海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
世間話のような顔で近づいてきた相手の質問が、どうも並び方が不自然で、何かを引き出そうとしているのだと途中で気づいた経験はありませんか。表向きは雑談、けれど目的は別のところにある。そんな会話です。
そんな場面で使われる「be fishing」を、『メンタリスト』シーズン5第19話の序盤、他機関の男と面会したリズボンが、その意図をジェーンに報告するシーンから、一緒に見ていきましょう。
「be fishing」の意味とニュアンス
be fishing
意味:探りを入れる / それとなく情報を引き出そうとする
fish は名詞では魚ですが、動詞になると「釣る」、そこから「手探りで何かを引き出す」という意味に広がります。進行形の be fishing は、水面下に釣り糸を垂らして当たりを待つ姿がそのまま言い回しになったものです。
この表現の特徴は、探している側が目的を明かさない点にあります。正面から「教えてほしい」と頼めば意図が見えますが、fishing はあくまで雑談や世間話の形をとります。だからこそ言われた側は、後になって「あれは探りだったのか」と気づくことになります。
for を続けると狙いがはっきりします。fish for information(情報を探る)、fish for compliments(褒め言葉を引き出そうとする)のように、for のあとに釣り上げたいものを置く形です。逆に He was just fishing. と目的語を言わずに終えると、「何かを探っていたが、それが何かまでは分からない」という含みが残ります。
【ここがポイント!】
- 水面下に糸を垂らして当たりを待つ、それが be fishing の骨格
- 目的を明かさないまま近づく、遠回しな情報収集を指す一言
- fish for のあとに狙いを置くと対象がはっきりするのがコツ
『メンタリスト』S05E19のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
リズボンはこの日、他機関の捜査官ボブ・カークランドとカフェで顔を合わせていました。出身地の話から始まった会話は、やがてジェーンが長く追い続けている事件の進捗へと移っていきます。CBI に戻ったリズボンに、ジェーンが面会の中身を確かめる場面です。
Jane: That was it? That’s all Kirkland said?
(それだけ? カークランドが言ったのはそれで全部?)Lisbon: He was just fishing.
(ただ探りを入れてただけよ)Jane: Don’t you think it’s odd—Homeland Security’s fascination with a California serial killer?
(妙だと思わないか。国土安全保障省がカリフォルニアの連続殺人犯にご執心だなんて)Lisbon: Everything about Bob Kirkland is odd.
(ボブ・カークランドは何もかもが妙よ)The Mentalist Season5 Episode19 (Red Letter Day)
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シーン解説と心理考察
リズボンは面会の内容を要約するのに、長い説明を選びませんでした。He was just fishing. の一言で、質問の並びも、相手の狙いも、自分がそれに乗らなかったことも同時に伝えています。捜査官どうしの会話らしい簡潔さが表れています。
just という一語も効いています。「何かを掴んでいたわけではない、ただ垂らしていただけ」という評価がここに込められており、相手の手の内が空だったという判断が短い一言に重なっています。
続くやり取りでは、ジェーンが odd という語を持ち出し、リズボンがその語をそのまま受け取って別の対象へ広げ返します。相手の使った語を借りて返す会話の運びが、二人の距離の近さをやわらかく見せています。
一方で、この場面の軽さは後から効いてきます。探りを入れられた側は、そのとき何を持っていかれたのかを判断できません。fishing という語には、その不確かさがそのまま残っていると言えます。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
桟橋の先で釣り糸を垂らしている人を思い浮かべてみてください。何が掛かるかは分からない、それでも糸だけは水に入れておく。この姿勢がそのまま be fishing です。
リズボンがカフェで受けた質問も、まさにこの形でした。相手は具体的な要求を出さず、話題だけを次々に水に落としていく。当たりがあれば引く、なければ次を落とす。その繰り返しです。
覚えるときは、竿を持つ手の感触ごと思い出すのがおすすめです。掛かるまでは何も起きない、けれど糸は確かに垂れている。この「待っている状態」が進行形で表される理由も、同じ絵の中に収まっています。
例文で覚える「be fishing」
相手の意図を見抜いたときにも、自分の狙いを指摘されたときにも登場します。3つの例文で使われ方の幅を見ていきましょう。
I don’t think she wanted the file. She was just fishing.
