海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
気が進まない用事や面倒な決断を、「まあ、後でいいか」とつい先送りにしてしまうこと、ありますよね。
今回はそんな場面にぴったりの「put off」を、〜を延期する、先延ばしにする、という意味の表現として取り上げます。『フレンズ』シーズン2第4話、恋人との夜を前に緊張するロスに、チャンドラーが「延期したら?」と声をかけるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「put off」の意味とニュアンス
put off
意味:(予定・行動・決断などを)後回しにする、延期する
put off は、予定や行動、決断などを「今ではなく、後の時点へずらす」ことを表す句動詞です。目の前にあるやるべきことを、少し先の時間へ押しやるイメージだと考えると分かりやすいでしょう。
このフレーズで押さえておきたいのが語順です。put off + 名詞、put + 目的語 + off のどちらの語順も使えますが、目的語が it や them といった代名詞のときは、必ず put it off のように put と off の間に挟まなければなりません。put off it とは言えないのです。会議、締切、面倒な用事、気の重い決断など、「今やりたくないから後にする」あらゆる場面で活躍する、日常の超頻出表現です。
【ここがポイント!】
- 「put off」の核は、やるべきことを後の時間へ押しやるイメージ
- 会議も締切も面倒な決断も、「先延ばし」ならこれ一つでカバーできる
- 代名詞のときは put it off の語順が絶対、put off it とは言えないのがコツ
『フレンズ』S02E04のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ジュリーとの初めての夜を前に緊張するロスを、チャンドラーが半ば面白がって「失敗したら挽回が難しいぞ」と不安を煽ります。動揺したロスに「じゃあ延期したら?」と持ちかける、put off が二度くり返される場面です。
Chandler: It is your first time with her and, you know, if the first time doesn’t go well, well, then, that’s pretty darn hard to recover from.
(彼女との初めての夜だろ。ほら、最初がうまくいかなかったら、そこから挽回するのはかなり難しいぞ)Ross: Okay, now I’m nervous.
(ああ、緊張してきた)Chandler: Well, maybe you should put it off.
(じゃあ、延期したらどうだ)Ross: No, I don’t want to put it off. I… God, I spent last year being so unbelievably miserable. And now… I’m actually happy.
(いや、延期したくない。去年はずっと惨めだったんだ。それが今は…本当に幸せなんだよ)Friends Season2 Episode4(The One with Phoebe’s Husband)
シーン解説と心理考察
友人をからかう茶目っ気と、どこか本気の助言が入り混じったチャンドラーの「put it off」が、会話の温度を変えています。不安を煽っておいて「じゃあ延期すれば?」と持ちかけるあたりに、彼らしい軽口が表れています。
対するロスの「I don’t want to put it off」は、一転して切実です。去年の惨めさを思い返し、ようやくつかみかけた幸せを今この手から逃したくない、という気持ちがこもっています。同じ put it off というフレーズが、片や軽い茶化し、片や必死の拒絶という、二人のまるで違う温度で使われている。一つの句動詞が、チャンドラーとロスの対照をくっきりと映し出す場面です。
『フレンズ』流・覚え方のコツ
put off は、put(置く)と off(離れて)を分けて動作で覚えると定着します。目の前にある「やるべきこと」を、手を伸ばして今の時間軸からポイッと先の方へ押しやる——机の上の書類を「後でいいや」と端に寄せる、あの動きです。
このシーンのチャンドラーは、初夜という予定を「put it off(先に押しやれば?)」とロスの前から遠ざけようとし、ロスは「押しやりたくない=今この幸せを逃したくない」とそれを拒みます。put と off の間に it を挟む語順も、「押しやる対象(it)を手でつかんで運ぶ」イメージと結びつけると、put off it という誤った語順に迷い込まずに済みます。
例文で覚える「put off」
面倒な予定を延期するとき、気の重いタスクを後回しにするとき——put off は「先送り」を軽やかに言い表す表現です。3つの場面で使い方を確かめてみましょう。
We had to put off the meeting until next week.
