海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
刑事ドラマで、追い詰められたはずの相手が「そんな罪、立証できっこないさ」と不敵に言い返す。あの決め台詞のような場面、印象に残りませんか。
そんな啖呵にぴったりの「make it stick」を、『フレンズ』シーズン5第16話の後半、警官のなりすましがバレたフィービーが本物の警官ゲイリーに堂々と渡り合うシーンから、一緒に見ていきましょう。
「make it stick」の意味とニュアンス
make it stick
意味:(罪や主張などを)成立させる、通用させる、定着させる
make it stick は、stick(くっついて離れない)という言葉が核になっています。何かを「くっつけて、簡単には剥がれないようにする」というイメージから、二つの方向に意味が広がっています。
一つは法律の文脈で、「容疑や罪をくっつけて離さない=立証して有罪にする」という意味です。もう一つは日常的な文脈で、「決めたことや変化を根づかせる=定着させる」という意味です。make the change stick(変化を定着させる)のように使います。
追い詰められた場面での「立証はできない」という啖呵から、「新しい習慣を根づかせる」という前向きな場面まで、幅広くカバーする表現と言えます。
【ここがポイント!】
- 核は stick(くっついて離れない)の「貼りつける」イメージ
- 法律なら「罪を立証する」、日常なら「定着させる」に変化
- ドラマの啖呵でおなじみの、ちょっとキマる一言
『フレンズ』S05E16のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
拾った警官バッジで「警官ごっこ」を楽しんでいたフィービー。バッジに残った指紋から彼女を突き止めた本物の警官ゲイリーが、ついに部屋まで訪ねてきます。ところが彼女は謝るどころか、まるで法廷ドラマのような啖呵を切って堂々と渡り合います。ここで make it stick が炸裂します。
Phoebe: Okay, you can arrest me, fine, but you’ll never make it stick, and you know it.
(いいわ、逮捕すれば。でも立証なんてできっこない、わかってるでしょ)Gary: Yeah, but I kind of don’t have a choice. It’s my job. I mean, you understand, right?
(ああ、でもこっちに選択肢はないんだよ。仕事なんでね。わかるだろ?)Phoebe: Yeah, as long as you understand that I’m going to call my lawyer and once he puts you on the stand he’s going to make you look like a fool, like a fool.
(ええ、そっちこそわかっておいて。弁護士を呼んで、あなたを証言台に立たせて、笑いものにしてやるから。笑いものによ)Gary: Mm-hmm. I don’t like looking foolish. You know what? Maybe, uh, I don’t arrest you today. Maybe I came by and you weren’t here.
(ふむ、笑いものは嫌だな。よし、こうしよう。今日は逮捕しないでおく。来てみたら君は留守だった、ってことでね)Friends Season5 Episode16(The One with the Cop)
シーン解説と心理考察
フィービーの怖いもの知らずな一面と、それがコメディへと転がるおかしさがにじむ場面です。素人であるはずの彼女が、刑事ドラマ仕込みの法律用語をさらりと使いこなし、逮捕しに来た本物の警官相手にまったく怯まない。そのギャップが笑いを生んでいます。
「you’ll never make it stick」という言い回しは、英語圏の視聴者にとって「悪党が刑事に言い放つ決め台詞」としておなじみのものです。それをフィービーが真顔で口にするからこそ、場面全体に独特のユーモアが漂います。
さらに「弁護士があなたを笑いものにする」と畳みかけられたゲイリーが、「笑いものは嫌だ」とあっさり逮捕を取り下げてしまう展開も見逃せません。この掛け合いが、二人の関係が動き出すきっかけとして効いていると言えます。
『フレンズ』流・覚え方のコツ
容疑や罪を、付箋(sticky note)に見立ててみてください。相手にペタッと貼りつけて、うまく貼りついて剥がれなければ make it stick(立証成立)、ツルッと剥がれ落ちれば it doesn’t stick(通用しない)です。
このシーンでは、ゲイリーが「なりすまし罪」という付箋をフィービーに貼りつけようとします。ところがフィービーは「バッジを拾っただけ」と、その付箋をぺりっとはたき落としてしまう。付箋が貼りつくか剥がれるか、という映像で覚えれば、「立証する」意味も「定着させる」意味も、同じ一つのイメージからつかめます。
例文で覚える「make it stick」
法律の「立証する」から、日常の「定着させる」まで、幅広い場面で使われます。3つの例で見ていきましょう。
The police arrested him, but they couldn’t make the charges stick.
