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自転車を盗まれて交番に行くと、「被害届は出しますか」と確認される場面があります。届けを出すかどうかで、そこから先の扱いが変わっていく。そんな分かれ道が、事件にはついて回ります。
その分かれ道を一言で表す「press charges」を、犯罪捜査ドラマ『メンタリスト』シーズン1第14話の序盤、殺された女性の元アシスタントをリズボンが自宅に訪ねる場面から、一緒に見ていきましょう。
「press charges」の意味とニュアンス
press charges
意味:刑事告訴する、被害届を出して正式に立件してもらう
press は「押す」ですが、ただ触れて押すのではなく、止まりかけたものを前へ押し進める働きを持つ動詞です。charge(s) は刑事上の容疑や告発を指します。二つが合わさって、被害を受けた側が「事を荒立てずに済ませる」道を選ばず、正式な手続きへ進めることを表します。
動く主体は、あくまで被害者や訴える側です。対象を示すときは press charges against someone の形をとり、劇中でも against you と続いています。逆の動きは drop the charges(告訴を取り下げる)で、押した手を引くという絵になります。この二つは対で覚えておくと、場面が読みやすくなります。
なお、最終的に罪に問うかどうかを決めるのは捜査機関や検察の側なので、press charges は「処罰を望むと表明し、手続きに乗せてもらう」という位置づけの言い方になります。深刻な話題に使われる語ですが、ニュースの話をするような日常会話にもよく出てきます。
【ここがポイント!】
- 核にあるのは「止まっている手続きを、押して前へ進める」という動き
- 動かすのは被害を受けた側で、against someone を添えると相手がはっきりする一言
- 反対の動き drop the charges とセットで覚えるのが、場面を読み取るコツ
『メンタリスト』S01E14のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
リゾートホテルで女性が殺され、CBIが捜査に入ります。夫への聴取から浮かんだのが、先月解雇されたばかりのアシスタント、ナタリーの存在でした。宝石の窃盗が理由だといいます。リズボンが彼女の自宅を訪ね、当たり障りのない質問から入ったあとで、話の角度を変えるのがこの一言です。
Lisbon: How long did you work for Claire Wolcott?
(クレア・ウォルコットのところでは、どのくらい働いていたの?)Natalie: About a year… till she turned psycho.
(1年くらいかな。あの人がおかしくなるまでは)Lisbon: She claimed that you stole jewelry from her.
(彼女は、あなたが宝石を盗んだと主張していたわ)Natalie: Yeah. She was wrong. I didn’t steal anything.
(ええ。でも間違い。私は何も盗んでない)Lisbon: Claire pressed charges against you. How’d that make you feel?
(クレアはあなたを刑事告訴した。どんな気持ちだった?)Natalie: Excuse me, are you trying to say that I killed her?
(ちょっと待って。私が彼女を殺したって言いたいわけ?)The Mentalist Season1 Episode14 (Crimson Casanova)
シーン解説と心理考察
リズボンの質問は、二段構えになっています。まず she claimed(主張していた)と伝え、ナタリーに否定させる。主張は言葉にすぎないので、彼女は難なく打ち消せます。ところが次に置かれるのが pressed charges で、こちらは書類と手続きをともなう事実です。言った言わないの段階から、記録の残る段階へと、会話の足場が移されています。
続けて放たれる How’d that make you feel? が、この場面の核心と言えます。事実確認ではなく感情を尋ねる問いで、動機の有無を探っていることが透けて見えます。ナタリーが「私が殺したって言いたいの?」と切り返すのは、その意図を正確に受け取ったからにほかなりません。
穏やかな聞き込みが、たった一語の入れ替えで尋問に変わる。その転換点に press charges が置かれているところに、この場面の緊張が表れています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
press を思い浮かべるときは、スタンプを紙に押しつける手を想像すると分かりやすくなります。インクをつけた判を、体重をかけてぐっと押し込む。押した瞬間から、そこに書かれていたことは個人の言い分ではなく、記録になります。
告訴とは、まさにその一押しです。不満を口にするだけなら判は要りません。手続きに乗せると決めた人だけが、判を押しにいきます。
劇中でも、リズボンが「主張していた」から「告訴した」へ言葉を切り替えた瞬間に、ナタリーの構えが変わります。押されていない紙と、押された紙の違い。その重みの差ごと覚えておくと、drop the charges という反対の動きも自然に頭に入ります。
例文で覚える「press charges」
告訴する側の判断を表す言い方なので、するのかしないのかを述べる形でよく現れます。3つの場面で見てみましょう。
The store decided not to press charges, so he was let off with a warning.
