海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
先に知ってしまった話について同僚から「どうなってるの?」と聞かれ、答えたいけれど答えられずに言葉を探した経験はありませんか。
そんなときに使える「be not at liberty to say」を、犯罪捜査ドラマ『メンタリスト』シーズン1第14話の序盤、被害者の夫から名前を出せと詰め寄られるチョウの場面から、一緒に見ていきましょう。
「be not at liberty to say」の意味とニュアンス
be not at liberty to say
意味:お答えできません、申し上げる立場にありません
liberty は「自由」と訳されますが、何の制約もない状態というより、制度や許可のもとで認められた自由を指す語です。be at liberty to do で「〜してよいとされている」となり、その否定形がこの表現になります。
言いたくないのではなく、言うことを許されていない。断る理由を、話し手個人の気持ちではなく、職務や契約や規則といった外側の枠に置くのが、この言い方の特徴です。そのため、拒んでいるのに角が立たず、相手も食い下がりにくくなります。
改まった響きを持つため、記者会見、守秘義務のある案件、進行中の交渉や捜査、公表前の人事といった場面になじみます。友人同士の雑談で使うと大げさに聞こえるので、そこは I’d rather not say あたりに置き換えるのが自然です。say のほかに discuss、disclose、share なども同じ形で続けられ、何を許されていないのかを細かく言い分けられます。
【ここがポイント!】
- 核にあるのは「扉を開ける鍵を、自分は渡されていない」という立ち位置
- 断る理由を気持ちではなく規則に置くので、拒みながら角が立たない一言
- 改まった場面向け。くだけた場では I’d rather not say に置き換えるのがコツ
『メンタリスト』S01E14のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
殺された女性の夫キースが、遺品を受け取りにCBIを訪れています。州司法長官は友人だと切り出す彼の相手を務めるのが、チョウでした。話が妻の愛人に及んだところで、キースは相手の名前を出せと迫ります。押しの強さと、それを受け止める側の淡々とした構えが、短いやり取りに凝縮された場面です。
Keith: Do you have a name? I mean, is he a suspect?
(名前は分かっているのか? つまり、そいつは容疑者なのか?)Cho: We have a name. He’s not a suspect.
(名前は把握しています。容疑者ではありません)Keith: Who is he?
(誰なんだ)Cho: I’m not at liberty to say.
(お答えできません)Keith: I want his name.
(名前を言え)Cho: You can’t have it.
(お教えできません)Keith: Are you sure, Agent Cho? Because I can make one phone call, and your career is toast.
(本気か、チョウ捜査官? 私は電話一本で、君のキャリアを終わらせられるんだぞ)Cho: That’s impressive. The best I can get with one call is a pizza.
(それはすごい。私が電話一本で手に入れられるのは、せいぜいピザです)The Mentalist Season1 Episode14 (Crimson Casanova)
シーン解説と心理考察
キースの迫り方は、質問から命令へ、命令から脅しへと段階を上げていきます。対するチョウの返しは、どれも短い。しかも、拒む理由を一度も自分の側に置いていません。not at liberty to say は「私が言いたくない」ではなく「私には言う権限がない」ですから、いくら圧をかけても押し込む先がないという空気があります。
続く You can’t have it. も同じ構えです。差し出せる立場にないと述べるだけで、相手を責めもしなければ、謝りもしません。相手の勢いだけが空回りしていく様子が表れています。
締めくくりの返しが、この場面の見どころです。電話一本でキャリアを終わらせられるという脅しに対し、電話一本でピザが届くという話をぶつける。脅しの土俵そのものを取り替えてしまう受け流し方に、チョウの淡々とした強さがにじむ場面です。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
liberty は、通行証や鍵のような語だと考えると輪郭がはっきりします。持っていれば扉を通れるし、なければ扉の前で足を止めるしかありません。
not at liberty to say と言う人は、その扉の前に立って「私はこの鍵を持っていません」と示していることになります。大切なのは、扉を閉めているのが本人ではないという点です。鍵を渡していないのは組織や規則の側で、話し手自身も同じように扉のこちら側に立っています。
劇中でキースがいくら押しても動かないのは、チョウが強情だからではなく、そこに鍵がないからです。押す力の問題ではなく鍵の所在の問題なのだと示す。それが、この一言の役目になります。
例文で覚える「be not at liberty to say」
断りの一言としてそのまま口に出せるので、形ごと覚えておくと使いやすい表現です。3つの場面で見てみましょう。
I’m not at liberty to discuss the details of the contract.
