海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
本当は別の理由があるのに、それを言い出せなくて、もっと聞こえのいい建前を持ち出してしまう。そんな場面に覚えはありませんか。人は本音を隠すとき、しばしば誰かへの気遣いを口実にします。
そんなときに登場する「feel bad for」を、『フレンズ』シーズン3第1話の中盤、チャンドラーの誘いに不満をこぼすジョーイのシーンから、一緒に見ていきましょう。
「feel bad for」の意味とニュアンス
feel bad for
意味:(人を)気の毒に思う、かわいそうに思う
困難な状況にある人に心を痛める、という同情を表す表現です。feel bad は「気がとがめる・残念に思う」、そこに for someone が付くことで、その心の痛みが特定の相手に向かうことを示します。
前置詞に注意が必要です。feel bad for someone なら「その人を気の毒に思う」という同情ですが、feel bad about something になると「そのことが申し訳ない・悔やまれる」という自責の意味に変わります。for か about かで、話し手の立ち位置が同情と謝罪に分かれます。
よく似た feel for someone との違いも押さえておきましょう。bad が入るぶん、feel bad for は「かわいそう」と一段上から見る同情に寄ります。
【ここがポイント!】
- 核は「相手の状況に心を痛める」という同情の気持ち
- for なら相手への同情、about なら自分の申し訳なさ、前置詞で意味が分かれる
- feel for someone より「かわいそう」寄り、bad ひとつで温度が変わる
『フレンズ』S03E01のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
チャンドラーがアイスホッケーの試合に、いつものジョーイではなく恋人ジャニスを誘おうとします。それを知ったジョーイは面白くありません。けれど本当はジャニスが苦手だとは言い出せず、別の理由を持ち出します。
Chandler: Alright, listen, I got three tickets to the Rangers tonight. What do you say?
(なあ、今夜レンジャーズのチケットが3枚あるんだ。どうだ?)Joey: I say I am there. Oh. Is Ross going too?
(行くに決まってる。あれ、ロスも行くのか?)Chandler: No. Janice.
(いや。ジャニスだ)Joey: Janice… ‘cause I just feel bad for Ross. You know, we always go together.
(ジャニス……いや、ただロスがちょっと気の毒でさ。ほら、俺たちいつも一緒に行くだろ)Friends Season3 Episode1(The One With the Princess Leia Fantasy)
シーン解説と心理考察
ジョーイの feel bad for Ross は、本音を覆い隠すための建前として機能しています。本当はジャニスと出かけることが不満なのに、それを直接ぶつけられず、ロスへの同情にすり替えているのです。
この言い換えには、ジョーイなりの気の使い方が表れています。「お前の恋人が嫌いだ」と正面から言えば角が立つ。だから、その場にいないロスを持ち出して、自分の不満を穏当な形に着せ替えているわけです。
けれど、その取り繕いはあっさり見抜かれます。直後にチャンドラーが「ジャニスのことが気に入らないのか?」と踏み込むことで、ジョーイの建前は崩れていきます。同情を口実にした本音が、じわじわと表に出てくる場面です。
『フレンズ』流・覚え方のコツ
feel bad for は、feel bad(心が痛い)という感情に、for(〜のために)という矢印が付いた形でイメージすると覚えやすくなります。その矢印が誰に向いているかで、同情の相手が決まります。
ジョーイの feel bad for Ross は、心の痛みの矢印がロスに向いている状態。ここで大切なのが、よく似た feel for someone との違いです。feel「for」someone は隣に立って痛みを分かち合う共感、feel「bad」for someone は「かわいそう」と一段下に見る同情に寄ります。
bad が入るだけで、同情の高さが変わる。この対比をシーンとセットで覚えておくと、二つの表現が混ざりません。矢印の向きと、bad の有無。この二点で整理してみてください。
例文で覚える「feel bad for」
同情を伝えるとき、逆に同情を断るとき。温度の異なる3つの使い方を見ていきましょう。
I feel bad for her — she’s been through so much this year.
(彼女が気の毒でね。今年は本当に大変だったから)
苦労している相手への同情を口にする場面です。for のあとに人を置く最も基本的な形で、相手を思って心が痛む気持ちがまっすぐ伝わります。
Don’t feel bad for me. I actually enjoy working alone.
(私のこと気の毒がらないで。一人で働くの、けっこう好きなんだから)
向けられた同情を軽く断る一言です。否定形にすることで、「かわいそうがらなくていい」という気持ちをやわらかく示せます。
A: He failed the exam again. B: Aw, I feel bad for him. He really studied this time.
(A:彼また試験落ちたって。B:ああ、気の毒に。今回は本当に勉強してたのに)
努力が報われなかった人への同情を交わす会話です。but や理由を添えることで、単なる憐れみではない、事情を汲んだ同情になります。
あわせて覚えたい関連表現
feel for someone
(同情する、気持ちが痛いほどわかる)
bad が入らないぶん、見下ろす同情ではなく、隣に立って痛みを分かち合う温かさを持ちます。feel bad for が「かわいそう」寄りなのに対し、feel for は「共感」寄り。同じ同情でも立ち位置が違います。
feel sorry for someone
(気の毒に思う、かわいそうに思う)
feel bad for とほぼ同義ですが、feel sorry for のほうがやや強く「哀れみ」に傾くことがあります。相手を下に見た響きになる場合もあり、feel bad for のほうが中立的で使いやすい表現です。
my heart goes out to someone
(心を寄せる、深く同情する)
災害や訃報など、重い状況で使われる劇的な表現です。feel bad for が日常の小さな気の毒にも使えるのに対し、こちらを軽い場面で使うと大げさに響きます。
Note|feel bad for と feel for、bad ひとつの重み
feel for someone と feel bad for someone。この二つは、bad があるかないかだけの違いに見えて、同情の質が思いのほか変わります。
feel for someone は、相手の隣に立ち、その痛みを一緒に引き受けるような共感です。上下の関係はなく、対等な位置から心を寄せる響きがあります。一方の feel bad for someone は、「かわいそうに」という気持ちが前に出ます。相手の不運を一段上から眺めるような、憐れみに近い同情に傾くことがあるのです。
もちろん、どちらが正しいという話ではありません。ただ、相手や場面によって、受け取られ方が変わることは知っておいて損がありません。たとえば苦境にある友人に feel bad for you と言うと、状況によっては「上から見られた」と感じさせてしまうこともある。そんなときは feel for you のほうが、そっと寄り添う響きになります。
劇中でジョーイが feel bad for Ross と言ったのは、その場にいないロスを「気の毒な立場の人」として持ち出す言い方でした。同情の対象を一段下に置くこの表現は、建前として使うにはちょうどよかったのかもしれません。bad ひとつが、同情の距離をそっと動かしている。そんな繊細さを感じ取れると、二つの表現を場面で選び分けられるようになります。
まとめ|同情に忍ばせた本音
feel bad for は、困難な状況にある人を気の毒に思う気持ちを伝える表現です。for という前置詞が、その心の痛みの向かう先を相手に定めています。
この一言を使えるようになると、相手への同情を素直に言葉にできます。ただし、feel for someone との温度差や、for と about の使い分けを意識すると、より的確に気持ちを届けられます。
同情を口実に本音を隠したジョーイのように、この表現は建前にもなれば、心からの気遣いにもなります。どちらの意味で使うのか。その選択ごと、表現の引き出しに加えてみてください。


コメント