(あの人はファイルが目的だったんじゃないと思う。ただ探りを入れていただけ)
同僚の来訪の意図を振り返る場面です。just を添えると「収穫はなかった」という見立てまで伝わります。
Stop fishing for compliments and just take the credit.
(褒め言葉を引き出そうとするのはやめて、素直に受け取ればいいのに)
親しい相手への軽い突っ込みです。fish for compliments はひとまとまりで覚えておくと便利な形です。
A: He kept asking about our budget over lunch.
B: He was fishing. Let’s not give him numbers next time.
(A:ランチの間ずっとうちの予算のことを聞いてきたよ)
(B:探りを入れてたんだね。次は数字を出さないでおこう)
取引先との食事のあとの打ち合わせです。過去進行形にすると「その場では気づかなかった」という時間差が出ます。
あわせて覚えたい関連表現
a fishing expedition
(根拠のない探り)
be fishing を名詞のかたちにしたもので、法律や報道の文脈でよく使われます。行為そのものではなく、その試み全体を批判的に名指しする点が違いです。
pump someone for information
(しつこく聞き出す)
be fishing が糸を垂らして待つのに対して、こちらはポンプで汲み上げる動作です。押しの強さがはっきり出るぶん、相手に気づかれやすい行為を指します。
feel someone out
(相手の考えをそれとなく探る)
探る対象が情報ではなく、相手の意向や反応である点が異なります。交渉に入る前の下調べのような場面で選ばれます。
Note|fishing expedition から phishing まで、釣りの比喩が広がった道すじ
なぜ「釣り」が情報収集を指すようになったのか。この比喩は日常会話の中だけにとどまらず、法廷や情報セキュリティの用語にまで枝を伸ばしています。
まず法廷側から見ていきます。英語には fishing expedition という言い方があり、これは具体的な根拠を示さないまま広範囲に証拠開示を求める行為を批判的に指す語として使われてきました。19世紀のアメリカの訴訟実務の中で定着したとされ、「何が出てくるか分からないまま網を広げている」という含みを持ちます。現在では裁判の場に限らず、政治的な調査や報道の手法を評する言葉としても使われており、議会の調査を fishing expedition だと批判する、といった用例が見られます。行為の遠回しさではなく、根拠のなさを突く語として機能している点が特徴です。
もう一つの枝が phishing です。メールや偽サイトで認証情報をだまし取る手口を指すこの語は、1990年代のアメリカで、当時普及していた大手プロバイダのアカウントを狙った詐欺を指して使われはじめたとされています。綴りが fishing ではなく phishing になっているのは、電話回線を不正利用する行為を指した phreaking の綴りにならったという説が有力です。餌を撒いて誰かが食いつくのを待つという構図が fishing とまったく同じであるため、比喩としてはそのまま引き継がれています。
こうして並べてみると、be fishing が持っている「目的を明かさず、当たりを待つ」という骨格が、法廷でも情報犯罪の現場でも同じ形で使い回されていることが分かります。リズボンが一言で片づけたあの探りも、規模こそ小さいものの構図は同じでした。
糸を垂らす人がいるかぎり、この比喩は増え続けるのかもしれません。
まとめ|探りを一言で片づける
be fishing は、目的を伏せたまま情報を引き出そうとする振る舞いを、釣りの一場面に置き換えて表す言い回しです。何を狙っているかまでは分からない、けれど糸が垂れていることだけは分かる。その不確かさごと言い表せる点が、この表現の持ち味になっています。
会話の中でこの一言が使えると、相手の質問を長々と再現しなくても、その意図と自分の判断をまとめて伝えられます。報告の場面でも、雑談の振り返りでも、説明を短くしてくれる表現です。
遠回しに近づいてくる質問を受け流したいとき、落ち着いて相手の狙いだけを指摘できる、そんな一言です。


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