海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
戻ってこなかった過去の相手のことを、今でもふと思い出してしまうということはありませんか。手に入らなかったからこそ、記憶の中で少しずつ理想化されていく、そんな感覚です。
そんな相手を指すthe one that got awayを、『BONES』シーズン12第8話の中盤、父を亡くしたばかりのブレナンのもとを、かつての恋人サリーが訪ねてくる場面から、一緒に見ていきましょう。
「the one that got away」の意味とニュアンス
the one that got away
意味:逃した相手、手に入れられなかった相手
もともとは釣りで「逃がしてしまった大物の魚」を指す言い回しから転じ、恋愛や人間関係で「手に入れられなかった、忘れがたい相手」を表す慣用句として定着しました。手放してしまった後悔と、理想化された記憶が入り混じったニュアンスを持つ表現です。
過去の恋人を振り返るときや、逃したチャンスを惜しむときによく使われ、手に入らなかったからこそ美化されてしまう対象について語る際の定番のフレーズでもあります。恋愛以外の文脈にも応用が利き、仕事のオファーやキャリアの選択について語るときにも使われます。
got awayという過去形が、「あのとき逃してしまった」という一度きりの出来事を強調している点も、このフレーズの特徴です。
【ここがポイント!】
- 釣りで「逃した大物」を指す言い回しから生まれた表現
- 手放した後悔と、理想化された記憶が入り混じるニュアンス
- 恋愛以外にも、逃したチャンス全般に応用できる
『BONES』S12E08のシーンで見てみよう
「逃した相手」というニュアンスを押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。父マックスを亡くし、悲しみの中にいるブレナンのもとを、かつての恋人サリーが訪ねてきます。二人はかつて「戻る」と約束しながら、サリーが戻らなかった過去について語り合います。
Brennan: You said you’d come back.
(あなた、戻ってくると言ったわよね。)Sully: I know.
(わかってる。)Brennan: So why didn’t you?
(それなのに、どうして戻らなかったの?)Sully: Because somewhere deep down, I knew where this was going. It’s probably why I left in the first place. I mean, if I’d have come back, I’d have had to deal with the fact that you still wouldn’t choose me. So, by staying away, I got to hold on to the fantasy that I was your one that got away.
(心のどこかで、この先どうなるかわかっていたからなんだ。だからこそ、そもそも最初に去ったんだと思う。もし戻っていたら、君が結局は自分を選ばないという事実と向き合わなきゃいけなかった。だから離れたままでいることで、自分が君の「逃した相手」だという幻想にしがみついていられたんだ。)Brennan: That’s an extremely flawed strategy.
(それは、極めて欠陥のある戦略ね。)BONES Season12 Episode8 (The Grief and the Girl)
シーン解説と心理考察
サリーは、戻れば「ブレナンが結局は自分を選ばない」という現実と向き合わなければならなかったため、あえて距離を置くことで「逃した相手」という都合の良い幻想にしがみついていたと打ち明けます。理屈としては筋が通っているようでいて、その実、自分から選択を避け続けてきた弱さも同時ににじみます。
ブレナンはそれを「極めて欠陥のある戦略」と分析的に評しますが、その率直な物言いの奥には、過去の関係への複雑な思いも垣間見えます。悲しみの渦中にあるブレナンが、過去の恋人との対話を通じて自分の現在地を静かに見つめ直している様子が、抑えたトーンの会話の中に表れています。
『BONES』流・覚え方のコツ
釣り糸の先で一瞬だけ姿を見せ、そのまま水面に消えていく大きな魚を思い浮かべてみましょう。got awayが「逃げ切ってしまった」動きを表し、the oneが「あの一匹(一人)」という特別感を担っています。手元にあれば大きさを正確に測れたはずなのに、逃げてしまったからこそ記憶の中でどんどん美化されていく、そんな感覚がthe one that got awayの核心です。
劇中では、サリーが「戻らなかったからこそ幻想を保てた」と語る場面で使われていました。この「手放したことで理想化されてしまう」感覚ごと覚えておくと、記憶に定着しやすくなります。
例文で覚える「the one that got away」
the one that got awayは、過去の相手や逃したチャンスを振り返る場面で使われる表現です。異なる文脈での3つの使い方を見ていきましょう。
He still talks about his college girlfriend as the one that got away.
