「give someone the slip」の意味と使い方|『メンタリスト』S04E18で学ぶ英会話

「give someone the slip」の意味と使い方を解説

海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。

追いかけていた相手を、ほんの一瞬で見失う。人混みの中や角を曲がった先で、するりと消えられてしまう。ドラマの追跡シーンでおなじみのあの瞬間を、英語ではどう言うのでしょうか。

その言い方が「give someone the slip」です。『メンタリスト』シーズン4第18話の中盤、逃げられた宴会場のすぐ近くで被害者の車が見つかったと、チョウがチームに報告するシーンから、一緒に見ていきましょう。

目次

「give someone the slip」の意味とニュアンス

give someone the slip
意味:追ってくる相手をまく、尾行を振り切る

slip は「滑る」「するりと抜ける」という動きを表す語です。濡れた石鹸が手から抜けていくときの、あの感触。give someone the slip は、その「するり」を相手に渡してしまう、という形の表現で、追跡している相手の視界から気づかれないうちに消えることを指します。

ここで大事なのは、力ずくで振り払うのではないという点です。走って逃げ切る場面にも使えますが、核にあるのは「相手の手の中から抜けた」という感覚のほうです。だから捕まえ損ねた側の苦い自覚が、この言い方には少しだけ混じります。

主語は逃げる側です。追う側の視点から言うなら lose(見失う)になります。同じ出来事を、どちらの立場から語るかで語が入れ替わる点も押さえておくと、捜査ものの会話が追いやすくなります。人だけでなく、車や船を主語にすることもできます。

【ここがポイント!】

  • 核は「するりと手から抜ける」という、石鹸のような手触り
  • 主語は逃げる側。追う側から言うなら lose に切り替わる
  • 深刻な追跡だけでなく、しつこい相手をかわす軽い場面にも使える一言

『メンタリスト』S04E18のシーンで見てみよう

意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。

CBIは被害者の息子エイデンを宴会場に訪ねますが、彼はトレイを放り出して裏口から走り去り、捜査員をまいてしまいます。この場面はその後始末です。逃げられたまさにその場所のすぐ近くで、被害者の車が見つかったという連絡が入ります。チョウの淡々とした報告の中に、逃げられた側の言い方としてこのフレーズが置かれています。

Kimball: That was Agua Blanca P.D. They found the victim’s car. It was about a block away from that banquet hall where Aden gave us the slip.
(アグア・ブランカ署からだ。被害者の車が見つかった。エイデンに撒かれた宴会場から、1ブロックほどの場所だった。)

Wayne: Well, Braddock’s last phone call was to Aden, so maybe father and son had a reunion that didn’t go so well.
(ブラドックの最後の電話は息子のエイデン宛だった。父子の再会がうまくいかなかったのかもな。)

Grace: Wouldn’t be surprised. I talked to the estate lawyer. Most of Braddock’s money was split into trusts for Liesl and Aden, payable on their 23rd birthdays.
(ありえますね。遺産管理の弁護士に話を聞きました。ブラドックの資産の大半はリーズルとエイデンの信託に分けられていて、23歳の誕生日に支払われる契約でした。)

Wayne: Sounds normal. Rich normal, anyway.
(普通だな。金持ちの普通、ではあるけど。)

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シーン解説と心理考察

チョウの報告には感情の色がほとんどありません。事実を並べ、そこで止める。彼の話し方の特徴がよく出ている数行です。それでも gave us the slip という言い方には、逃げられた側の自覚がわずかに混じります。escaped from us なら相手の必死な脱出になりますが、the slip を使えば「するりと抜けられた」という、追う側の失点の形になります。

同時にこの一行は、捜査の流れを一段進める役割も担っています。逃げられた場所と、被害者の車が見つかった場所が重なる。それだけで、父と息子が最後に接触していた可能性が浮かび上がります。逃走という出来事が、位置情報として意味を持ち直す瞬間です。

