海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
親戚が集まった席で、背の高さや酒の強さ、笑い方や怒り方まで、思っていた以上によく似ていると気づかされる場面があります。血のつながりを実感させられるのは、たいてい、そうした何気ない瞬間のほうです。
そんなときに使える「run in the family」を、『メンタリスト』シーズン2第15話の序盤、被害者の弟が酔って詰め寄ってくる横で、妻のアビゲイルがその様子を捜査員に説明するシーンから、一緒に見ていきましょう。
「run in the family」の意味とニュアンス
run in the family
意味:家系だ、血筋だ、家族に共通している
体質や性格、才能、病気などが家族に共通して現れることを表す表現です。主語には受け継がれている特徴そのものが立ち、Baldness runs in my family(薄毛はうちの家系だ)のように使います。
ここでの run は「走る」ではなく、川や血のように流れて続いていくという用法です。家族という器の中を、何かが上から下へ通っている。そのイメージが、この言い回しの背骨になっています。
大切なのは、遺伝だと科学的に断定する言い方ではないという点です。原因が遺伝なのか、同じ食卓を囲んで育ったからなのかを区別せずに、「うちはそういう家系で」とまとめて言えるところに便利さがあります。だから性格や口癖のような、遺伝では説明しきれないものにも使えます。
病院の問診で Does diabetes run in your family? と聞かれることもあり、日常会話から実務的な場面まで守備範囲は広めです。良い特徴にも悪い特徴にも使えて、文脈しだいで自慢にも自嘲にもなります。
【ここがポイント!】
- run は「走る」ではなく、家族の中を流れて続いていくという感覚
- 主語は受け継がれている特徴そのもの。人ではなく体質や性格が立つ
- 遺伝かどうかを断定せずに済むのが便利なところ。持病の話から性格の話まで使える
『メンタリスト』S02E15のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
亡くなったシェフの妻アビゲイルから話を聞いていると、被害者の弟ケビンが酒に酔って割り込んできます。兄は天才だった、あんたは金を使っていただけだ、と食ってかかるケビン。押し問答が続いた末に、アビゲイルが捜査員のほうを向いて事情をひとことで説明します。
Kevin: You were perfectly happy to spend his money, weren’t you, Abigail?
(兄貴の金を使うのは平気だったよな、アビゲイル)Abigail: Kevin, that’s enough, all right?
(ケビン、もうやめて)Kevin: No, you don’t tell me what to do, okay?
(いや、あんたに指図される筋合いはない)Abigail: As you can see, drinking– it runs in the family.
(ご覧のとおり、お酒は…この家系なの)Kevin: Oh, see, that’s how wrong you are, actually. Jeff was sober. He was in the program for two weeks.
(ほら、そこが間違ってる。ジェフはしらふだった。二週間、更生プログラムに通ってたんだ)The Mentalist Season2 Episode15(Red Herring)
シーン解説と心理考察
目の前で暴れている義弟を証拠のように示しながら、アビゲイルはこの一言を差し出します。説明しようとして言葉を尽くすのではなく、見れば分かるでしょうという構えを取るところに、身内への諦めがにじむ場面です。
彼女が切り捨てているのはケビンひとりではありません。drinking という主語には、亡くなった夫の飲酒問題も当然含まれています。夫の死の直後に、その弱さを家系という言葉でまとめてしまう距離の取り方が、二人の関係の冷え方を静かに伝えています。
そしてこの一言が、ケビンの反論を引き出します。兄はしらふだった、更生プログラムに通っていた、という言葉によって、被害者が立ち直ろうとしていた最中だったという事実が動き出す。会話の流れとしても、事件の入口になっている場面です。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
家系図を思い浮かべてみてください。名前と名前をつなぐ縦の線が何本も引かれていて、その線に沿って上から下へ、水のようなものが伝い落ちていく。run in the family は、その流れをそのまま言葉にした表現です。
覚えるときは、主語の位置に「流れているもの」を置くのがコツになります。人ではなく、薄毛、酒の強さ、音楽の才能、頑固さ。その名詞が線を伝って落ちていく画を作れば、Stubbornness runs in the family のような文も自然に組み立てられます。ドラマの場面では、義弟の酔い方そのものが線を伝ってきた証拠として示されていました。
例文で覚える「run in the family」
体質、持病、性格。流れているものを入れ替えるだけで、幅広い話題に対応できます。三つの型で見てみましょう。
Baldness runs in my family, so I’ve been prepared for it since my twenties.
