海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
一度踏み出したら、もう元には戻せない——人生の大きな決断を前に、そんな覚悟を固める瞬間があります。その「引き返せなさ」を、英語ではシンプルかつ重みのある一言で言い表します。
そんな「no turning back」を、『CHUCK』シーズン3第18話のラスト、危険な世界へ踏み込む決意を固めるエリーとデヴォンのシーンから、一緒に見ていきましょう。
「no turning back」の意味とニュアンス
no turning back
意味:もう後戻りできない
直訳すると「引き返すこと(turning back)が無い(no)」。turn back(引き返す)を no で打ち消した定型句で、一度踏み出したら元に戻せない、不可逆の決断や状況を指します。
実際には、there is no turning back や no turning back now の形で使われることが多く、重大な選択の場面を引き締める役割を果たします。契約、告白、決断——実行したら取り消せない一歩を踏み出すとき、その重みを一言で言い表せる表現です。ドラマや映画のクライマックスで、登場人物が覚悟を示す決まり文句としても、よく耳にします。
【ここがポイント!】
- 核は「turn back(引き返す)が no(無い)=もう戻れない」というイメージ
- there is no turning back / no turning back now の形でよく使う
- 実行したら取り消せない、不可逆の決断や状況を表すときに使う
『CHUCK』S03E18のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
スパイの世界に巻き込まれた兄チャックを助けるため、これまで一般人だったエリーとデヴォンの夫婦が、護送車を追って自らも危険へ飛び込む決意を固めます。シーズン終盤へ向けた、大きな転換点となるラストシーンです。
Devon: I’m warning you, Ellie, if we do this, there is no turning back. Our lives are changed forever. Are you sure this is what you want?
(言っておくぞ、エリー。これをやったら、もう後戻りはできない。僕らの人生は永遠に変わる。本当にこれでいいんだな?)Ellie: Yes.
(ええ。)Chuck Season3 Episode18(Chuck Versus the Subway)
シーン解説と心理考察
there is no turning back という一言に、二人がこれから踏み出す選択の重さが凝縮されています。引き返せない決断であることを、デヴォンがエリーに——そして自分自身に——確かめる、緊張感のある場面です。
直前まで、デヴォンとエリーはすれ違いコメディを繰り広げていました。ところがこのラストで、二人は初めて「共犯者」として団結します。デヴォンの I’m warning you(言っておくぞ)という前置きと、Are you sure this is what you want?(本当にこれでいいんだな?)という最終確認が、選択の不可逆性を際立たせています。それに対するエリーの Yes というたった一語の返答が、夫婦の覚悟を端的に締めくくり、次の展開への期待を残します。
『CHUCK』流・覚え方のコツ
一本道を進んできて、ふと振り返ると背後の道が消えている——「turn back(引き返す)」という選択肢が no(無い)状態を思い描いてみてください。あるいは、橋を渡り切った瞬間にその橋が崩れ落ちる、そんなイメージでもかまいません。戻る道がない、という絵が浮かべば、意味はまっすぐ入ってきます。
護送車を追い始めたエリーとデヴォンが、「やったらもう戻れない」と確かめ合ったあのラストを思い出してください。普通の夫婦がスパイの世界へ踏み込む「引き返せない一歩」と重ねておくと、no turning back が「もう後戻りできない」を表す一言だと、その重みごと記憶に残ります。
例文で覚える「no turning back」
このフレーズは、取り消せない決断や、不可逆の状況を語る場面で活躍します。ビジネスから人生の節目まで、3つの例文でつかんでみましょう。
Once you sign this contract, there’s no turning back.
(この契約にサインしたら、もう後戻りはできないよ。)
重要な契約の場面で使う、最も基本的な形です。Once 〜(いったん〜したら)と組み合わせると、「その一線を越えたら」という条件がはっきりします。
We’ve come too far — there’s no turning back now.
(ここまで来たんだ、もう後戻りはできない。)
覚悟を固め合うときの使い方で、劇中のシーンに近い形です。now を添えると、「今この瞬間、もう戻れない地点にいる」という臨場感が出ます。
A: Are you really quitting your job to start your own business?
B: I already signed the lease. There’s no turning back.
(A:本当に仕事を辞めて、自分の事業を始めるの?)
(B:もう契約しちゃったよ。後戻りはできない。)
大きな決断を打ち明ける会話です。すでに具体的な一歩を踏み出したことを示してから使うと、「引き返せない」現実味が増します。
あわせて覚えたい関連表現
the point of no return
(後戻りできない地点)
no turning back が「後戻りできない状態」を述べるのに対し、こちらは名詞句で「不可逆の境界点」そのものを指します。We’ve passed the point of no return.(もう引き返せない地点を越えた)のように使います。
cross the Rubicon
(ルビコン川を渡る/決定的な一歩を踏み出す)
古代ローマの故事に由来する、やや文語的で大げさな表現です。no turning back が日常でも気軽に使えるのに対し、こちらは歴史的・重々しい場面が似合います。
burn one’s bridges
(背水の陣を敷く/退路を断つ)
自ら退路を断つ「能動的」な行為を指します。no turning back が「戻る道がない状態」を中立的に述べるのに対し、burn one’s bridges は「自分で戻れなくする」という意志的な行動に焦点があります。
Note|「there is no -ing」が生む不可逆の響き
なぜ no turning back が、これほど重みのある「もう戻れない」を表せるのか。その背景には、英語ならではの構文の働きがあります。
there is no -ing は、「〜することはできない」「〜する余地はない」という、強い断定を生む構文です。There is no denying it.(それは否定しようがない)、There is no stopping her.(彼女を止めることはできない)——いずれも、その動作が「もはや不可能だ」という、ゆるぎない響きを帯びます。no turning back もこの型の一例で、turn back(引き返す)という動作の余地が完全に消えている、という状態をきっぱりと言い切っています。
おもしろいのは、この構文が「不可能」を、単なる事実としてではなく、半ば運命のように語る点です。can’t turn back(引き返せない)と言えば能力の話ですが、there is no turning back と言うと、引き返すという選択肢そのものがこの世から消えてしまったかのような、決定的な手触りが生まれます。だからこそ、人生を変える決断や、物語のクライマックスで覚悟を示す場面に、この言い回しが繰り返し選ばれてきました。the point of no return(後戻りできない地点)のような関連表現とともに、英語には「不可逆」を語る語彙が豊かに揃っています。
この構文の力を知ると、デヴォンの there is no turning back がより立体的に見えてきます。普通の夫婦が危険な世界へ踏み出すその一歩を、「引き返す道はもうない」と言い切る——その断定が、ラストシーンの緊張感を支えています。
まとめ|引き返せない決断を表す一言
no turning back は、turn back(引き返す)を no で打ち消した、「もう後戻りできない」を表す表現でした。一度踏み出したら元に戻せない、不可逆の決断や状況を言い表す、というのがこの一言の核心です。
the point of no return や burn one’s bridges と並べて引き出しに入れておくと、「決断」をめぐる言い回しに表情がつきます。there is no turning back の形で、覚悟を示す場面にそのまま差し込める、力のある表現です。
すれ違っていた夫婦が初めて団結し、危険な世界へ踏み出すことを確かめ合ったあのラストは、この一言の重みが、エリーのたった一語の Yes とともに静かに響いた瞬間でした。
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