海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
話し合いが白熱してきたとき、「その話は、いったん置いておこう」と、うまく脱線を止められたらいいのに、と思ったことはありませんか。
そんな場面で役立つ「stick a pin in it」を、『フレンズ』シーズン1第14話の終盤、ロスが元妻キャロルに、都合の悪い話題を先送りしようとするシーンから、一緒に見ていきましょう。
「stick a pin in it」の意味とニュアンス
stick a pin in it
意味:(その話題を)いったん保留にする、あとで戻れるように棚上げする
stick a pin in it は、文字どおりには「それにピンを刺す」で、話題や議題を一時的に保留にすることを表します。地図やメモにピンを刺して「あとで戻ってくる場所」に印をつけるイメージが、その意味の根っこにあります。
ポイントは、「もう終わり」ではなく「今は先に進むけれど、この話はあとでまた再開する」という、一時停止のニュアンスがあることです。だから会議で議論が脱線したときや、今すぐ結論を出したくないとき、「この件はいったん置いて先に進もう」と切り出す場面にぴったりはまります。
put ~ aside(脇に置く)よりも、「あとで戻る目印を残しておく」という含みが強いのが特徴です。
【ここがポイント!】
- 地図に「あとで戻る」目印のピンを刺すイメージが核
- 「終わり」ではなく「今は先に進むが、あとで再開」という一時保留
- 会議で脱線を止めたり、結論を先送りしたりする場面で活躍する一言
『フレンズ』S01E14のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
すでに女性パートナーがいて、しかもロスの子を妊娠している元妻キャロルに、ロスが「もう一度やり直さないか」と迫る場面です。キャロルが決定的な事実を口にしかけると、ロスはそれを直視したくなくて、話題そのものを棚上げしようとします。
Carol: Ross… I know what you’re going to say. You’re a lesbian.
(ロス……何を言うかわかってる。「きみはレズビアンだ」でしょ。)Ross: But let’s… what do you say we just put that aside for now? Let’s just stick a pin in it, okay?
(でも……ひとまずその話は横に置いておかない?とりあえず保留にしておこうよ、ね?)Friends Season1 Episode14 (The One with the Candy Hearts)
シーン解説と心理考察
自分に不利な事実を、キャロルが口にしようとした瞬間、ロスがとっさに Let’s just stick a pin in it. と話題を封じにかかるところに、往生際の悪さがにじむ場面です。現実を「あとで考えること」にして先送りしたい――そんな心理が、この一言に凝縮されています。
直前に put that aside(横に置く)と言い換えてから stick a pin in it を重ねている点も見どころで、「とにかくこの話は置いておこう」という意図が二重に強調されています。さらにこのやりとりの少しあと、ロスは「そこに刺しておいたやつ、そろそろピンを抜こう」と、ピンの比喩を続けて口にします。保留にした話題を、自分に都合のいいタイミングで再開しようとする狙いが透けて見えます。
「あとで戻る」印というこの表現の性質が、ロスの先送りの心理とぴたりと重なっています。
『フレンズ』流・覚え方のコツ
stick a pin in it を覚えるときは、地図の上に「あとでここに戻ってくるぞ」という目印のピンを刺す動作を思い浮かべてみてください。
ピンを刺しておけば、いったんその場を離れても、あとで見失わずに戻ってこられます。この「印を残して先に進む」動きが、stick a pin in it の一時保留の感覚そのものです。
しかもこのシーンでは、ロスがこのすぐあとに「ピンを抜こう(take the pin out)」と続けます。保留=ピンを刺す、再開=ピンを抜く、という対で覚えておくと、この表現が持つ「あとで戻る前提の棚上げ」という核が、まるごと記憶に残ります。
例文で覚える「stick a pin in it」
it や this を後ろに置いて、「その話はいったん保留」と使います。とくにビジネスの会議で重宝する表現です。
Let’s stick a pin in it and come back after lunch.
(この件はいったん保留にして、ランチのあとで戻ろう。)
会議で議題を一時中断する場面です。come back(戻る)とセットで、「あとで再開する」という前提がはっきり伝わります。
That’s a great idea, but let’s stick a pin in it for now.
(いいアイデアだけど、今はいったん置いておこう。)
今すぐ扱えない案を後回しにする場面です。for now を添えると、「今のところは」という一時性が強調されます。
A: Can we stick a pin in the budget discussion and finish the main agenda first?
B: Sure, let’s circle back to it at the end.
(A:予算の話はいったん保留にして、先にメインの議題を片づけられる?)
(B:もちろん、最後にまた戻りましょう。)
脱線を戻して本筋を優先する場面の会話です。it の代わりに具体的な話題(the budget discussion)を置くこともできます。
あわせて覚えたい関連表現
put ~ on the back burner
(後回しにする、優先度を下げる)
「弱火にかけて放置する」というイメージで、優先順位を下げて長めに後回しにすることを指します。stick a pin in it は「あとで必ず戻る」前提の、もっと短期的な保留です。
put ~ aside
(いったん脇に置く)
最も一般的な「横に置く」表現です。劇中でもロスが put that aside と言い換えていました。stick a pin in it のほうが、「あとで戻る目印」のニュアンスが強く出ます。
table something
(議題を棚上げにする)
会議で「議題を保留にする」ときの言い方です。ただしイギリス英語では逆に「議題に上げる」の意味になる注意語で、stick a pin in it は口語的でこの混乱がありません。
Note|会議で使える「いったん保留」の英語フレーズ集
stick a pin in it は、ビジネスの会議でとりわけ活躍する表現です。今回は、同じ「いったん保留」を伝える仲間たちを、フォーマル度とともに整理してみましょう。
まずカジュアル寄りなのが、今回の stick a pin in it と park it です。どちらも口語的で、「その話はちょっと駐車場に置いておこう」というくらいの軽さで使えます。少しかしこまった会議では table it や let’s revisit this later(あとで再検討しよう)が好まれ、議事録にも収まりのいい響きになります。一方 put it on the back burner は、「優先度を下げて、しばらく先送りにする」という、やや長めの保留を表すので、「あとですぐ戻る」ニュアンスの stick a pin in it とは時間感覚が異なります。使い分けの目安は、「あとですぐ戻るのか(pin)」「本筋の合間に一時中断するだけか(table)」「当分は寝かせておくのか(back burner)」という、戻るまでの距離感です。
劇中のロスは、この表現を「本当は戻りたくない話をいったん封じる」ために使っていましたが、ビジネスの現場では逆に、「大事な話を見失わないよう、印をつけて後回しにする」という前向きな道具になります。同じピンでも、刺す人の意図で役割が変わるのが面白いところです。
置いておくのか、寝かせるのか――保留にも、いくつもの距離感があります。
まとめ|ロスの先送りから学ぶ「いったん保留」の一言
stick a pin in it は、「今は先に進むけれど、この話はあとでまた再開する」という一時保留を表す表現です。地図にピンを刺す動作をイメージすれば、「あとで戻る目印を残す」という核がつかめます。
この一言を知っていると、会議で脱線を止めたいときや、結論を急がず後回しにしたいときに、角を立てずスマートに切り出せるようになります。put aside や on the back burner との距離感もあわせて押さえておくと、話し合いの舵取りがぐっと楽になります。
刺したピンをいつ抜くかまで計算していたロス。その先送りのやりとりとセットで、表現の幅を広げてみてくださいね。


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