海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
よかれと思ってやったことが、あとから振り返ると少し派手すぎたかもしれない。そんなふうに、自分の力の入れ具合を測りかねた経験はありませんか。
その「やりすぎ」を軽く指摘するのが「over the top」です。『メンタリスト』シーズン2第5話の後半、リズボンとジェーンが周囲に見せるための一芝居を打った直後のやり取りで登場します。緊張した場面が一転して演技の反省会になる面白さも含めて、一緒に見ていきましょう。
「over the top」の意味とニュアンス
over the top
意味:やりすぎ、大げさ、度を越している
グラスに液体を注ぎすぎて、縁からあふれてしまう。over the top が表しているのは、適切な範囲の上限を越えてしまった状態です。ちょうどよい量があるのに、そこで止まらなかった、という含みがあります。
対象を選ばないのが特徴です。演技、装飾、金額、反応、感情表現と、程度を測れるものならたいてい当てはまります。批判の言葉ではありますが、強さの調整が効くのも便利なところです。a little や a bit を添えれば軽い指摘になり、so over the top とすれば呆れが前に出ます。
形容詞として名詞の前に置くときは over-the-top acting のようにハイフンでつなぎ、補語として使うときは It’s over the top. とハイフンなしで書くのが一般的です。書き分けを意識しておくと、文章にしたときに整います。
【ここがポイント!】
- 縁からあふれたグラス、つまり適量の上限を越えた状態が核のイメージ
- 演技も装飾も金額も、程度が測れるものなら何にでも使える幅の広さ
- a little を添えて角を落とす、が会話で使うときの定番のコツ
『メンタリスト』S02E05のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
屋敷での捜索が空振りに終わり、リズボンは苛立った様子で打ち切りを宣言します。食い下がるジェーンを強い言葉で一喝し、その場にいた関係者ごと外へ追い出しました。ところがこれは、周囲に見せるために二人で仕組んだ芝居でした。人払いが済んで二人きりになった途端、空気が切り替わります。
Lisbon: Bite me. We’re done for the night.
(うるさい。今夜はここまでよ)Jane: “Bite me”?
(「うるさい」?)Lisbon: It’s too much?
(やりすぎだった?)Jane: Uh, a smidge.
(まあ、ちょっとね)Lisbon: Worked.
(効いたでしょ)Jane: It’s fine, just a little over-the-top.
(悪くなかったよ。ちょっと大げさだったけどね)The Mentalist Season2 Episode5(Red Scare)
シーン解説と心理考察
同じ台詞が、聞く人によって二つの意味を持つように設計された場面です。周囲の人々にとっては、捜査に見切りをつけた責任者の苛立ちに見える。ジェーンにとっては、打ち合わせどおりに進行した合図になる。一人二役をこなす台詞回しが見どころと言えます。
面白いのは、芝居が終わった瞬間のリズボンの一言です。It’s too much? と、自分から出来ばえを確認しにいっています。強気に振る舞った直後に評価を求める順序に、この人物の律儀さがにじみます。Worked. という短い自己弁護も、まだ判定を待っている様子を裏切っていません。
対するジェーンの返しは、a smidge、It’s fine、just a little over-the-top と、三度にわたって程度を薄めた言い方で構成されています。やりすぎだと指摘しつつ、合格点は出す。長く組んできた二人だからこそ成立する採点のやり取りが、短い応酬に凝縮されています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
コップに水を注いでいる場面を思い浮かべてください。縁のすこし手前で止めればちょうどいいのに、手を止めそこねて、水面が縁を越え、テーブルに流れ出してしまう。over the top が指しているのは、その越えた一滴ぶんです。
このシーンのリズボンの芝居は、演技としては十分に機能していました。関係者は追い出され、狙いどおりに事が運んでいます。ただ、選んだ言葉が少しだけ強すぎた。ジェーンの just a little over-the-top という評は、まさにテーブルにこぼれた一滴を指しています。全否定ではなく、あふれたぶんだけを指摘する。この加減までセットで覚えておくと、批判の強さを自分で調整できるようになります。
例文で覚える「over the top」
添える語ひとつで、辛口にも軽口にもなる表現です。3つの場面で、その調整のしかたを見ていきましょう。
The decorations were a little over the top, but everyone loved them.
(飾りつけは少し派手すぎましたが、みんな喜んでいました)
パーティーの感想を伝える場面です。a little を添えたうえで but 以下でフォローすると、批判ではなく愛のある冗談になります。
Don’t you think firing him over one mistake is a bit over the top?
(ミス一つで解雇というのは、少しやりすぎではありませんか?)
処分の重さに疑問を投げる場面です。反語の形にすることで、正面から反対せずに異議を示せます。
A: I sent her twelve roses and a handwritten card.
B: Isn’t that a bit over the top for a first date?
(A:バラを12本と、手書きのカードを贈ったんだ)
(B:初デートにしては、ちょっとやりすぎじゃない?)
友人の行動に軽くつっこむ場面です。for a first date のように基準を添えると、何と比べてやりすぎなのかがはっきりします。
あわせて覚えたい関連表現
too much
(多すぎる、きつすぎる)
最も汎用的な言い方です。over the top は派手さや大げささに寄るので、演技や装飾への評としてはこちらのほうが的確になります。
go overboard
(やりすぎる、熱が入りすぎる)
船から落ちる、という絵を持つ動詞句で、行為そのものを指します。状態を評する over the top とは品詞が違うため、文中での置き場所で使い分けます。
melodramatic
(芝居がかった、大げさな)
感情表現の過剰さに限定される形容詞です。金額や装飾には使えないので、対象の広さでは over the top に軍配が上がります。
Note|イギリス生まれの略語OTTと、配信サービスのOTT
over the top は、イギリス英語圏で OTT と略されることがあります。That’s so OTT. のように、三文字だけで「やりすぎ」を言い切ってしまう使い方です。
この略語は、もともとイギリスの日常会話やメディアで広まったもので、アメリカ英語ではフルスペルのほうが優勢だと言われます。同じ表現でも、略すかどうかで地域の色が出るわけです。ところが近年、この三文字にはまったく別の意味が加わりました。動画配信の分野で使われる OTT です。こちらは over-the-top media services の略で、ケーブルテレビや放送局といった既存の伝送路の上を通り越して、インターネット経由で直接視聴者に届くサービスを指します。日本語の記事でも、配信業界の文脈では OTT がこの意味で使われています。もとは度を越すだった over the top が、業界用語では既存のしくみを飛び越えるという中立的な意味で使われている。同じ三文字が、批判の言葉としても、技術の分類名としても走っているわけです。
会話で OTT を耳にしたときは、相手がイギリス英語圏の人かどうか、話題が配信サービスかどうかで意味が分かれます。判断がつきにくい場面では、over the top と省略せずに言ったほうが確実です。
同じ三文字が、けなし言葉にも業界用語にもなる。
まとめ|リズボンの演技に出た合格点
over the top は、良し悪しではなく程度を言う表現です。適量の上限を越えてしまった、という一点だけを指しているので、内容そのものを否定するわけではありません。だからこそ、褒めながら注文をつけるという器用な使い方ができます。
この言い回しがあると、感想の解像度が上がります。よくなかった、と言い切る代わりに、a little over the top と添えれば、方向は間違っていないが強さが過剰だった、という具体的な指摘になります。自分の企画や資料を見直すときの物差しとしても働きます。
縁からあふれた一滴を見つける目を、表現の幅に加えてみてください。


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