そのあとにヴァンペルトが持ち出す信託の話、リグスビーの「金持ちの普通」という一言まで含めて、CBIの会議が短い応酬で組み上がっていくのが見どころと言えます。

『メンタリスト』流・覚え方のコツ

濡れた石鹸を握った瞬間を思い出してみてください。力を入れているのに、指のあいだをするりと抜けていく。あの一瞬の感触が、そのまま slip という語の中身になっています。

give someone the slip は、その「するり」を相手に手渡してしまう形です。追っていた側の手の中には、何も残りません。

劇中でも、宴会場に踏み込んだ捜査員たちの手元に残ったのは、床に落ちたトレイの音だけでした。追いかけて捕まえ損ねた側の視点から語られる言葉だと押さえておくと、escape や run away との違いが混ざらなくなります。

例文で覚える「give someone the slip」

深刻な追跡から、しつこい相手をかわす軽い場面まで守備範囲の広い表現です。事件の説明、日常の冗談、指示を出す場面の3つで見てみましょう。

The suspect gave them the slip in the crowded station.
(容疑者は混雑した駅で捜査員をまいた。)
ニュースやドラマの筋を説明するときの言い方です。crowded や busy といった、人混みを表す語と一緒に出てきやすいのが特徴です。

She managed to give the reporters the slip by leaving through the kitchen.
(彼女は厨房を通って出ることで、記者たちをうまくまいた。)
有名人の行動を語る場面です。manage to を添えると「なんとかやり遂げた」という含みが加わります。

A: Weren’t you supposed to be showing your cousin around all day?
B: I gave him the slip at the museum. Don’t tell my mom.
(A:今日は一日、いとこを案内するはずじゃなかったの?)
(B:美術館でまいてきた。母さんには言わないで。)
友人同士の軽口です。犯罪めいた場面でなくても、こうして冗談として使えます。

あわせて覚えたい関連表現

shake off
(振り切る、追い払う)
振り払う動作が入るぶん、力ずくの含みが出ます。give someone the slip が「気づかれずに消える」方向なのに対し、こちらは相手に気づかれたまま引き離す場面に向きます。

lose someone
(追っていた相手を見失う)
同じ出来事を逆の立場から言った表現です。give the slip は逃げる側が主語、lose は追う側が主語になるという、視点の違いだけの関係にあります。

slip away
(こっそり抜け出す)
追跡されているとは限らず、パーティーや会議からそっと退出する場面でも使えます。今回のフレーズと同じ slip を核に持ちますが、相手を振り切る含みは薄めです。

Note|刑事ドラマが手放さない、追跡の語彙

捜査ものの英語を聞き取ろうとすると、追う・まく・見失うといった動きを表す言い方が次々に出てきます。give someone the slip もその一つで、単独で覚えるより、同じ場面で使われる語をまとめて並べたほうが早く身につきます。

英語の追跡語彙は、誰の視点から語るかで整理できます。まず tail。名詞で「尾行」、動詞で「尾行する」を表し、Are you being tailed?(尾行されてるのか)のように使われます。そこから shake a tail(尾行を振り切る)が派生します。逃げる側の主語で「まいた」と言うのが give someone the slip、追う側の主語で「見失った」と言うのが lose someone です。追跡そのものが始まる合図には be in pursuit、逃走中の状態には be on the run や be at large が使われます。

同じ一つの出来事が、これだけの言い方に分かれています。逃げた側の視点か、追った側の視点か、それとも現在の状態か。捜査ものの台詞が短く速いのは、この使い分けによって「誰がどの位置にいるか」を一語で示せるからです。

この地図の中に置いてみると、give someone the slip の位置がはっきりします。逃げる側が主語で、過去の出来事で、しかも相手に気づかれずに抜けた場合。三つの条件が揃ったときに選ばれる語だと分かれば、聞き取りの精度も上がります。

一語の位置が決まると、隣にある語も一緒に見えてきます。

まとめ|床に落ちたトレイと、消えた背中

give someone the slip は、逃げ切ったことを誇る言葉ではありません。追っていた側の手から、するりと抜けてしまったという出来事を、そのままの形で述べる表現です。だからこの一言には、逃げられた側の小さな悔しさがいつも同居しています。

この表現を持っておくと、追跡の場面を立場ごとに言い分けられるようになります。まかれたのか、見失ったのか、振り切られたのか。同じ出来事でも、選ぶ語によって自分がどこに立っているかが伝わります。

宴会場に残ったのは、落ちたトレイの音だけでした。その静けさごと、表現の引き出しに加えてみてください。

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