(薄毛はうちの家系なので、二十代の頃から覚悟はできています)
自分の体質を軽い話題として差し出す場面です。so 以下に自分の受け止め方を添えると、深刻になりすぎず、相手も返事に困りません。
Musical talent seems to run in that family– all four kids play something.
(あの一家は音楽の才能が血筋みたいだね。四人とも何かしら楽器をやってる)
知人の家族について感想を述べる場面です。良い特徴にも使えることが分かる例で、具体的な根拠を続けると説得力が出ます。
A: Does heart disease run in your family?
B: My father had a bypass in his fifties, so I get checked every year.
(A:心臓の病気の家族歴はありますか?)
(B:父が五十代でバイパス手術を受けているので、毎年検査を受けています)
海外の病院で問診を受ける場面です。この疑問文はそのまま使われるので、聞かれる側の答え方まで型で覚えておくと慌てずに済みます。具体的な家族の例を挙げれば、そのまま問診票の内容になります。
あわせて覚えたい関連表現
be in one’s genes
(遺伝だ、生まれつきだ)
遺伝という言葉を正面から使う言い方です。run in the family が原因をぼかしたまま使えるのに対して、こちらは生物学的な要因だと踏み込んだ響きになります。才能や気質について、半ば冗談めかして使われることもあります。
take after someone
(誰かに似ている)
主語が人になり、特定のひとりとの類似を指します。家族全体に流れているものを語る run in the family とは、焦点の合わせ方が違います。誰に似たのかをはっきりさせたいときは、こちらを選びます。
a family history of
(〜の家族歴)
医療の書面や問診票で使われる名詞表現です。意味は近いものの、会話でそのまま使うと硬いため、話し言葉では run in the family のほうが自然に響きます。
Note|遺伝と環境、どちらが「家系」を作るのか
家族に共通する特徴を語るとき、英語では原因を特定しないまま言い切れる表現が選ばれます。run in the family の便利さは、まさにそこにあります。
家族が似る理由には、大きく分けて二つの経路があるとされています。ひとつは遺伝で、身長や目の色、特定の疾患へのなりやすさなどが当てはまります。もうひとつは環境の共有です。同じ食卓を囲み、同じ時間に眠り、同じ言葉づかいを聞いて育てば、食習慣も生活リズムも似てきます。この二つを切り分けるために用いられてきたのが双子研究で、遺伝子をほぼ共有する一卵性双生児と、そうではない二卵性双生児を比べることで、どの特徴にどちらの影響が強いかが検討されてきました。飲酒の習慣のように、体質の側面と環境の側面がどちらも関わる領域では、原因をひとつに絞ることが難しいとされています。劇中でアビゲイルが「お酒はこの家系」と言うとき、彼女が指しているのも、遺伝子の話というより、その家で当たり前になっていた振る舞いのほうでしょう。
英語表現として見ると、run in the family はこの複雑さを抱えたまま口にできる言葉です。原因を断定しないからこそ、持病の話にも性格の話にも使えて、聞いた側も「そうなんだね」と受け取れます。
家族を流れているものの正体は、たいてい一つではありません。
まとめ|家族の中を流れているもの
run in the family は、家族に共通して現れる特徴を、原因を特定しないまま言い表せる表現です。主語には受け継がれているものが立ち、体質から性格まで幅広く受け止めてくれます。
病院の問診で聞かれる形、親戚の話題で使う形、自分の体質を説明する形。どれも会話の中で出番があるので、型ごと持っておくと、いざというときに言葉に詰まりません。特に医療の場面では、聞き取れるかどうかがそのまま安心につながります。
家族の話は、どの国でも会話の入口になります。何が流れているのかを主語に置くという感覚ごと、会話のレパートリーに加えてみてください。


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