海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
つらい一日や気まずい集まりを前に、「とにかく、これを最後まで乗り切ろう」と自分に言い聞かせた経験はありませんか。逃げ出したい気持ちをこらえて踏みとどまる、あの感覚です。
そんなときにぴったりの「make it through」を、『フレンズ』シーズン2第24話の後半、かつて逃げ出した式の会場で、レイチェルが今度は踏みとどまろうと決意するシーンから、一緒に見ていきましょう。
「make it through」の意味とニュアンス
make it through
意味:(困難を)乗り切る、最後までやり遂げる
つらい状況や試練、長い時間を、途中で投げ出さずに終わりまで持ちこたえることを表します。through が「始まりから終わりまで通過する」感覚を担い、単に「終える」よりも「耐え抜いてたどり着く」という含みが強くなります。
この表現には、しばしば「なんとか」「かろうじて」という切迫感が伴います。余裕でこなしたのではなく、踏ん張ってようやく切り抜けた。その苦労の跡が言葉ににじみます。目的語には、試練・つらい期間・気まずい出来事などが入ります。
似た get through とほぼ同じ意味ですが、make it through のほうが「持ちこたえて達成した」という手応えが前面に出ます。困難を乗り越えた実感を語りたいときに選ばれる形です。
【ここがポイント!】
- 核は「始まりから終わりまで、途中で投げ出さず通過しきる」イメージ
- 「なんとか」「かろうじて」という切迫感を帯びやすい一言
- get through より「持ちこたえて達成した」手応えが強い、と押さえるのがコツ
『フレンズ』S02E24のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
レイチェルにとって、この結婚式の会場は特別な場所です。かつて彼女は、この同じ花婿との自分の結婚式から逃げ出し、そこから自立の人生を始めました。物語の出発点となったその場所で、今度は逃げずに踏みとどまろうと、静かに決意を告げます。
Barry: Come on, let’s just go out to the parking lot and talk.
(なあ、駐車場に出て話そうよ)Rachel: No. I’m not going anywhere.
(いいえ。どこにも行かない)Barry: And once again, she is out of here! Okay, who had 9:45?
(さあ皆さん、またしても彼女の退場です! 9時45分に賭けてた人は?)Rachel: You know what, Bar? I’m not gonna leave. I promised myself I would make it through at least one of your weddings. All I really wanted was to make it through this evening with a little bit of grace and dignity.
(ねえバリー、私は帰らないわよ。あなたの結婚式を少なくとも一回は最後まで見届けるって、自分に誓ったの。私が本当に望んでいたのは、ほんの少しの品位と尊厳を保って、今夜を乗り切ることだけだった)Friends Season2 Episode24(The One With Barry and Mindy’s Wedding)
シーン解説と心理考察
make it through が二度繰り返されるのが印象的です。一度目は「あなたの結婚式を最後まで見届ける」という過去の自分への誓いとして、二度目は「品位を保って今夜を乗り切る」という現在の願いとして。同じ言葉が、過去と現在の二つの決意を束ねています。
逃げることで始まった物語のヒロインが、今度は逃げないことを選ぶ。この対比が、たった一つの句動詞に重なっているのが見どころです。かつて駐車場ではなく式場から走り去った彼女が、今は「どこにも行かない」と言い切る。その変化が会話の温度を静かに変えています。
品位と尊厳を保って乗り切りたかった、という言葉には、思うようにいかなかった一夜への実感がにじみます。それでも会場を出ずに踏みとどまろうとする姿勢そのものが、シーズンを通じた彼女の成長を物語っています。
『フレンズ』流・覚え方のコツ
make it through は、長く暗いトンネルに入り、出口の光だけを見つめて足を止めずに歩き続ける場面で覚えると定着します。through は、まさにこのトンネルを「入口から出口まで貫通する」動きです。途中で座り込みたくなっても、とにかく反対側に抜け出す。
レイチェルが、思うようにいかない一夜に耐えながら、それでも会場を出ずに夜の終わりまで踏みとどまろうとする姿は、トンネルを歩き抜く人の姿そのものです。逃げ出せば楽になるのに、出口まで歩き通すと決めた。その「出口まで抜ける」身体の感覚ごと思い浮かべておくと、make it through が持つ「耐えて通過しきる」ニュアンスが自然に身につきます。
例文で覚える「make it through」
make it through は、つらい状況を耐え抜いたときや、これから乗り切ろうとするときに使われます。振り返りから励ましまで、3つの場面で見ていきましょう。
I don’t know how I made it through that week, but I did.
