海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
色紙やサインを頼まれて、「これ、誰の名前で書けばいいんだろう」と一瞬考えた経験はありませんか。宛名をどうするか尋ねる、あの何気ないやり取りにも、英語には決まった言い回しがあります。
そんなときに使える「make it out to」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン10第6話の中盤、ペニーがコミコンのサイン会で初めての客に向き合うシーンから、一緒に見ていきましょう。
「make it out to」の意味とニュアンス
make it out to
意味:(サイン・小切手などの宛名を)〜宛てにする
make it out to は、サインや小切手、領収書といった書類を「誰々宛て」に書き入れるときに使う表現です。中心にある make out が「(書類を)作成する・記入する」を表し、to のあとに受け取る人を置くことで「〜宛てに仕上げる」という意味になります。
サイン会で「お名前は?」と尋ねる定番フレーズが、まさにこの Who do I make it out to? です。it の部分は the check(小切手)や the receipt(領収書)などに置き換わり、場面に応じて柔軟に形を変えます。
決まり文句として根づいているため、気の利いた言い換えを探すよりも、この形のまま覚えてしまうのが近道です。サイン会から事務手続きまで、宛名が関わる場面で幅広く出番があります。
【ここがポイント!】
- 中心は make out(書類を作成・記入する)で、to のあとに宛先の人が来る形
- サインの「お名前は?」と小切手の「宛名は?」を一語でカバーする決まり文句
- it は the check / the receipt などに差し替え可能、場面で変身する一言
『ビッグバン★セオリー』S10E06のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
女優ペニーが、自分の出演作のファンを名乗る客にサインをする場面です。宛名を尋ねるペニーに、客はなんとも反応に困る感想を返してきます。
Penny: Okay. Who do I make it out to?
(オーケー。誰宛てにすればいい?)Guy: Daniel.
(ダニエル)Daniel: I have to ask. Were you trying to be that bad, or are you just a terrible actress?
(聞かずにいられないんだけど。わざとあんなに下手にやったの? それともただの大根役者?)Penny: That did not clear things up.
(それじゃ全然はっきりしないわ)The Big Bang Theory Season10 Episode6(The Fetal Kick Catalyst)
シーン解説と心理考察
ペニーの「Who do I make it out to?」は、サイン会のプロらしい事務的な決まり文句です。気まずさや戸惑いがあっても、この一言があれば手元の作業を淡々と前に進められます。型としてのフレーズが、ぎこちない空気を受け流すクッションになっているのが見て取れます。
一方の客ダニエルは、褒めているのか貶しているのか判然としない感想を続け、ペニーを困惑させます。「それじゃ全然はっきりしない」という返しに、俳優としての自尊心が小さく揺れる様子がにじみます。
宛名を尋ねるという何気ない所作と、答えになっていない酷評との温度差が、このシーンの可笑しみを生んでいます。make it out to が、その淡々としたプロの一言として効いているのが見どころです。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
make out は「書類を書き上げる・作成する」、そこに to(〜へ向けて)が付くと、書いたものに宛先のラベルを貼るイメージになります。
サイン色紙を手に持ち、「これを誰の方向へ差し出せばいい?」と相手を指さす――その動作ごと覚えると、make it out to の語順が自然に入ってきます。ペニーがペンを構え、目の前の客に「Who do I make it out to?」と尋ねるあの一瞬を思い浮かべれば、フレーズと場面がセットで記憶に残ります。色紙を渡す相手の方向を指す手の動きが、to のはたらきそのものです。
例文で覚える「make it out to」
サインから小切手、領収書まで、宛名を指定する場面はさまざまです。フォーマル度の違う3つの例文で見ていきましょう。
Who should I make it out to?
(誰宛てにすればいいですか?)
サインや色紙を求められて宛名を尋ねる場面です。ペニーのセリフとほぼ同じ形で、サイン会で最もよく使われる一言になります。
Please make the check out to “ABC Company.”
(小切手は「ABC社」宛てでお願いします)
支払いで小切手の宛名を指定する場面です。it が the check に置き換わり、ビジネスの場でのフォーマルな使い方を示しています。
A: Could you make it out to my daughter? Her name is Emma.
B: Of course. To Emma — there you go.
(A:娘宛てにしてもらえますか? 名前はエマです)
(B:もちろん。エマへ、と。はい、どうぞ)
本やグッズへのサインを家族のために頼む場面です。宛名を伝える側と書く側のやり取りの中で、フレーズが会話としてどう流れるかがわかります。
あわせて覚えたい関連表現
address (something) to
(〜宛てに送る、宛名を書く)
封筒や手紙の宛先全般に使える表現です。make it out to がサインや小切手など「その場で書き入れる」書類に向くのに対し、address to は郵送物の宛名に向いています。
dedicate (a book) to
(〜に捧げる、献辞を書く)
本などに思いを込めて捧げるニュアンスがあります。make it out to が事務的に宛名を記入するのに対し、dedicate to は感謝や敬意といった気持ちの重みを伴う点が違います。
write out
(略さず書き出す、清書する)
内容をすべて書き切る動作を指します。make it out to は「受取人を指定して仕上げる」ところに焦点があり、to が欠かせない点で使い分けられます。
Note|サイン会と小切手――make it out to が活きる二つの現場
make it out to は、見た目こそひとつの表現ですが、その出番は性格の違う二つの現場にまたがっています。カジュアルな現場とフォーマルな現場、両方を押さえると使い分けの感覚がつかめます。
ひとつはサイン会のようなカジュアルな現場です。欧米のサイン会では宛名を入れて個人向けにする(personalize する)のが一般的で、サインする側がまず「Who should I make it out to?」と尋ねるのが定番の流れになっています。ペニーのセリフは、この習慣をそのまま映したものです。もうひとつは小切手や領収書を扱うフォーマルな現場です。小切手社会では「Make it out to ABC Company」のように宛先を口頭で指定する場面が多く、銀行や経費精算といった事務的なやり取りで耳にします。同じ表現でも、前者は軽やかなファンサービス、後者はきっちりした金銭手続きと、まとう空気がはっきり分かれるのが面白いところです。
この二面性を知っておくと、make it out to を聞いたときに「いま自分はサインの現場にいるのか、書類の現場にいるのか」を素早く読み取れます。場面の格に合わせてトーンを調整できるのが、この一言の強みです。
宛名ひとつで、ファンの喜びも経費の精算も回っていくわけです。
まとめ|ペニーのサイン会から学ぶ「make it out to」
make it out to は、サインや小切手の宛名を「〜宛てに書き入れる」ことを表す、決まり文句として根づいた表現です。make out(作成する)に to(宛先)を足した形を、丸ごと覚えてしまうのが扱いやすさのコツと言えます。
この一語が引き出しにあると、サインを頼むときも、書類の宛名を指定するときも、迷わず一言で伝えられるようになります。カジュアルからフォーマルまで、宛名が関わる場面の心強い味方です。
宛名を尋ねるペニーの淡々としたプロの一言を思い出しながら、サインや書類の場面でこの表現を使ってみたい瞬間を、思い浮かべてみてください。


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