取り除いてすっきりしたい——あの感覚が、この表現の出発点です。
get someone out of one’s hair は、その「払いのけたい相手」が人になったもの。劇中でバーナデットが居候を送り出したい本音を、この「髪から出す」イメージで包んだ場面と重ねると、「まとわりつくもの=厄介者」「out=解放」という対応が、動作ごと記憶に残ります。
例文で覚える「get someone out of one’s hair」
get someone out of one’s hair は、「誰かを厄介払いする」場面でも「煩わしさから解放してあげる」場面でも使えます。誰が解放されるのかに注目して、3つの例で見てみましょう。
I gave the kids some tablets just to get them out of my hair for an hour.
(1時間だけ静かにしててほしくて、子どもたちにタブレットを渡したの。)
親が一息つきたいときの、軽い愚痴まじりの使い方です。「厄介払い」といっても深刻な意味ではなく、ユーモアを含んだ日常表現として響きます。
Finishing this report will finally get the boss out of my hair.
(このレポートを片づければ、やっと上司が口うるさく言ってこなくなる。)
職場で、しつこく催促してくる相手からの「解放」を表す使い方です。get ~ out of my hair で、煩わしい干渉が終わる安堵が伝わります。
A: The contractors will be done by Friday.
B: Good, I can’t wait to get them out of my hair.
(A:業者は金曜には終わるそうだよ。)
(B:よかった、早く彼らに引き上げてもらってすっきりしたいよ。)
家に入り込んでいる人たちから解放されたい、という場面です。can’t wait to ~ と組み合わせると、待ち遠しさが強調されます。
あわせて覚えたい関連表現
get rid of
(〜を取り除く、厄介払いする)
「邪魔なものを処分する」という最も一般的な表現です。get someone out of one’s hair が「まとわりつく煩わしさからの解放」に色づいているのに対し、こちらは物にも人にも広く使える中立的な言い方です。
leave someone alone
(〜をそっとしておく、構わないでおく)
「干渉せず放っておく」という意味です。今回の表現が「邪魔者を追い払う(自分が解放される)」方向なのに対し、こちらは相手に「構わないでくれ」と求める方向で使われます。
off one’s back
(〜からの干渉・プレッシャーが消える)
get someone off one’s back で「うるさい相手を黙らせる・干渉をやめさせる」。out of one’s hair と意味がとても近く、どちらも「しつこい相手からの解放」を体の比喩で表しています。
Note|なぜ「髪」が邪魔の比喩になったのか
get someone out of one’s hair を面白くしているのは、「邪魔・煩わしさ」をなぜ「髪」で表すのか、という素朴な疑問です。
もとになっているのは in one’s hair という言い回しで、「髪の中に入り込んでいる」=「まとわりついて鬱陶しい」という比喩だとされています。髪に虫やゴミが絡みつくと、手では取りにくく、ずっと気になって離れない。あの「払っても払ってもまとわりつく不快さ」が、しつこく付きまとう人や問題のイメージにぴったり重なったと言われています。そこから、その厄介な状態を解消することを out of one’s hair(髪から出す=解放する)と表すようになりました。英語には体の部位を使って人間関係の煩わしさを表す表現が多く、off one’s back(背中から離れる)、in one’s face(顔の前でうるさい)、under one’s skin(肌の下に入り込む=神経に障る)などが並びます。髪・背中・顔・肌と、どれも「自分の身体に近すぎて逃げられない距離」を使っているのが共通点です。煩わしさとは、物理的な近さの不快さなのだと、これらの表現は教えてくれます。
バーナデットが居候を「髪から出してあげる」と言ったのも、相手との距離の近さゆえの気詰まりを、やわらかく包む比喩だったと言えます。
体の比喩を知ると、人間関係の機微が言葉にどう刻まれているかが見えてきます。
まとめ|スチュアートの即答から学ぶ「厄介払い」
get someone out of one’s hair は、「髪に絡みついたものを取り除く」イメージから、「煩わしい相手を追い払う・煩わしさから解放される」を表す表現です。
誰が誰を解放するのかは主語と目的語で決まり、in one’s hair なら逆に「まとわりついて邪魔」と意味が反転します。体の近さを使って煩わしさを描く、英語らしい比喩のひとつと言えます。
しつこい干渉から解放されたいとき、誰かをやんわり送り出したいとき、表現の引き出しに加えてみてください。
厄介払いしたい本音を遠回しに包んだバーナデットと、その建前をあっさり外して「今が幸せ」と返したスチュアート。すれ違いの可笑しさが、短いやり取りに凝縮されていた場面でした。


コメント