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『メンタリスト』シーズン1エピソード13では、実業家A.P.キャイドが所有する名画「モロ」の盗難事件が描かれます。今回は、この絵の管理に関わる二人の人物、家族の美術品を専属で買い付けるキャスリン・ホークスと、本物を守るための複製を手がける職人ウォレスに注目し、名画コレクションの裏側にある文化を読み解いていきます。
高額な一点ものをどう扱い、どう守るのか。二つの場面をたどりながら、その背景を見ていきます。
名画コレクションを支える専属バイヤーという仕事
盗まれた「モロ」は5000万ドルもの値がつく一点もので、A.P.キャイドの娘であり、殺害されたハリー・ラシュリーの妻でもあるスティービーによれば、父親にとって美術品への出費は理屈で測れるものではないといいます。だからこそ、専門知識を持つ担当者に絵の買い付けを任せているのだと、ジェーンに問われたスティービーはこう説明します。
Stevie: She buys the art for my father’s collection.
(彼女が、父のコレクション用に美術品を買い付けているんです)The Mentalist Season1 Episode13 (Paint It Red)
buy art for someone’s collectionという言い回しは、単に「絵を買う」のではなく、「誰かのコレクションのために買い付ける」という専門職としての役割を表しています。高額な美術品の売買は、鑑定眼や市場知識、信頼できる仲介ルートを要する専門分野であり、富裕なコレクターが専属の買い付け担当者を雇うという構図がここに表れています。こうした慣行がどの程度一般的かは断定を避けたいところですが、少なくともこのドラマの中では、キャスリンの鑑定眼そのものが一族の財産を左右するほど重視されています。
序盤の捜査シーンでは、この絵がオークションで数か月前に落札された一点ものとして紹介されており、値付けや真贋確認のたびに専門家の判断が挟まれる様子が繰り返し描かれます。個人の趣味の延長ではなく、資産としてのコレクションを維持管理する仕組みの一端が、こうした専属担当者の存在に表れているといえます。
「本物を守るための複製」を手がける贋作師ならぬ職人ウォレス
捜査官として踏み込んだジェーンは、目の前の男は贋作づくりの腕利き職人だとヴァン・ペルトに紹介します。呼ばれた本人であるウォレスは、自分が手がけたのはあくまで「コピー」であって盗品ではないと訴え、こう続けます。
Wallace: People who need my services tend to find me eventually. It’s not a crime, what I do. If you have a valuable painting, it’s only sensible to have a copy made for the display, so that way, the real thing’s safe.
(私のような仕事を必要とする人は、いずれ自分にたどり着くものです。私のしていることは犯罪ではありません。価値のある絵をお持ちなら、展示用に複製を作らせておくのが賢明というものです。そうすれば本物は無事に守られますから。)The Mentalist Season1 Episode13 (Paint It Red)
a copy made for the displayは「展示用に作られた複製」という意味で、have + 目的語 + 過去分詞という「〜を…してもらう」型の応用でもあります。ウォレスが語るのは、贋作を本物として売りつける詐欺とは別の、もう一つの複製文化です。高額な絵画を所有する側が、展示用の複製を専門の職人に依頼し、本物は金庫や保管庫にしまっておく。真作を保護するための備えとして複製を用いるという発想で、この場面では、複製の存在そのものが犯罪ではないという前提で会話が進んでいます。
ウォレスは自分をforgerではなくartistだと言い切り、どんなに本物そっくりに見えても、自分の作品が本物として売られることのないよう、必ずどこかに見分けのための細工を加えていると付け加えます。実際にこの絵にも、テレビアンテナという時代錯誤なモチーフが忍ばせてあり、複製と本物を見分ける手がかりになっていました。展示用の複製という発想の裏には、こうした職人としての一線を守る姿勢もうかがえます。
まとめ|名画を守るためのもうひとつの物語
キャイド家の美術品を担当する専属バイヤーの存在と、本物を守るための複製を手がける職人ウォレスの仕事。どちらも、名画という一点ものを大切に扱う富裕層のコレクション文化を映し出しています。「a copy made for the display」という言い回しとともに、こうした複製文化の一端を覚えておきたいところです。
次回も『メンタリスト』の場面を通して、ドラマの背景にある文化を見ていきます。
このエピソードの英語表現やあらすじは、フレーズ記事やエピソードまとめでも扱っています。
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