海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
相手の説明が明らかに事実と食い違っているのに、当人があまりに平然としているせいで、こちらのほうが自信をなくしてしまう。そんな経験はありませんか。動揺していないことが、かえって不自然さを際立たせる瞬間があります。
その状態を言い当てる「lie through one’s teeth」を、犯罪捜査ドラマ『メンタリスト』シーズン1第11話の序盤、上司の執務室からジェーンが引き下がった直後の場面から、一緒に見ていきましょう。
「lie through one’s teeth」の意味とニュアンス
lie through one’s teeth
意味:見え透いた嘘を、平然とつく
直訳すると「歯を通して嘘をつく」。口を大きく開けないまま、閉じた歯の隙間から言葉だけが出てくる、という絵が中心にあります。表情も声の調子も動かないのに、内容だけが事実からずれている。その落ち着きぶりごと言い表すのがこの表現です。
単に事実と違うことを言う、というだけでは足りません。本人がそれを承知していて、それでも顔色ひとつ変えずに言い切る。そこにこの言い回しの重心があります。話し手の側には強い非難や呆れがこもるため、第三者について語る場面で使われることが多く、本人に面と向かって使うとかなりきつい言葉になります。
形は進行形の be lying through one’s teeth と、過去形の lied through one’s teeth が中心です。one’s のところは主語に合わせて his / her / your と変わります。about 〜 を続ければ、何について嘘をついたのかを示せます。
【ここがポイント!】
- 核にあるのは、閉じた歯の隙間から言葉だけが出てくる絵
- 平然としていることが、非難の強さを生んでいる一言
- 第三者を評する場面向きで、本人に向けるとかなりきつく響きます
『メンタリスト』S01E11のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
CBIの上司ミネリの執務室。判決の出た事件を蒸し返すことはできない、この件から手を引け。正論を突きつけられたジェーンは、驚くほどあっさり引き下がります。法は法だ、復讐心を規則より優先はしない、受け入れる。同席していたリズボンの前でそう言い残し、礼を述べて部屋を出ていきました。ところがその従順さは、あまりに出来すぎていました。ドアが閉まったあとの短いやり取りが、この場面の答え合わせになります。
Jane: No. The law’s the law. My desire for revenge doesn’t outweigh the rules. I have to accept that.
(いいえ。法は法です。私の復讐心が規則に勝ることはない。受け入れますよ)Minelli: Glad you understand.
(分かってくれて助かる)Jane: Thanks for your time.
(お時間をありがとうございました)Minelli: He’s lying through his teeth, isn’t he?
(あいつ、しれっと嘘をついてるな?)Lisbon: Yes.
(ええ)The Mentalist Season1 Episode11 (Red John’s Friends)
シーン解説と心理考察
ジェーンの言葉には、上司が求めた要素がすべてそろっています。規則の承認、感情の抑制、結論の受け入れ。三つとも短く、迷いなく並べられていきます。正しすぎる答えが、正しすぎるがゆえに嘘に見える。その反転がこの場面の仕掛けです。
面白いのは、ミネリの確認が疑問形になっている点です。断定ではなく、リズボンに同意を求める形を取っている。上司として命令は出したものの、それが守られるとは最初から思っていないという諦めがにじみます。対するリズボンの返事は一語だけ。長い説明を必要としないほど、二人にとって自明のことだったわけです。
嘘を見抜くことを仕事にしている男が、今度は自分が見抜かれる側に回っている。しかも見抜いた二人は、それを止めようとしません。三人それぞれの立場が、この短い応酬に重なっています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
嘘をつくとき、人は口を大きく開けません。歯を食いしばったまま、あるいは作り笑いで歯を見せたまま、言葉だけが隙間から押し出されてくる。through one’s teeth は、その閉じた口元をそのまま名指しした言い方です。
執務室を出ていくジェーンの表情を思い出すと、この絵がぴったり重なります。神妙にうなずき、礼を言い、揺らぎがひとつもない。その揺らぎのなさこそが、残された二人に「嘘だ」と確信させました。堂々としていればいるほど、歯の隙間から出てきた言葉に見えてくる。動揺のなさが証拠になるという逆転ごと覚えると、記憶に残ります。
例文で覚える「lie through one’s teeth」
第三者について語る場面で最も自然に使える表現です。強さの違う3つの場面で見ていきましょう。
He was lying through his teeth, and everyone in the room knew it.
(彼は白々しく嘘をついていて、その場の全員が気づいていました)
会議や集まりでの出来事を後から人に話す場面です。進行形と「みんな気づいていた」を組み合わせると、白々しさの度合いが伝わります。
The witness lied through her teeth on the stand.
(その証人は、証言台で堂々と嘘をつきました)
裁判やニュースの内容を説明する場面です。くだけた口語ではありますが、事実の記述として報道寄りの話題でも使えます。
A: He said he’d never seen the file before.
B: He was lying through his teeth. I sent it to him last week.
(A:そのファイルは見たこともないって言ってたよ)
(B:真っ赤な嘘だね。先週こっちから送ったのに。)
同僚同士で事実関係を確かめ合う場面です。根拠を後ろに足すと、決めつけではなく確信として響きます。
あわせて覚えたい関連表現
tell a white lie
(罪のない嘘をつく)
相手を傷つけないための小さな嘘を指します。同じ嘘でも、lie through one’s teeth の非難の強さとは正反対の位置にあります。
bend the truth
(事実をゆがめる、都合よく言い換える)
完全な作り話ではなく、事実を自分に有利な形に曲げる程度の言い方です。悪質さが一段軽いため、責める調子もやわらぎます。
be full of it
(でたらめを言っている)
かなりくだけた口語で、相手の話全体を退ける言い方です。特定の嘘ではなく話し手そのものへの評価になる点が、lie through one’s teeth との違いになります。
Note|言いにくさが意味を運ぶ
lie through one’s teeth を声に出してみると、途中で口の中がつかえるような感覚があります。through と teeth に含まれる th の音が近い距離で重なり、舌先を歯にあてる動作が短い間に二度も求められるためです。
この言いにくさは、表現の意味と無関係ではありません。舌を歯に押しつけたまま音を出す。まさに歯の隙間から言葉を絞り出す動作を、話し手自身が実演することになります。意味と発音が同じ身体の動きを共有している、珍しい組み合わせです。
比べてみたいのが、日本語の「歯に衣着せぬ」です。こちらも歯を使った言い回しですが、意味は正反対で、遠慮なく率直に物を言うことを指します。日本語は歯を覆うものの有無で率直さを測り、英語は歯を閉じたまま出てくる言葉の不自然さで嘘を測る。同じ身体の部位から、まったく違う比喩が育っているのが分かります。
そう考えると、この表現を覚えるときに最も確実なのは、意味を暗記することではなく、実際に口に出してみることかもしれません。つかえる感覚が、そのまま意味の記憶になります。
言葉が身体の動きを覚えている、という一例です。
まとめ|白々しい嘘を、英語で言い当てる
lie through one’s teeth は、事実と違うと分かっていながら顔色ひとつ変えずに言い切る、その態度ごと非難する表現です。平然としていることが、かえって嘘の証拠になる。そこにこの言い回しの核心があります。
第三者について語る場面で最も自然に働くので、ドラマやニュースを英語で追うときの読解力に直結します。誰かがこの一言を口にしたら、その場の全員がすでに真相を共有している合図になります。読み取れる表現の一つとして、引き出しに加えてみてください。
物わかりよく引き下がった男の背中を見送りながら、残された二人が短く確認し合う。嘘だと分かっていて、それでも止めない。その静けさごと記憶に残る場面でした。


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