海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
率直な意見や、少し踏み込んだ相談を切り出す前に、思わず「悪く取らないでほしいんだけど」と一言添えてしまうこと、ありますよね。相手を傷つけたくないときの、あの前置きです。
そんな場面にぴったりの「take ~ the wrong way」を、『フレンズ』シーズン5第1話、ロンドンでの一夜を経て気まずさを抱えたチャンドラーが、モニカに恐る恐る切り出すシーンから、一緒に見ていきましょう。
「take ~ the wrong way」の意味とニュアンス
take ~ the wrong way
意味:(言葉などを)悪く受け取る、誤解する、気を悪くする
take ~ the wrong way は、相手が自分の言葉を意図と違うネガティブな意味に解釈してしまうことを表します。直訳は「これを間違った方向に受け取る」で、差し出した言葉を相手が予想外の方向へ持って行ってしまうイメージです。
実際の会話では、Don’t take this the wrong way, but …(悪く取らないでほしいんだけど、〜)という前置きの形で使われることが非常に多い表現です。率直な意見や指摘、頼みごとなど、相手が気を悪くしかねない発言の直前に置くことで、衝撃をやわらげるクッションの役割を果たします。but の後に本題が続くのも、この表現の定番の流れです。
【ここがポイント!】
- 核は「言葉を間違った方向(the wrong way)に受け取る」という誤解のイメージ
- Don’t take this the wrong way, but … と前置きで使うのが定番の形
- 言いにくいことの衝撃をやわらげるクッションとして働く一言
『フレンズ』S05E01のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。ロンドンでチャンドラーとモニカは思いがけず一線を越えてしまい、翌日、二人はこの関係をどうするか気まずさを抱えたまま探り合っています。デリケートな話題に踏み込む前に、チャンドラーはまず前置きから入ります。
Chandler: Oh, wow, I hope you don’t take this the wrong way, but I know we had plans to meet up tonight, and… Ah, I’m just, I’m kind of worried about what it might do to our friendship.
(あのさ、悪く取らないでほしいんだけど、今夜会う約束してたよね。その…俺たちの友情に何か影響しないか、ちょっと心配なんだ)Monica: I know. Oh, how could we have let this happen?
(わかる。ああ、どうしてこんなことになっちゃったの?)Chandler: Seven times!
(7回もだぞ!)Monica: Well, you know, look, we were away.
(ほら、だって、私たち旅先だったし)Chandler: In a foreign, romantic country.
(異国の、ロマンチックな国にね)Monica: I blame London.
(ロンドンのせいよ)Chandler: Bad London!
(悪いロンドンだ!)Friends Season5 Episode1(The One After Ross Says Rachel)
シーン解説と心理考察
I hope you don’t take this the wrong way, but … という前置きに、チャンドラーの慎重さがにじむ場面です。相手を傷つけたくない、けれど言わなければならない。その板挟みのなかで、まず衝撃をやわらげるクッションを置いてから本題に入っていきます。
チャンドラーが気にかけているのは、二人の関係が友情を壊してしまわないかという一点です。この前置きがあることで、続く「心配なんだ」という本音が、責める調子ではなく相談として相手に届きます。take this the wrong way というクッションが、会話の温度をやわらかく保っています。言いにくいことを抱えた人が、それでも関係を大切にしようとする気持ちが、この一言の背景に重なっています。
『フレンズ』流・覚え方のコツ
「悪く取らないで(don’t take this the wrong way)」と身構えてからモニカに切り出す、あの気まずい間ごと覚えると定着しやすくなります。take は「受け取る」、the wrong way は「間違った方向・道」。つまり、こちらが差し出した言葉を、相手が「間違った道」へ持って行ってしまうイメージです。
キャッチボールで、まっすぐ投げたボールを相手が思わぬ方向へ投げ返してしまう。その「方向のズレ」が the wrong way です。言葉が正しい道を進むか、それとも横道にそれるか。その分かれ道を手前でふさいでおくのが、この前置きだと考えると覚えやすくなります。
例文で覚える「take ~ the wrong way」
take ~ the wrong way は、言いにくいことを切り出すときのクッションとして幅広く使えます。カジュアルな指摘からフォーマルな異論まで、場面に応じて丁寧さを調整できるのも便利なところです。
Don’t take this the wrong way, but you look tired today.
(悪く取らないでね、でも今日ちょっと疲れて見えるよ)
相手を気遣いつつ指摘する場面です。最も基本的な前置きの形で、but の後に伝えたい本題を続けます。
Please don’t take this the wrong way, but I think we need to reconsider the plan.
(どうか悪く取らないでいただきたいのですが、計画を見直す必要があると思います)
会議で異論を述べる場面です。Please を添えると丁寧さが増し、フォーマルな場でも角が立ちません。
A: Can I say something?
B: Sure. Just don’t take it the wrong way, okay?
(A:一つ言っていい?)
(B:もちろん。でも悪く取らないでね?)
言いにくいことを切り出す前のやり取りです。切り出す側の心づもりが、この短い前置きに表れます。
あわせて覚えたい関連表現
Don’t get me wrong
(誤解しないで)
自分の発言の真意を守るための前置きです。take it the wrong way が「相手の受け取り方」に焦点を当てるのに対し、get me wrong は「話し手の真意」を守る側で、視点が逆になります。
read too much into ~
(〜を深読みしすぎる)
相手が言葉に余計な意味を読み込むことを表します。take the wrong way が「ネガティブに」誤解する方向なのに対し、read too much into は「過剰に意味づけする」方向で、ズレの種類が異なります。
misunderstand
(誤解する)
中立的でフォーマルな一語です。take the wrong way は口語で「気を悪くする」という感情的なニュアンスを含む点が、この一語との違いになります。
Note|「方向」で誤解を表す英語の発想 ― the wrong way というクッション
チャンドラーが使った take this the wrong way には、英語らしい発想が隠れています。それは、誤解を「方向」で表すという考え方です。
英語は「誤解する」を the wrong way(間違った方向)という空間の比喩でとらえます。way はもともと「道・方向」を表す言葉で、正しい道(the right way)と間違った道(the wrong way)があり、言葉がどちらの道を進むかで理解が変わる、という感覚がここにあります。日本語の「取り違える」も方向のイメージを含みますが、英語はさらに徹底して way という空間の言葉を軸に据えます。この発想を押さえると、by the way(ついでに=道のわきで)や one way or another(どうにかして=あれこれの道で)など、way を使ったほかの表現も同じ地図の上でつながって見えてきます。言葉を一本の道として空間的にとらえる。それが英語の way にまつわる発想の面白さです。
チャンドラーが don’t take this the wrong way と前置きしたのも、「これから言うことを、どうか間違った道へ持って行かないで」というお願いだったわけです。言葉を道になぞらえるこの感覚がわかると、クッション表現の働きがいっそう腑に落ちます。
道を一本まちがえるだけで、言葉の行き先は大きく変わるのですね。
まとめ|チャンドラーの前置きから学ぶこと
take ~ the wrong way は、言葉を「間違った方向に受け取る」という誤解のイメージを核にした表現です。Don’t take this the wrong way, but … という前置きの形で、言いにくいことの衝撃をやわらげるクッションとして働きます。
この一言を覚えておくと、率直な意見や指摘を伝えるときに、相手を身構えさせずに本題へ入れるようになります。Please を添えたり I hope を足したりすれば、フォーマルな場面にも自然になじみます。
言いにくいことをやわらかく差し出すこの前置きを、あなたの表現の引き出しに加えてみてください。


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