(契約の詳細については、お話しできる立場にありません)
取引先から進行中の案件について尋ねられた場面です。discuss を使うと、一言も触れられないという線引きがはっきり伝わります。
She said she wasn’t at liberty to say who had recommended him.
(誰が彼を推薦したのかは言えない、と彼女は言った)
社内の選考の経緯を、間接的に伝える場面です。過去形の伝聞にすると報告書や記事の文体にもなじみ、誰が線を引いたのかも明確になります。
A: So, is the merger actually happening?
B: Sorry, I’m not at liberty to say. You’ll hear it from the top soon enough.
(A:それで、合併の話は本当に進んでるんですか?)
(B:すみません、私からはお伝えできません。じきに上から話があるはずです)
同僚に事情を聞かれ、自分の一存では話せない場面です。次の窓口を示す一文を添えると、突き放した印象になりません。
あわせて覚えたい関連表現
I can’t comment on that.
(それについてはコメントできません)
記者会見などで定番の断り方です。理由を示さずに打ち切る響きがあり、許されていないという背景まで伝える not at liberty to say とは、相手に残る納得感が変わります。
That’s confidential.
(それは機密事項です)
情報そのものに性質を貼る言い方です。話し手の立場を説明する not at liberty to say に対し、こちらは線を引く対象が情報の側にあります。
I’d rather not say.
(できれば言いたくありません)
理由を話し手の気持ちに置く言い方です。私的な話題では自然に響きますが、職務上の断りとしては弱く、押し返される余地が残ります。
Note|断る理由を、自分ではなく立場に置く
断りの言葉を選ぶとき、英語には「理由をどこに置くか」という観点があります。not at liberty to say は、その置き場所が話し手の外にある典型例です。
同じ発想の言い回しは、ほかにもいくつもあります。I’m not authorized to share that.(共有する権限がありません)、Company policy doesn’t allow me to discuss it.(社の方針で話せないことになっています)、That’s above my pay grade.(私の職責を超えています)。どれも理由が「私の気持ち」から離れており、断っているのは人ではなく仕組みだという形をとります。
日本語にも近い作法があります。「私の一存では決めかねます」「社内規定によりお答えいたしかねます」といった言い方は、まさに同じ構えです。個人の判断ではないと示すことで、相手の不満が目の前の人へ向かうのを避ける。断りの場面で言葉が長くなりがちなのも、この距離の取り方と無縁ではありません。
違いがあるとすれば、英語のほうが権限の所在をはっきり名指しする点でしょう。authorized、policy、pay grade。どれも、誰が決められるのかを具体的に示す語です。
liberty もその一つで、与えられていれば動ける、与えられていなければ動けないという許可の感覚を運んでいます。だからこの表現は、拒絶でありながら対立にはなりません。
断り方の巧さは、押し返す力ではなく、理由の置き方に表れます。
まとめ|「言えない」を角を立てずに伝える一言
be not at liberty to say は、言いたくないのではなく言うことを許されていない、という立ち位置を示す表現でした。断る理由を自分の気持ちから外し、規則や職務の側へ預けるところに、この言い方の働きがあります。
守秘義務のある案件、公表前の情報、進行中の交渉。答えられない場面は誰にでも訪れますが、黙り込むのと、この一言を返すのとでは、相手に残るものが変わります。線を引いたのは自分ではないと伝われば、相手も引き下がりやすくなります。
押しても動かないと分かる断り方があれば、やり取りは短く済む。チョウの受け答えは、その手本のような一言です。


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