(あの一週間をどうやって乗り切ったのか分からないけど、なんとかやり遂げた)
つらい時期を振り返る場面です。過去形にすることで、耐え抜いたという達成感がこもります。
She made it through the surgery and is recovering well.
(彼女は手術を乗り切り、順調に回復している)
無事を報告する場面です。試練を「切り抜けた」ことを、静かに、しかし確かに伝えられます。
A: This shift feels like it’s never going to end.
B: Just a few more hours. We can make it through this together.
(A:このシフト、永遠に終わらない気がする)
(B:あと数時間だよ。二人でなら乗り切れる)
仲間を励ます会話です。これから耐え抜こうと呼びかける、前向きな使い方になります。
あわせて覚えたい関連表現
get through
(切り抜ける、終える)
make it through とほぼ同義で、より一般的です。make it through が「なんとか持ちこたえて達成した」という手応えを強く出すのに対し、get through は中立的に「済ませる」場面にも使えます。
pull through
(乗り越えて回復する)
特に病気や生死に関わる危機から「持ち直す」場面に使われます。make it through が困難全般をカバーするのに対し、pull through は回復に力点があります。
hang in there
(踏ん張る、持ちこたえる)
「今この瞬間を耐えて」という励ましの掛け声です。make it through が始点から終点まで「通過しきる」達成に焦点を置くのとは、視点が異なります。
Note|「逃げない」を選ぶ物語としての make it through
make it through は「耐えて最後まで通過する」表現で、しばしば人生の試練を語る言葉として選ばれます。この一句が、一人の人物の成長をまるごと映し出す瞬間があります。
レイチェルの物語は、逃げることから始まりました。花婿を祭壇に残して式場から走り去り、そこから自分の足で立つ人生が動き出します。逃走が自立の出発点だったわけです。ところがこの場面では、同じ花婿の結婚式で、彼女は「どこにも行かない」「今夜を最後まで乗り切りたかった」と、逃げないことを選びます。かつて逃げた場所で、今度は踏みとどまる。make it through という言葉が、この反転をそっと担っています。この表現には「途中で投げ出さない」という含みがあり、逃走から始まった物語のヒロインがそれを口にすること自体に、静かな重みが生まれます。使う言葉が、その人がどこから来てどこへ向かうのかを映し出す。物語の書き手が、成長の節目にどんな動詞を選ばせるかには、意味があります。
だからこのシーンの make it through は、ただ「乗り切る」以上のことを語っています。逃げられたのに逃げなかった。その選択の重さが、二度繰り返される一句に宿っています。
言葉の選び方に、人が歩いてきた道のりが表れます。
まとめ|逃げた場所で踏みとどまった夜
make it through は、つらい状況や試練を、途中で投げ出さずに最後まで乗り切る表現です。through が「始まりから終わりまでの通過」を担い、「なんとか耐え抜いた」という手応えを運びます。get through より達成感が強く、pull through より広い困難に使えます。
この表現を使いこなせるようになると、耐え抜いた経験を、実感のこもった言葉で語れるようになります。ただ「終えた」のではなく「持ちこたえてたどり着いた」。その一歩の重みを伝えられる一言です。
逃げることで物語を始めた人が、逃げた場所で今度は踏みとどまると誓う。シーズンの締めくくりにふさわしい、成長の刻まれた場面でした。表現の引き出しに加えてみてください。


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