(会議を来週まで延期しなければならなかった)
予定の変更を伝える場面です。put off + 名詞の基本形で、ビジネスでもっとも使う形の一つです。
I’ve been putting off writing this email all day.
(このメールを書くのを一日中先延ばしにしている)
気の重いタスクを後回しにしていると自嘲する場面です。進行形にすると「ずっと先延ばしにし続けている」というニュアンスが出ます。
A: Have you called the dentist yet?
B: No… I keep putting it off. I’ll do it tomorrow.
(A:歯医者にはもう電話した?)
(B:いや…つい先延ばしにしちゃってて。明日やるよ)
面倒事を後回しにしていることを打ち明ける会話です。put it off の語順(代名詞を挟む)が自然に出る、覚えておきたいパターンです。
あわせて覚えたい関連表現
postpone
(延期する)
postpone は1語のフォーマルな動詞で、ビジネス文書や公式アナウンス向きです。put off が日常会話でくだけて使う口語表現なのに対し、こちらは書き言葉でも収まりがよく、意味はほぼ同じです。
delay
(遅らせる、遅延する)
delay は「(意図せず)遅れる」場合も含む語です。put off が「(自分の意思で)後回しにする」というニュアンスを基本とするのに対し、delay は電車の遅延のような不可抗力の遅れにも使えます。
procrastinate
((すべきことを)先延ばしにする、ぐずぐずする)
procrastinate は「やるべきことを怠けて先送りする」という否定的な含みが強い、やや硬めの語です。put off が中立で正当な延期にも使えるのに対し、こちらは自分の悪癖を語るような場面で映えます。
Note|put off / postpone / procrastinate の温度差
「先延ばしにする」と訳せる英語はいくつもありますが、同じ意味でも手触りがずいぶん違います。今回の put off を軸に、混同しやすい postpone と procrastinate との温度差を整理してみましょう。
まず put off は、三つの中でもっとも中立的でくだけた口語です。会議も締切も面倒な決断も、感情の色をつけずに「後にする」と言える、日常の万能選手です。次に postpone は、同じ「延期」でもぐっとフォーマルになります。イベントの延期を公式に告知する、フライトが postpone される、といった改まった場面で使われ、ビジネスメールでは put off より postpone の方が収まります。そして procrastinate は、ほかの二つとは毛色が違います。「やるべきことを怠けてぐずぐず先送りする」という否定的な含みを帯びていて、自分のだらしなさを自嘲したり、他人の悪癖を指摘したりする文脈で登場します。put off が単なる時間の移動を指すのに対し、procrastinate には「本当はやらなきゃいけないのに」という後ろめたさがついてまわります。
同じ「先延ばし」でも、相手が誰で、どんな場面かによって選ぶ語が変わります。友達との会話なら put off、仕事の延期連絡なら postpone、自分の悪い癖を語るなら procrastinate——この温度差を押さえておくと、put off の「軽くて中立」という立ち位置が、より鮮明に見えてきます。
同じ意味の言葉が三つあるのは、それぞれに担う温度があるからなのですね。
まとめ|チャンドラーの軽口から学ぶ「先延ばし」の英語
put off は、予定や決断を「今から後へ押しやる」ことを表す、日常の超頻出句動詞です。中立でくだけた口語なので、会議の延期から面倒な用事の先送りまで、幅広く使えます。代名詞のときは put it off の語順になる、というルールも一緒に押さえておきたいところです。
このフレーズを知っていると、「延期する」「後回しにする」を軽やかに言えるようになり、会話のテンポがぐっと自然になります。よりフォーマルな postpone、怠けの含みを持つ procrastinate との温度差も一緒に持っておけば、場面に応じた語の選び分けができます。
後でいいか、と何かを端に寄せるあの動き。会話のレパートリーに加えてみてくださいね。


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