海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
『フレンズ』シーズン1第6話では、部屋を掃除したレイチェルが動かしていた緑のオットマンに、モニカが気づきます。モニカは「戻して」とも「やめて」とも一言も言わないまま、その家具を元の場所へ戻してしまいます。
相手のやり方を否定せずに、自分の好みへそっと寄せる。そんな遠回しな提案の英語を、気づく・試す・言わずに伝えるというモニカの言葉の3つの段階に分けて見ていきます。
「I see you moved ~」と「How did that happen?」で、変化に気づいたと伝える
レイチェルは窓まで拭いたと言って、掃除を終えた部屋をみんなに見せます。そこでモニカが口にしたのは、ある家具の位置の話でした。
Monica: Oh, I see you moved the green ottoman.
(あら、緑のオットマン、動かしたのね。)
Monica: How did that happen?
(どうしてそうなったの?)
Rachel: I thought it looked better there.
(そこのほうが見栄えがいいと思ったの。)
Rachel: And also it’s an extra seat around the coffee table.
(それに、コーヒーテーブルのまわりの席も増えるし。)
Friends Season1 Episode6(The One with the Butt)
I see you ~. は「〜したのね」と、気づいた事実をそのまま口にする言い方です。良いとも悪いとも言わないため、相手に「何か言いたいことがあるのかな」と身構えさせる響きを持つこともあります。モニカはここで評価を述べず、事実の確認から話に入ります。
続く How did that happen? は直訳すると「それはどうやって起きたの?」です。誰が動かしたかは分かっているのに、あえて出来事のように尋ねる形で、相手を名指しで責める言葉を避けています。仕事の場でも、How did that happen? は原因を落ち着いて聞くときに使える表現です。
レイチェルは I thought it looked better there. で理由を述べ、And also ~. で二つ目の利点を付け足します。理由を一つ言ってから And also で付け足す流れは、自分の判断を説明するときにそのまま借りられる形です。見た目と使い勝手という二つの面から理由を挙げている点も、説明に説得力を与える要素と言えます。
「Just for fun」と「Just to compare」で、試しに元へ戻す
モニカはレイチェルの説明をいったん受け止めてから、こう続けます。
Monica: It’s interesting.
(なるほどね。)
Monica: But you know what? Just for fun
(でもさ、ちょっと遊びで)
Monica: let’s see what it looked like in the old spot.
(前の場所だとどう見えたか確かめてみない?)
Monica: Just to compare.
(比べるだけだから。)
Monica: Let’s see. Well, it looks good there too.
(どれどれ。うん、ここでもいい感じね。)
Monica: Let’s just leave it there for a while.
(しばらくここに置いておきましょう。)
Phoebe: Can’t believe you tried to move the green ottoman.
(あの緑のオットマンを動かそうとしたなんて信じられない。)
Friends Season1 Episode6(The One with the Butt)
It’s interesting. は相手の案を否定せずに受け止める一言ですが、ほめているわけではありません。そこへ But you know what? を重ねると、「でもね」と話の向きを変える合図になります。
提案の中心は Just for fun, let’s see ~. と Just to compare. です。just for fun(遊びで)や just to compare(比べるだけ)を添えると、「本気で変えるわけではない」という軽さが出ます。モニカはこう言ってオットマンを元の場所に戻し、it looks good there too と、どちらも良いという形をとります。
ところが最後の Let’s just leave it there for a while. で、結局は元の位置のまま話を終わらせます。for a while(しばらく)は期限をぼかす言葉で、「とりあえず」の顔をして結論を先に決めてしまう働きがあります。直後にフィービーは、そのオットマンを動かそうとしたこと自体に驚いてみせます。
「I’m not going to do that.」で、言わずにおくと言いながら伝える
翌朝、モニカの部屋から物を借りていくチャンドラーが、ドアを開けてほしいと頼みます。モニカはそのついでに、こんな言い方をします。
Chandler: So, uh, Monica, can you help me with the door?
(で、モニカ、ドア開けてくれる?)
Monica: Uh, Chandler, you know the old Monica would remind you
(ねえチャンドラー、前のモニカならあなたに念を押すところよ。)
Monica: to scrub that Teflon pan with a plastic brush.
(あのフライパンはプラスチックのブラシで洗ってねって。)
Monica: I’m not going to do that.
(そんなことはしないから。)
Friends Season1 Episode6(The One with the Butt)
the old ~ は「以前の〜」「昔の〜」で、ここでは「前のモニカ」、つまり「前の私」を自分の名前で語る形です。would remind you の would は「(前の私なら)〜するところだ」という仮定を表します。remind you to ~ は「〜するよう念を押す」で、うっかり忘れそうなことを相手に思い出させるときの言い方です。
おもしろいのは、最後の I’m not going to do that.(そんなことはしない)と言う前に、念を押したい中身をすべて言い終えている点です。「言わないでおくけど」と前置きしながら伝えたいことを伝える、遠回しな言い方の一つと言えます。日常でも I’m not going to tell you what to do, but ~.(指図するつもりはないけど〜)のような前置きが同じ働きをします。
オットマンの場面と合わせて見ると、モニカは「否定しない形」をとりながら、自分の好みははっきり伝えていることが分かります。
まとめ|否定しない形で、自分の好みを伝える
I see you ~ で気づいたことを示し、Just for fun や Just to compare で提案を軽く包み、I’m not going to do that. で言わないと言いながら伝える流れを見てきました。相手のやり方に正面から反対しなくても、言葉の選び方で自分の好みは伝わります。
モニカの遠回しな言い方に注目しながら『フレンズ』のこの回を観ると、短いやりとりの中の駆け引きが見えてきます。
同じエピソードのほかのコラムやフレーズ記事では、この回の別の場面の英語も取り上げています。


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