海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
我慢してきた相手に、ついに腹を立てて「言いたいことを言ってやった」――そんな場面が、人生には時々あります。ところが、いざ叱ろうとした相手が予想外の反応で、こちらの勢いが空回り、なんてことも。
そんな「厳しく叱る」「ガツンと文句を言う」という意味の「tell off」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン10第16話の終盤、仕送りを断つと父に宣言したラージが、なぜか喜ばれてしまうシーンから、一緒に見ていきましょう。
「tell off」の意味とニュアンス
tell off
意味:(人を)厳しく叱る、きつく文句を言う、説教する
tell off は、相手の言動に腹を立てて、面と向かってはっきり文句を言う、という意味の句動詞です。単に tell(伝える)よりも強く、off が加わることで「相手に向けて言葉を放つ」ような勢いが生まれます。
使うときは tell someone off の語順が基本で、叱る相手を必ず目的語に取ります。代名詞が目的語のときは tell him off のように tell と off の間に挟むのがルールで、tell off him とは言いません。受け身にすると get told off / be told off で「叱られる」となり、こちらも日常会話で頻繁に登場します。怒りや不満をぶつける、ややくだけた口語表現です。
【ここがポイント!】
- off が「相手に向けて言葉を放つ」勢いを添える
- 必ず tell someone off の形で、叱る相手を目的語に取る一言
- 代名詞は tell him off と間に挟むのがコツ(tell off him は不可)
『ビッグバン★セオリー』S10E16のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
父親からの仕送りに頼りきりだと指摘されたラージは、一念発起して「もう援助は受け取らない」と父に宣言します。ところが父は怒るどころか大喜び。叱るつもりで電話をかけたラージの勢いが、行き場を失っていくところで「tell off」が使われます。
Raj: I will not be accepting your money any more. I’m a man, and I can take care of myself.
(もうパパのお金は受け取らない。僕は一人前の男だ、自分の面倒は自分で見られる。)Dr Koothrapalli: That’s wonderful. I am so proud of you.
(それは素晴らしい。お前を誇りに思うよ。)Raj: Dad, I’m trying to tell you off, and you’re ruining it with your delight and relief.
(パパ、こっちは文句を言おうとしてるのに、その喜びと安堵で台無しにしないでよ。)The Big Bang Theory Season10 Episode16(The Allowance Evaporation)
シーン解説と心理考察
意を決して父に立ち向かったはずのラージが、相手の予想外の反応に拍子抜けしていく様子が会話の温度を変えています。「I’m trying to tell you off」――つまり「今まさに叱ろうとしているのに」という言葉そのものに、空回りする怒りのおかしさが詰まっています。
本来 tell off は、怒りをぶつけて相手をやり込める強い表現です。ところがこの場面では、叱られる側の父が delight(喜び)と relief(安堵)で応じてしまい、ラージの勢いは行き場を失います。叱責が成立しないという滑稽さが、tell off という強い言葉を逆手に取って笑いに変えているところが見どころと言えます。父子の力関係のズレが、この一語ににじむ場面です。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
指を相手にビシッと突きつけて、言葉を「発射する」ような身ぶりを思い浮かべてみてください。tell off の off には、銃を撃つ fire off や、言葉をまくし立てる reel off と同じ、「勢いよく外へ放つ」感覚があります。
劇中のラージも、まさに父に向かって言葉を撃ち込もうとしています。tell(言う)に off(放つ)を重ねて、「相手めがけて文句を発射する」という絵を頭に置いておくと、tell someone off の語順 ―― 標的(someone)を真ん中に据える形 ―― もあわせて覚えやすくなります。
例文で覚える「tell off」
腹を立てて相手にはっきり文句を言う、その場面で tell off は活きてきます。三つの例文で使い方をつかんでいきましょう。
She told him off for showing up two hours late.
(彼女は2時間も遅刻した彼を厳しく叱った。)
遅刻という具体的な理由を for で添える、典型的な使い方です。told him off と、代名詞を tell と off の間に挟む語順がはっきり確認できます。
I got told off by my boss for missing the deadline.
(締め切りを破って、上司に叱られた。)
受け身 get told off で「叱られる」を表す使い方です。by 〜 で「誰に」、for 〜 で「何について」叱られたかを補えます。
A: You look upset. What happened?
B: My neighbor just told me off for parking in front of his house.
(A:不機嫌そうだね。どうしたの?)
(B:家の前に駐車したからって、近所の人に文句を言われたんだ。)
叱られた直後の出来事を説明する会話例です。told me off for 〜 の形で、「〜のことでガミガミ言われた」という状況をそのまま伝えられます。
あわせて覚えたい関連表現
scold
((特に子どもなどを)叱る)
親が子を、教師が生徒を叱るような場面で使う一語動詞です。tell off がややくだけた口語なのに対し、scold はもう少し中立的で、上の立場から注意するニュアンスがあります。
give someone a piece of one’s mind
(言いたいことをはっきり言ってやる、文句を言う)
不満を遠慮なくぶつける、という意味の慣用句です。tell off と意味はかなり近いものの、こちらは「ためこんだ本音を相手に分け与える」という言い回しで、より積もった怒りを吐き出すイメージがあります。
chew someone out
((主にアメリカ英語で)こっぴどく叱る)
tell off よりさらに強く、激しく怒鳴りつけるニュアンスのスラング寄り表現です。tell off が日常的な「文句を言う」なら、chew out は「徹底的にやり込める」に近く、場面を選ぶ点に注意が必要です。
Note|「叱る」を表す英語の強弱グラデーション
「叱る」と一口に言っても、英語にはいくつもの表現があり、それぞれ怒りの強さや場面が異なります。tell off は、この「叱る」の地図の中でどのあたりに位置するのでしょうか。
穏やかなほうから並べてみると、まず scold は「たしなめる」に近く、親が子を注意するような、比較的落ち着いた叱り方を指します。次に来る tell off は、相手に面と向かって不満をぶつける、ややくだけた日常表現です。怒りははっきり出ているものの、まだ会話の範囲に収まっています。さらに強くなると chew out や bawl out があり、これらは「怒鳴りつける」「こっぴどくやり込める」に近づきます。tell off と意味の近い give someone a piece of one’s mind は、強さとしては tell off と同程度ですが、「ためこんだ本音をぶつける」という積年のニュアンスが加わります。劇中のラージが使った I’m trying to tell you off は、まさにこの中間の強さ ―― 怒鳴り散らすほどではないが、はっきり文句を言おうとしている ―― という温度感をよく表しています。だからこそ、父の予想外の喜びによって、その「ちょうどいい怒り」が宙に浮いてしまう滑稽さが際立つわけです。
同じ「叱る」でも、どの語を選ぶかで怒りの温度が変わります。tell off は、その真ん中あたりを担う、使い勝手のいい一語と言えます。
英語の「叱る」を強弱で並べてみると、表現の選び方がぐっとクリアになります。
まとめ|「文句を言ってやる」を一語で
tell off は、tell に「相手へ放つ」感覚の off を重ねた、「厳しく叱る」「ガツンと文句を言う」を表す句動詞です。tell someone off の語順を守り、代名詞は tell him off と間に挟むのがポイントです。
この一言が使えると、ためこんだ不満を相手にはっきり伝える場面を、自然な英語で表せるようになります。受け身の get told off(叱られる)とセットで覚えておくと、叱る側・叱られる側のどちらの状況にも対応できます。
言いたいことを言う場面を思い浮かべながら、会話のレパートリーに加えてみてくださいね。


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