(店側は告訴しないことに決めたので、彼は警告だけで済んだ)
万引きの顛末を人に説明する場面です。decide not to press charges は、被害を受けた側が事を大きくしない選択をしたときの定番の形になります。
The company pressed charges after the customer data was leaked.
(顧客データの流出を受けて、その会社は刑事告訴に踏み切った)
社内の不正について、報告や記事で触れる場面です。主語が組織になっても形は変わらず、踏み切ったという判断のニュアンスがそのまま残ります。
A: Are you going to press charges against him?
B: I’d rather settle this quietly, if I can.
(A:彼を告訴するつもりですか?)
(B:できれば、穏便に済ませたいと思っています)
トラブルに巻き込まれた知人と、今後の対応を話す場面です。against him まで言うと相手がはっきりし、Bのように別の道を示す返し方も自然に続きます。
あわせて覚えたい関連表現
drop the charges
(告訴を取り下げる)
press charges と正反対の動きを表します。劇中でもナタリーが「窃盗の告訴を取り下げてくれると思った」と口にしており、同じエピソードの中で押す側と引く側の両方が登場します。
file a complaint
(苦情を申し立てる、届け出をする)
警察に限らず、会社や行政の窓口にも使える幅の広い言い方です。刑事手続きに限定される press charges より射程が広く、深刻さは一段軽くなります。
take someone to court
(〜を裁判に訴える)
主に民事で、損害の回復を求めるときに使われます。処罰を求める press charges とは進む道筋そのものが違うため、どちらを選ぶかで話し手の狙いが読み取れます。
Note|press が担う「押し通す」の感覚
press charges の press を「押す」とだけ覚えていると、少しもったいないことになります。この動詞は、物理的に押す動作を超えて、止まりかけたものを前へ動かす場面で広く働くからです。
たとえば press for an answer は、はぐらかす相手に答えを迫ること。press ahead with a plan は、反対や障害があっても計画を押し進めること。press one’s case は、自分の言い分を通そうと押していくこと。press someone into service なら、乗り気でない人を無理に引っ張り出すことを指します。並べてみると共通しているのは、押される側に何らかの抵抗があるという点です。すんなり進むものに press は使いません。
報道機関を指す the press も、印刷機が紙にインクを押しつける動作から来た語だと説明されます。押しつける、押し進める、押し通す。同じ動きが、道具の名前から社会的な行為にまで広がっていったことになります。
この目で press charges を見直すと、なぜこの動詞が選ばれたのかが見えてきます。告訴とは、放っておけば動かない手続きを、被害者が自分の意思で前へ押し出すことにほかなりません。抵抗を押し切る動詞だからこそ、この組み合わせがしっくり収まっているわけです。
押す手の重さまで含めて、この一言なのだと分かります。
まとめ|「訴えるか、水に流すか」の分かれ道
press charges は、被害を受けた側が正式な手続きへ進むと決めることを表す表現でした。押されるまで動かない紙と、押されたあとに動き出す紙。その差を作るのが、この一押しです。
against someone を添えれば相手がはっきりし、decide not to press charges と言えば「今回は見送る」という判断まで伝わります。drop the charges と並べて覚えておくと、ニュースや海外ドラマで事件の続報を追うときにも、話がどちらへ動いたのかを取り違えずに済みます。
穏やかな会話が、たった一語で立場の確認に変わる。ナタリーの切り返しの速さは、その一語の重さを本人がいちばん分かっていたことを示す反応と読み取れます。


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