海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
つらい出来事や苦い記憶を、いつまでも引きずってしまう——そんな経験は誰にでもあるものです。そんな相手に「もう過去のことにして、前を向こう」と声をかけたくなる場面があります。
そんなときにぴったりの「put it behind you」を、『CHUCK』シーズン3第18話の中盤、不安を抱えるチャックを公園でサラが励ますシーンから、一緒に見ていきましょう。
「put it behind you」の意味とニュアンス
put it behind you
意味:過去のことにする/水に流して前に進む
直訳すると「それをあなたの後ろに置く」。つらい出来事や苦い記憶を、自分の背後に追いやって先へ進む、という空間のイメージがもとになっています。英語では過去を「後ろ(behind)」、未来を「前(ahead)」に置いて捉える感覚があり、この表現はその発想がよく表れた言い回しです。
ポイントは、「忘れる(forget)」とは少し違うところです。出来事そのものは覚えていても、それに対する気持ちに区切りをつけて前へ進む——日本語の「水に流す」に近いニュアンスがあります。put の後ろには it だけでなく、the past や everything など過去の出来事を表す語が入り、put X behind you の語順で使われます。
【ここがポイント!】
- 核は「つらい出来事を背後に置いて、振り返らず前へ進む」というイメージ
- 「忘れる」ではなく「気持ちに区切りをつける」点が、日本語の「水に流す」に近い
- 落ち込む相手を励ますときに「もう過去のことにしよう」と促す一言
『CHUCK』S03E18のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
晴れた公園でのピクニック。死んだはずの宿敵ショウの幻に怯え、精神の不調にも苦しむチャックを、恋人のサラが落ち着かせようとします。彼の不安を頭から否定するのではなく、一つずつ事実を確かめながら、過去を手放すよう優しく促す場面です。
Sarah: Look, your father is safe. And Shaw? Shaw is dead. I know what you went through, but you really have to start putting it behind you.
(ねえ、お父さんは無事よ。それにショウは? ショウは死んだの。あなたが大変な目に遭ったのはわかってる。でも、そろそろ過去のことにして前を向かなきゃ。)Chuck: What if I can’t?
(もしそれができなかったら?)Chuck Season3 Episode18(Chuck Versus the Subway)
シーン解説と心理考察
you really have to start putting it behind you という促し方に、サラのチャックへの寄り添い方が表れています。突き放すのではなく、不安の一つひとつを「お父さんは無事」「ショウは死んだ」と確かめてから前を向かせようとする、その手順そのものに彼女の優しさがにじむ場面です。
サラは作中、感情を表に出さない有能なスパイとして描かれますが、チャックに対しては素の気づかいを見せるキャラクターです。一方のチャックは「もしできなかったら?」と返し、まだ過去を消化しきれていない不安をのぞかせます。この直後、彼は街でショウの幻——実は本物——を目にすることになり、「過去のことにして」という台詞が皮肉な伏線として効いてくる場面でもあります。
『CHUCK』流・覚え方のコツ
重い荷物を背中の後ろに置いて、振り返らずに前へ歩き出す自分を思い浮かべてみてください。その「後ろに置いて先へ進む」動作が put it behind you です。置く対象が荷物ではなく「つらい記憶」だと考えると、意味がすっと入ってきます。
ベンチでうつむくチャックの背後にサラが立ち、過去を「後ろ」へ追いやろうとしたあの場面を、記憶を背後に置くイメージと重ねて覚えておくと、put it behind you が「過去のことにして前へ進む」を表す一言だと体に残ります。
例文で覚える「put it behind you」
このフレーズは、つらい経験を乗り越えて前へ進もうとする場面で活躍します。励ましにも、自分の決意にも使える幅を、3つの例文でつかんでみましょう。
You made a mistake, but it’s time to put it behind you and move on.
(失敗はしたけど、もう過去のことにして前に進む時だよ。)
落ち込む相手を励ます、最も基本的な使い方です。move on(前に進む)とセットにすると、「区切りをつけて先へ」という流れがはっきりします。
The company wants to put the scandal behind it and rebuild trust.
(会社はそのスキャンダルを過去のものにして、信頼を取り戻したいと考えている。)
主語が組織でも使えます。it が会社を指し、過去の出来事(scandal)を背後に置く、という構図はそのままです。
A: I still feel terrible about how that argument ended.
B: I know, but let’s try to put it behind us now.
(A:あの口論の終わり方、まだ引きずってるんだ。)
(B:わかるよ。でも、もう水に流して前を向こう。)
わだかまりを抱える相手に寄り添いながら促す会話です。us にすると「二人で一緒に前へ」というニュアンスが出ます。
あわせて覚えたい関連表現
move on
(前に進む/気持ちを切り替える)
put it behind you が「過去を後ろに置く」動作なら、move on はその後に「先へ進む」動きです。二つを並べて使うことも多く、セットで覚えると流れがつかめます。
get over it
(乗り越える/立ち直る)
より口語的で、ときに「いつまでも引きずるな」と突き放すニュアンスが出ます。put it behind you のほうが、相手に寄り添う度合いが高い表現です。
let bygones be bygones
(過ぎたことは過ぎたこととする)
主に対人関係のわだかまり——けんかや恨み——を水に流すときの慣用句です。put it behind you は個人のトラウマ全般に広く使える点が違います。
Note|英語が過去を「後ろ」に置く理由
なぜ「後ろに置く(put behind)」が「過去のことにする」を意味するのか。その背景には、時間を空間に見立てる英語の発想があります。
英語では、過去を behind(後ろ)、未来を ahead(前)に置いて捉える感覚が深く根づいています。look back(過去を振り返る)、move forward(前進する=先へ進む)、what’s behind us(私たちの後ろにあること=過ぎたこと)——いずれも、時間の流れを前後の空間として表す言い回しです。put it behind you もその一つで、つらい出来事を文字どおり背後の空間に置き去りにする、というイメージで成り立っています。
おもしろいのは、この表現が「忘れる」を意味しないことです。背後に置いた物は、振り返れば見えます。つまり出来事は記憶に残っていても、それと向き合う位置を「前」から「後ろ」へ移す——気持ちの上で区切りをつける、という動作を表しているのです。だからこそ、日本語の「水に流す」に近い手触りを持ちながらも、完全な忘却(forget)とは一線を画した、前向きで現実的な励ましの言葉になっています。
この発想を知ると、サラの putting it behind you がより立体的に見えてきます。チャックが抱える過去を消し去れとは言わず、ただ向き合う位置を変えて前を向こう——そんな気づかいが、この一言には込められています。
まとめ|過去に区切りをつけて前を向く一言
put it behind you は、つらい出来事を自分の背後に置いて先へ進む動作から生まれた、「過去のことにする/水に流して前に進む」を表す表現でした。出来事そのものを忘れるのではなく、それと向き合う気持ちに区切りをつける、というのがこの一言の核心です。
move on や get over it と並べて引き出しに入れておくと、落ち込む相手への声のかけ方に表情がつきます。寄り添いながら前を向かせたいときに、そっと差し出せる表現です。
ショウの幻に怯えるチャックに、サラが事実を一つずつ確かめながら「過去のことにして」と促したあの場面は、この表現が持つ優しさが静かに伝わってくる瞬間でした。
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