(彼は今でも大学時代の彼女を「逃した相手」として語ります。)
劇中と同じ、過去の恋人への使い方です。年月が経っても心に残り続ける相手を語る場面で自然に使えます。
That job offer felt like the one that got away.
(あの仕事のオファーは、逃したチャンスのように感じられました。)
恋愛以外の対象、キャリアの選択を振り返るビジネス寄りの場面です。人以外にも幅広く使える表現であることが伝わります。
A: Do you ever think about your ex from high school?
B: Sometimes. She was kind of the one that got away, honestly.
(A:高校時代の元カノのこと、たまに考えたりする?)
(B:たまにね。正直、彼女は逃した相手って感じだったよ。)
友人同士の恋バナを想定した往復会話です。honestlyを添えることで、素直な本音のニュアンスが加わります。
あわせて覚えたい関連表現
what could have been
(あり得たかもしれない未来)
the one that got awayが特定の相手に焦点を当てるのに対し、what could have beenはより抽象的に、実現しなかった可能性全般を指します。
missed opportunity
(逃した機会)
the one that got awayが人物、主に恋愛対象に使われることが多いのに対し、missed opportunityは仕事やチャンスなど、より一般的な対象に使われます。
unrequited love
(報われない恋)
unrequited loveが相手に想いが届かなかった恋そのものを指すのに対し、the one that got awayは手に入れられなかった相手への未練という、時間が経ってからの回想的なニュアンスを持ちます。
Note|釣りの慣用句が恋愛表現に転じた成り立ち
the one that got awayは、もともと釣りの世界で使われていた言い回しです。糸を垂れていたところに大きな魚がかかったものの、取り込む寸前で逃げられてしまった、という体験を語るときの決まり文句として使われてきました。
釣り人の間では、逃した魚ほど大きく記憶に残り、語るたびに少しずつ大きくなっていくという、ある種のあるあるが古くから知られています。実際には手元になかった、確かめようのない大きさだからこそ、記憶の中で理想化されていくわけです。この「逃げてしまったからこそ大きく見える」という心理が、そのまま恋愛や人間関係の比喩として転用され、the one that got awayが「手に入らなかった、忘れがたい相手」を指す表現へと定着していきました。
同じく釣りに由来する英語表現に、fish story(誇張された話、大げさな武勇伝)があります。こちらも「釣った魚の話は大げさになりがち」という体験から生まれた言い回しで、the one that got awayと根っこの部分でつながっています。手に入らなかったもの、確かめようのないものほど、記憶の中で理想化されやすいという人間らしい心理が、いずれの表現にも共通して流れています。
劇中でサリーが語った「逃した相手という幻想にしがみついていた」という言葉も、この理想化の構造そのものを言い当てていました。手に入れなかったからこそ、都合よく美しい記憶として残せてしまう、そんな心の動きを知っておくと、このフレーズの奥行きがより深く見えてきます。
まとめ|手放したことで美化される記憶
the one that got awayは、手に入れられなかった相手を、後悔と理想化が入り混じった思いで振り返る表現でした。もともとは釣りで逃した大物を語る言い回しであり、確かめようのないものほど記憶の中で大きく見えるという心理は、恋愛の場面にもそのまま重なります。
過去の恋人やチャンスについて語るとき、この一言があれば複雑な未練の気持ちをそのまま言葉にできます。
サリーが自ら選んだ距離の取り方が、皮肉にも彼自身を「逃した相手」という幻想の中に閉じ込めていた、そんな余韻の残る場面でした。


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