(警察は彼を逮捕したが、容疑を立証できなかった)
劇中と同じ法律の文脈です。逮捕はしたものの、罪を成立させられなかった、という「立証」の意味の代表例です。
If you want the new habit to stick, start small.
(新しい習慣を定着させたいなら、小さく始めよう)
習慣化のコツを助言する使い方です。ここでは自動詞の stick(定着する)として、「根づく」という前向きな意味で使われています。
A: They tried to pin the mistake on me.
B: But it didn’t stick, right?
A: Right. Everyone knew it wasn’t my fault.
(A:みんな、そのミスを僕のせいにしようとしたんだ)
(B:でも、通用しなかったんでしょ?)
(A:うん。僕のせいじゃないってみんな分かってたから)
濡れ衣が晴れた経緯を話す会話です。make を省いた it didn’t stick(通用しなかった)の形も、日常でよく登場します。
あわせて覚えたい関連表現
hold up (in court)
((法廷で)通用する、持ちこたえる)
証拠や主張が「検証に耐える」ことを表す表現です。make it stick が「能動的に立証して成立させる」なのに対し、hold up は主張そのものが主語になり、「持ちこたえる」という受け身寄りのイメージになります。
pin something on someone
((罪を)〜になすりつける)
罪を、ときに不当に、相手に着せることを指す表現です。make it stick は「着せた罪を実際に成立させる」段階を表すので、pin the crime on him → but can you make it stick? のように続けて使える関係です。
get something to stick
(〜を定着させる、根づかせる)
make it stick とほぼ同じ意味ですが、make it stick の方が「意図的に成立させる」という能動性が強く出ます。get … to stick は「うまく根づくように仕向ける」という、やや柔らかいニュアンスです。
Note|刑事ドラマが広めた決め台詞 ―― You’ll never make it stick
make it stick という表現には、多くの人が「どこかで聞いたことがある」と感じる不思議な既視感があります。その正体は、刑事ドラマや法廷ドラマの決め台詞です。
You’ll never make it stick(立証なんてできっこない)という言い回しは、英語圏の犯罪ドラマで繰り返し使われてきた定番のセリフです。追い詰められた容疑者や悪党が、刑事に向かって不敵に言い放つ捨て台詞として、視聴者の耳にすっかり馴染んでいます。証拠が不十分だと踏んだ相手が「逮捕はできても、有罪にはできないさ」と余裕を見せる、あの緊迫した一瞬を象徴する言葉です。だからこそ、この表現には「法律の専門用語」という以上に、「ドラマでよく聞くキメ台詞」という文化的な手触りがあります。ネイティブがこのセリフを聞けば、一発で刑事ドラマの一場面が頭に浮かぶほどです。
フィービーがこの決め台詞をさらりと口にしたからこそ、あの場面は笑えます。警官ごっこがバレた素人が、まるでベテランの悪党のように啖呵を切る。その落差が、ドラマの文脈を知る視聴者には一段と可笑しく映るのです。
キメ台詞の背景を知ると、フィービーの度胸のおかしさがより味わえます。
まとめ|フィービーの啖呵から学ぶこと
make it stick は stick(くっついて離れない)を核に、法律では「罪を立証する」、日常では「習慣や変化を定着させる」という二つの意味を持つ表現です。刑事ドラマの決め台詞としても広く知られ、独特のキマる響きを備えています。
容疑や主張が「通用するかどうか」を語りたいときにも、決めごとを「根づかせたい」と言いたいときにも使える、懐の広い一言です。
ドラマで悪役がキメる、あの「立証できっこないさ」の響きごと、あなたの表現の引き出しに加えてみてくださいね。


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